2026-05-11 02:15:18

プラチナに調整圧力も高値維持か

更新:2025/12/9

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

金価格が歴史的な高騰を続ける中でプラチナ価格も高騰している。かねてからこのコラムで主張しているように、株で言うところの同一セクター内で割安な銘柄への投資が加速したためと考えられるが、プラチナ価格の上昇に関してはETFもCFTC(米国商品先物取引委員会)の先物ポジションの推移を見ると投機の買いによる上昇とは考え難い。投機でなければ実需の買い、ということになるが、先物市場での実需のポジションはさほど変化していない。そのため今回の価格上昇は実需主導の上昇だったと考えられる。価格上昇が顕著になったのが6月以降であるためQ1/25とQ2/25のプラチナ需給動向をWPICのデータを元にして検証するとQ2/25の需給バランスは+1,000トロイオンス(以下toz)の供給過剰と、前期の▲66万2,000tozの供給不足から需給は緩和している。投機を除く需給バランスも▲6万3,000tozの供給不足(前期▲20万1,000tozの供給過剰)であり、むしろ緩和していることから価格が下がってもおかしくない。しかしそれでも価格が上昇している為、細かく見ると、工業需要(前期比+14万7,000toz)と宝飾品需要が増加している(+13万5,000toz)が、単一品目では宝飾品のボリュームが大きく、宝飾品需要の増加が価格を押し上げた可能性があり、恐らく最大消費国である中国の需要が増加したと考えられる。中国のプラチナネット輸入量は直近3年では2023年の11月以降減少していたが、今年の3月から急速に増加し、それを契機にプラチナ価格が上昇しているのが分る。ただ、過去にもこれぐらいのレベルの輸入増加はあったため、さらに何かがあったと考えるのが妥当だろう。中国内の自動車向けの触媒需要増加は考え難いため、やはり宝飾品向けの需要が増加したと予想される。

(出所:中国国家統計局、CME)

中国国内での月次のプラチナの宝飾品向け需要のデータが取得できないため、小売売上高のサブ項目のうちの金銀宝飾品販売の前年比とプラチナ価格の推移を比較すると、両者の間には緩やかな相関が見て取れる。歴史的に中国人は貴金属の中では金を好むが、金価格が余りに高い水準であることから、宝飾品を購入する際、割安なプラチナを金の代替品として用いた可能性は排除出来ない。ある意味「金との比較感による投機的な宝飾品物色」とでも言えるだろうか。この結果、実際にプラチナの現物需給が逼迫し、リースレートは一時40%まで上昇した。今は落ち着いてはいるがそれもリースレートは10%台であり現物需給はタイトである。

(出所:中国国家統計局、CME)

では今後についてはどうだろうか。WPICは2026年のプラチナ需給見通しを発表したが、投機需要が減少する見通しであり全体で+1万9,000tozの供給過剰と、4年ぶりに供給過剰に転じる見込みである。また、投機を除く需給バランスも鉱山生産の増加と宝飾品向け、自動車向けの需要の減少を受けて+71万1,000tozの供給過剰となる見込みであり価格は調整すると予想される。しかし、ここまでプラチナ価格の上昇を牽引しているのは金価格であり、米中対立が継続、株式市場においてはGAFAMに代表されるAI関連株が堅調に推移、今年の9月以降は特に金価格に対する株価の説明力が高く、株に対しても強気の見方が多いことから金は高止まり、プラチナも調整するとはいえ高い水準を維持すると予想される。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 新村 直弘

1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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