更に高騰を続ける銀価格
更新:2026/1/9
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
銀価格の急騰が止まらず、年末にCMEは価格の急変(ボラティリティの上昇)を理由に証拠金を引き上げ、一時急落する局面があったがそれでも高値を維持している状況。ここまでの上昇は過去のハント兄弟事件、リーマンショック後の上昇をはるかに超えており、サービスサプライヤーの銀投資を助長する動きも価格を押し上げる要因となっている。この結果、一時100倍まで上昇していた金銀レシオが急落、60倍を下回っており、携帯電話にカメラが搭載され写真フィルム需要が急速に減少を始めた2003年以降の平均である69.8倍を大きく下回っている。
(出所:CME)
銀は需給ファンダメンタルズよりも投機的な動きが価格を左右しやすいが、価格に対する説明力が高いETFの保管数量前年比に歩調を合わせて銀は水準を切り上げている。やはりETFヘの投資増加が現物取引にも影響しているとみられ、実際にリースレートも上昇している。一方、価格上昇を受けて取引所の在庫は高水準となっている。在庫増加と共に銀価格が上昇しているが、過去、他の金属にも見られたように取引所在庫がファイナンスに用いられている可能性があり、その結果、現物が市場に流出し難くなっている状況と考えられる。昨年のSilver Instituteのレポートを参考にすると、足元の需給のタイトさは大半が取引所在庫の増加に伴う在庫投資に起因するものと見られる。逆に言えばこれが逆回転した場合は大きな下落が予想される。
しかし銀価格上昇の背景にはコロナショック後の過度な量的金融緩和と、宇露戦争を契機とする米国のロシア制裁強化(ドル決済制限)を受けた金価格の上昇があり、状況の変化には何らかの材料が必要だ。どの材料がいつ顕在化するか分からないが、想定可能な範囲ではAI関連で株が下落する、銀価格上昇で実需が減少(レーショニング)する、取引所の更なる規制強化(証拠金の引き上げ。ただし投機筋のロングポジションはヒストリカルに見て大きくなく、影響は限定か)、米中の関係改善による安全資産需要の減少(貴金属から米国債への再シフト)、米露の関係改善で米国資産から回避する需要が減少、などが考えられる。時期が想定可能なのは米中首脳会談前後だが、それはまだ4ヵ月も先のことなのでその間に別の情勢変化が発生する可能性の方が高いか。
中国は年始に銀の輸出規制を発表したが、どちらかと言うと銀価格の急騰に伴う中国からの輸出増で、国内でエレクトロニクスや太陽光パネル向けに使用する銀が不足するリスクを回避するためのものと考えられる。今後、エレクトロニクス分野で重要資源になる可能性は高く、米国も韓国企業と共同で銀を含む非鉄金属製錬所をテネシー州クラークスビルに建設する予定だ。こうした供給体制が構築されれば徐々に水準は切り下がることが予想されるが、結局、価格上昇に伴う増産が起きなければ本質的に価格は下落しないため、中期的な目線で下落はするが場合によると下落が始まったとしても高騰前の水準に戻るのに年単位の時間が掛かるのではないか(過去の急騰局面も元の水準に戻るまで数年かかっている)。長期的な目線では銀はインフレ資産であるため名目価格の上昇が見込まれるが、それはその他のインフレ連動型の商品も同じであるため銀だけ取り立てて長期保有にメリットがある訳ではない点は付言しておく。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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