2026年上半期農産品価格大胆予想
更新:2026/1/13
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
2025年下半期の農産品セクターは、全般に豊作あるいは生産量回復を背景に緩い需給環境となった。需給環境自体は予想時点でのシナリオに準ずる形で推移したが、トランプ政権による対中国、対ブラジル関税政策発動で一部産品価格が想定外の動きを見せ、他商品への影響もあった。まずは昨年7月配信の下半期価格予想と結果を略総括した上で、2026年上半期の価格動向を予想する。(総括部分の価格は当該先物市場3月限ベース)
【小麦】(単位:¢/bu)
(7/1引け値)586.75 (7月執筆時年末予想) 650.00(12/31引け値)507.00
需給の緩和は予想通りであったが、豪州などで増産幅が予想以上でありグローバルベースで供給増となって売り圧力が強まった。大豆の大きな反発が見られず、小麦の反発シナリオも発生せず。
【トウモロコシ】(単位:¢/bu)
(7/1)438.00 (年末予想) 485.00(12/31引け値)440.25
米国の史上最高の生産見通しを受けて25/26年度は前年比需給緩和見通しではあるが、輸出中心に需要は堅調であった。一方大豆の反発が限定的であり、秋口以降南米新穀の作柄が良好である点も反発力を鈍くした。
【大豆】(単位:¢/bu)
(7/1)1,055.50 (年末予想) 1,250.00(12/31引け値)1,047.50
今年度以降のバイオディーゼル混合義務大幅増見通しは強気材料であるが、秋口の政府機関閉鎖の影響で未だ最終決定を見ていない。また対中国貿易摩擦による中国による米国産大豆の買い控えが弱材料として大きく働いた。秋口に一旦反発基調を示したが、南米での順調な作付け進捗、その後の良好な天候推移が頭を抑えた。
【粗糖】(単位:¢/lb)
(7/1)16.48 (年末予想) 17.50(12/31引け値)15.01
グローバルベースでの生産増、需給緩和は想定通りであったが、原油価格がじり安となる環境下で想定価格レンジが下振れた。
【コーヒー】(単位:¢/lb)
(7/1)280.95 (年末予想) 220.00(12/31引け値)348.75
ブラジルのアラビカ種生産量回復見通し、ベトナムでのロブスタ種生産回復から7月までは予想通り下落基調が継続したが、トランプ政権による対ブラジル制裁関税の発動によりブラジル産コーヒー豆への高関税賦課から米国内でのコーヒー豆市場が混乱し、結果価格は高止まりとなった。
【ココア】(単位:$/t)
(7/1)7,860 (年末予想) 6,800(12/31引け値)6,065
高値による需要減退、産地での生産量回復見通し等の要因から価格推移はほぼ想定通りであった。
本年上半期予想にあたっての農産品市場を取り巻く諸環境の現状は、
1.米国での大豆、トウモロコシの大豊作
2.南米新穀の順調な作付け、初期段階の生育
3.中国による米国産大豆の買い付け再開
4.2025/26年度バイオディーゼル混合義務量の最終決定待ち
5.コーヒー、ココア(カカオ豆)、サトウキビ主要産地での比較的良好な天候推移
などが挙げられる。一方不透明要素は
1.近々重要な生育段階を迎える南米での大豆、トウモロコシの作柄動向
2.2025/26年度バイオディーゼル混合義務の最終結論
3.宇露紛争に起因する黒海情勢
4.米国大豆、トウモロコシ新穀の作付意向動向
などが挙げられる。
以上を踏まえ、かつ天候要因は正確な予測が不可能である事から平年並みの天候パターンを前提とした上期の価格推移予想は下表の通りとなる。
なお、常にリスク要因として捉えておくべき点は生産国での天候推移である。昨年は全般に大きな天候障害が発生せず、結果として各産品豊作ないし生産量回復を見ている。また穀物、油糧種子に限って俯瞰すると、ここ暫く広範囲かつ大規模な旱魃と言った需給を大きく揺るがす天候異変が発生していない。
現在ペルー沖で観測されているラニーニャ現象に近い海水温低下は今後解消見通しであり、今のところ春まではエルニーニョ、ラニーニャ共に発生確率は低くなっているものの、異常気象発現は常に見ておく必要がある。
また年初からの米国の動きなど天候、作柄を超えた世界情勢、地政学的リスクの具現が農産品市場を大きく動かす可能性も高く、昨年以上に大幅な価格変動が起こるシナリオもリスク要因として追記しておく。
予想価格の基準は次の通り。
小麦 CBOT軟質冬小麦先物9月限(¢/bu)
トウモロコシ CBOTトウモロコシ先物9月限(¢/bu)
大豆 CBOT大豆先物9月限(¢/bu)
粗糖 ICE US粗糖先物10月限(¢/lb)
コーヒー ICE USアラビカコーヒー先物9月限(¢/lb)
ココア ICE USココア先物9月限($/t)
現在値 2026年1月5日引値
7月1日予想値 2026年7月1日引値
【小麦】(単位:¢/bu)
(現在値)594.50 (7/1) 620.00
主要輸出国での大豊作を受けて輸出市場での競争激化から特に期間前半は弱含みで底値を探る展開。期間後半は大豆、トウモロコシ等に反発地合が具現すれば、小麦も反発する可能性あり。不安定な黒海情勢は常に価格上昇リスクとして内在。
【トウモロコシ】(単位:¢/bu)
(現在値)452.00 (7/1) 475.00
米国需給は好調な輸出、エタノール用需要を背景に引き締まり傾向にあり下値は堅い。一方大豆との比価が依然比較的割高である事から、新穀作付面積は昨年度比では減少するも意外と大きい可能性があり、その際は上値も抑えられる。
【大豆】(単位:¢/bu)
(現在値)1,071.00 (7/1) 1,250.00
中国向け成約減少や南米での良好な作柄は弱材料ながら、米国でのバイオディーゼル向け大豆油需要増から米国需給は一段と引き締まる見通し。新穀作付面積は昨年度比では増加しようが、大幅増とならない場合は強材料が加わる。輸出市場は南米が主導している事もあり、ブラジル中心に南米での減産は価格の大幅高を誘発するリスクとして残る。
【粗糖】(単位:¢/lb)
(現在値)14.76 (7/1) 16.00
世界的な生産量回復から需給は緩い状況が継続し、期間前半は比較的狭いレンジでの底値を探る動きか。後半はエネルギー高などが具現すれば買い戻し主導で幾分価格レベルが上がる可能性あり。
【コーヒー】(単位:¢/lb)
(現在値)328.45 (7/1) 275.00
ブラジルの樹勢回復、ロブスタ種の生産量回復を背景に基本的にはもう一段下押しする」シナリオ。但し、米国とブラジルの政治的対立は引き続き不透明要素として残る。
【ココア】(単位:$/t)
(現在値)6,151 (7/1) 5,500
西アフリカ主産地での旱魃からの生産量回復は弱材料であり、既に最高値から50%以上の下落を見ているものの、3年前までレベルは2,000ドル台であり、現在の値位置でも割高感は残る。本格的な需要回復には更なる価格下落が必要か。
(出所:ICE、CBOT)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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