2026年の原油価格の想定レンジはかなりワイドか
更新:2025/11/25
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
現在、世界の主要エネルギー調査機関(IEA・EIA・OPEC)のうち、IEA(国際エネルギー機関)とEIA(米国エネルギー情報局)は、2025年から2026年にかけて顕著な供給過剰が発生すると見込んでいる。EIAの見通しによれば、世界全体で日量217万バレルの供給過剰が予測されている。では、増産がどこで起きるかというと、最大の増産寄与はOPECプラスの枠組みで減産に合意しているOPEC諸国による日量50万バレル、次いでその他のOPECプラスが日量12万バレルとなっている。この中で最大の寄与はロシアの14万バレルだ。非OPECプラスでは、ブラジルが最大で37万バレル、米国が25万バレル、ガイアナが14万バレルの増産が見込まれている。
引き続き、増産におけるOPECおよびOPECプラスの寄与度は大きく、また現状の原油価格では、寄与度の高い米国が予定通り増産を実施するかどうかはやや不透明だ。2026年は通年で日量217万バレルの供給過剰が見込まれているが、原油価格が下落している局面で米国が積極的に増産するインセンティブはそれほど高くないと考えられる。原油を増産して地上に出した場合、安全に保管するコストがかかる上、流出事故などが発生すれば、その補償も大きな負担となる。また、品質が劣化するリスクもあるため、基本的には必要な量だけを生産する方針となる。需要が減速し、想定以上に原油が余る場合は減産を行うことになるが、その際は生産量の減少によって外貨収入も減少し、これも回避したい状況だ。こうしたことから、ここまで供給過剰が見込まれる中で、計画通りの増産が行われない可能性は十分に考えられる。
仮にOPECプラスが増産を見送り、米国の増産も想定通りに進まなかった場合、生産が89万バレル下振れし、全体では日量128万バレルの供給過剰となる。実際、米国の原油掘削リグの稼働数は原油価格に連動している。しかし、それでもこの水準の供給過剰は、OPECショックで増産があった2014年(145万バレル、Brent平均価格99.5ドル)、米中対立とコロナが年末に顕在化した2019年(221万バレル、64.2ドル)、OPECがシェア確保に舵を切った2025年(183万バレル、平均価格見込み68.2ドル)に準じる水準であり、供給過剰幅は依然として大きい。ただし、原油価格の実績からも分かるように、供給過剰となった場合でも必ずしも大幅な価格下落が起こるとは限らない。
では、何が価格を決めるかと言えば、やはり景気の動向(需要の動向)だ。需要動向が生産活動に影響を及ぼし、景況感が原油価格の方向性を左右しやすい傾向が過去にも見られた。現時点では、最大消費国である米国の景気が2026年に回復すると見込まれているため、需要の回復とともに原油価格は上昇すると予想される。そして、それに伴い、上述の増産準備を進めている国々が増産すると予想されるため、価格の上昇余地は限定的となる、というのがメインシナリオ(2026年平均価格は約63ドル程度)だ。
しかし、上述の通り、需要を無視して増産が行われた場合には、トランプ政権発足時に見られたように、Brent原油価格が40~50ドル程度まで下落する可能性もある。ただし、この場合でもOPECプラスによる生産調整が行われるため、最終的には価格が上昇する展開が想定される。また、ロシアの原油生産が戦争の影響で途絶し、中〜重質原油の需要が高まる中でBrent価格が大きく上昇するシナリオや、中間選挙を控えてトランプ政権が過度な経済対策や金融緩和を実施した場合には、80ドル程度までの上昇も考えられる。
実際、トランプ政権時のBrent原油価格は2017年初からコロナショック前(2019年末)まで、44.35ドルから86.74ドルと非常に幅広いレンジで推移していた。来年の原油価格も、比較的大きなレンジでの変動が想定される。
(出所:ICE)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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