2026-05-11 04:59:43

トウモロコシは大幅需給緩和へ、大豆/小麦も需給緩和方向が示される。~2026年1月度米農務省需給報告より

更新:2026/1/20

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

1月12日に米農務省より月例需給報告が発表された。1月の報告は春作物の単収、生産量の最終数字であり、今後の供給面でのベースとなる。また同時に12月1日現在の四半期在庫、冬小麦の作付面積の発表もあったが、これらは全て需給見通しの中で織り込まれている事から、本レポートは需給報告を中心とする。今回報告は全般に弱気のインパクトを与えた。以下品目別に詳述するが、トウモロコシは需給が大幅に緩和する見通し、また大豆は引き続き需給逼迫状況ながら若干の緩和、小麦は特にグローバルで更に緩和となろう。需給報告を受けた現地12日の市場はトウモロコシが急落、大豆、小麦も幅を持っての下げとなった。

◆米国トウモロコシ需給
最終生産量推測にあたり、まず収穫面積を+1.3百万エーカー上方修正して91.3百万エーカーとした。また単収をエーカーあたり+0.5ブッシェル上方修正して186.5ブッシェルとし、結果生産量は17,021百万ブッシェルとなった。収穫面積、単収、生産量全て史上最高の数字である。一方需要面は飼料需要を更に100百万ブッシェル上方修正して6,200百万ブッシェルとし、輸出需要は修正なしであった事から、大幅な供給増を反映して期末在庫は+198は百万ブッシェル増の2,227百万ブッシェル、在庫率は12.5%から13.6%に増加する見通しである。引き続き飼料需要が楽観的な数字に見え、実態はもう一段需給が緩い可能性がある。

(出所:USDA)

(出所:USDA)

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給での大きな変動は中国の生産量見通しが+6.24百万トン上方修正されたのみである。中国の輸入見通しに修正はなく、同国の期末在庫積み増しとなる予想である。米国での増産も加えた結果グローバルの期末在庫は290.91百万トンで+11.76百万トンの上方修正となり、結果需給率は100%、在庫率は22.4%となる。

(出所:USDA)

◆米国大豆需給
米国の大豆生産量は収穫面積が+0.1百万エーカーの微増、単収は前月から据え置きでエーカーあたり53.0ブッシェルとなり、結果生産量は+9百万ブッシェルの微増で4,262百万ブッシェルとした。需要面では国内搾油需要を+15百万ブッシェル上方修正の一方で輸出需要を▲60百万ブッシェル下方修正した。注目すべきは年度第1四半期(9-11月)のバイオディーゼル需要が伸び悩んだとの理由で燃料向け大豆油の需要を下方修正した反面、食用や輸出需要の伸びを背景に搾油需要全体を上方修正したとしている。またバイオディーゼル原料として獣脂の輸入が増加している点もバイオディーゼル向け需要減の根拠としている。但し、2026年度以降のバイオ燃料混合義務量の最終決定がなされておらず不透明であるものの大幅増は確実であり、獣脂の輸入増では賄えない可能性は残る。輸出は南米の順調な生育を背景に下半期以降の苦戦が予想される事が現時点での下方修正に繋がっている。結果期末在庫は+60百万ブッシェル上方修正の350百万ブッシェル、在庫率は6.7%から8.2%に上昇した。市場では生産量下方修正を背景に期末在庫減を予想されていた事や、下記グローバルでの需給緩和を背景に市場では報告全体は弱気と捉えられた。

(出所:USDA)

(出所:USDA)

◆大豆世界需給
グローバル需給での最大の修正はブラジルで、前月から生産見通しを+3.0百万トン上方修正し、178.00百万トンと予想されている。ブラジル大豆は北部から収穫が開始されるタイミングであるが、現時点まで主要生産州のほぼ全域で平年並みかそれに近い降水量を記録しており、気温もほぼ平年並みの推移で豊作の可能性が高まっている。これに伴いブラジルの輸出見通しも+1.5百万トン上方修正され114.00百万トンに達する見通しである。中国の輸入見通しを据え置いており、単純にブラジルが輸出市場でのシェアを広げる構図である。結果アルゼンチン、ウルグアイを含めた南米三国の世界に占める生産量は55.8%、輸出市場でのシェアは69.3%まで上昇する見通しである。期末在庫は124.41百万トンで先月から+2.04百万トンの上方修正となり、在庫率は+0.2%の29.2%となる。

(出所:USDA)

◆小麦のハイライト
小麦の米国需給は生産量での修正は無かった。冬小麦の作付面積が据え置かれた結果である。需要面で国内需要を▲20百万ブッシェル下方修正する等の微調整から期末在庫は+25百万ブッシェル上方修正の926百万ブッシェルであった。冬小麦の作付面積減を前提に期末在庫減が予想されていた事から期末在庫の上方修正は弱気と捉えられている。

(出所:USDA)

世界需給では、大豊作が伝えられていたアルゼンチンの生産量が27.5百万トンと前月から+3.5百万トンの上方修正となった他、ロシアも+2.0百万トン上方修正されている。トルコで▲1百万トンの下方修正を見ているが、グローバルでは842.17百万トンと+4.36百万トン上方修正された。需要面はほぼ据え置かれており、結果期末在庫は+3.38百万トン増の278.25百万トンとしている。輸出市場ではEU、ウクライナ等がシェアを減らす分をアルゼンチンが拡大する構図を見ているが、今後の価格競争次第では米国やロシアのシェアを奪う可能性もある。期末在庫増により需給率は102.2%、在庫率は33.8%となる。

(出所:USDA)

◆今後の相場展開~グローバルベースでの大豊作から各産品頭は重い。
今回の需給報告ではインパクトの大小はあるも三品共に弱気であった。中でもトウモロコシの予想に反する大幅生産量増はインパクトが強い。上記通りトウモロコシの飼料需要の伸びには若干疑問符が付き、南米との競合で好調な輸出成約ペースに陰りが見えると、更なる需給緩和の可能性も見えて来る。大豆は中国向け輸出量の減少やブラジルの大豊作から短期的には弱材料が勝る構図となろう。但し、今年度(カレンダー年)以降の発表が遅れているバイオ燃料混合義務量の最終決定次第では更なる大豆油需要増が見込まれ、大幅な需給緩和は期待しにくい。掛かる環境下であるが、昨年末までの大豆、トウモロコシの比価を見ると年末時点では約2.3倍、11月に大豆が値を伸ばした段階でも2.4倍程度であり、新穀作付けに向けて価格的に大豆が大幅に有利である状況とは言い難い。3月末発表予定の作付意向面積報告次第では大豆が値を伸ばす反面、トウモロコシが一段安となるリスクも内在している。
小麦はグローバルでの弱い需給が明確であり、今後輸出市場で激しい価格競争が予想される。基本的に小麦相場は弱含みの展開が予想され、反発は大豆、トウモロコシ次第となろう。一方で北米での向こう1、2か月の気温推移(低下)は潜在的な上昇リスク要因となる。

以上を勘案すると、短期的には三品共に下値を探る展開、中長期には大豆の反発可能性を見る。中期的にも小麦、トウモロコシは弱い需給から戻りは売られやすく、反発はテクニカル主導に限定されよう。

(出所:CFTC、CBOT)

※穀物価格指数=2025年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(1月13日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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