トウモロコシが幾分の引き締まり、小麦のグローバル豊作見通しに変化なし。~2025年12月度米農務省需給報告より
更新:2025/12/15
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
12月9日に米農務省より月例需給報告が発表された。12月の月例報告は例年比較的修正が小幅に留まるケースが多く、特に米国の供給面については1月の最終数字を待つ形となる。その中での特記事項はトウモロコシの米国輸出需要見通しの上方修正、小麦のグローバル生産量の上方修正である。結果としてトウモロコシについては前月から幾分需給の引き締まりが示された一方で小麦のグローバルベースでの需給は依然弱い事が確認されている。大豆については事前予想との乖離から強気、弱気の見方が分かれているが、基本的には前月から大きな修正はない。
◆米国トウモロコシ需給
供給サイドは修正なし、需要面では輸出需要を+125百万ブッシェル上方修正し、3,200百万ブッシェルとした。第一四半期(9月-11月)の輸出検証高が好調を維持している点を根拠に年間見通しを修正した形である。政府機関閉鎖の影響で発表が遅れている輸出成約報告では11月6日現在では成約残(船積済を含む)は38.3百万トンで昨年同時期比+28%増のペースで推移している。これを受けて期末在庫見通しは同量が下方修正され、2,029百万ブッシェル、在庫率は13.3%から12.5%に減少した。先月も指摘したが、今後現状の成約ペースが維持出来るかは生育序盤にある南米の作柄に影響される。
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給ではウクライナの生産量下方修正が大きい。前月から▲3百万トン減の29.0百万トン、生育終盤~収穫期の多雨が影響したとしている。ウクライナはヒマワリや大豆など油糧種子も天候要因から生産量見通しが下方修正されている。結果同国からの輸出量も▲1.5百万トン減少の予想であり、この分の一部を米国が取る図式を想定している。グローバルの期末在庫は279.15百万トンで▲2.2百万トンの下方修正となり、結果需給率は99%、在庫率は21.5%となる。
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
米国の大豆需給の修正はなかった。市場の予想では輸出需要の減退などを背景に期末在庫増を見る向きが多かったが、結果は需給共に変更せず290百万ブッシェルの期末在庫を維持した。中国向け輸出見通しや国内大豆油需要など中長期には不確定要素が多いが、このタイミングでの見直しは避けた形である。年末年始にかけて(=中国の春節前)に恐らく中国による成約は積み上がると予想されると同時に、遅れている来年度以降のバイオディーゼル混合義務量の最終形も発表されると思われ、1月の需給報告以降これらの動きも加味した需給見通しとなろう。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
グローバル需給でも修正は小幅に留まり、需給の変化は限定的であった。ロシア、インド等での小幅上方修正はあったが、主たる輸出国である米国、南米諸国は生産量、輸出量ともに据え置きであり、かつ需要サイドでは中国の輸入見通しも112百万トンで据え置かれた。全体では期末在庫は122.37百万トンで先月から+0.38百万トンの小幅上方修正となり、在庫率は+0.1%の29.0%となる。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
小麦の米国需給も11月から修正なしであった。一部では輸出需要増を見込んで期末在庫減も予想されていたが、今回は見直しされなかった。尚、品種による需要面での微調整は行われており、あくまで結果として全小麦合計では前月と同数字となった。期末在庫減の見直しがなかった点はサプライズではないが、やや弱材料として捉えられた。
(出所:USDA)
世界需給では、先月に続き北半球、南半球の米国を除く主要生産国で生産量が上方修正された。主要国の修正幅は、カナダ(+3.0百万トン、以下同じ)、EU(+1.7)、ロシア(+1.0)、豪州(+1.0)、アルゼンチン(+2.0)等である。輸出見通しはアルゼンチンと豪州を上方修正した以外は据え置いているが、グローバルでの生産量は10月時点予想から+8.9百万トン上方修正されており、早晩輸出市場での競合が激しくなると予想される。需要面で飼料用需要増加を見込むものの、期末在庫は10月予想から+3.4百万トン上方修正、昨年度比較では+14.8百万トン増の274.9百万トンとなる見通しである。これにより需給率は101.8%、在庫率は33.4%となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開~大豆、トウモロコシ需給の需給はタイトか緩いか?
今回の需給報告は従来通り大きな変更が見込まれる部分のみの修正であり、その意味ではトウモロコシ輸出量見通しの大幅上方修正は市場では強気要因として捉えられている。但し、上述通り年明け以降は南米との競合が始まり、順調な天候推移を前提とすると現状の成約ペースが維持できるかは不透明である。また飼料需要もやや楽観的とも思われ、年初以降の需給推移を見る必要があるが、トウモロコシ需給は見た目よりやや緩めと考える。
一方大豆は10月の搾油実績が単月として史上最高の水準であり、搾油需要の好調が続いている。大豆油需要はやはり来年度以降のバイオディーゼル混合義務量に大きく左右されようが、幅の問題はあるにしても大豆油需要の伸びは必須と考えられる。年明け以降大豆需給は引き締まり方向に動くと考える。
小麦は上述通り世界レベルでの大豊作であり、主要生産国のどこかで異常気象の具現がない限り需給は緩い前提でのトレードとなろう。当座反発は他商品の上昇を見た買い戻しが主体と見る。
以上を勘案すると、基本的な見方は先月需給報告時から変わらない。大豆は中長期で強気維持、小麦は弱気で、トウモロコシは弱気一辺倒ではなくなりつつあるも反発は大豆次第と予想する。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(12月11日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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