トウモロコシ、小麦は需給緩和、大豆は幾分の引き締まりへ~2025年11月度米農務省需給報告より
更新:2025/11/18
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
11月14日に米農務省より月例需給報告が発表された。政府機関閉鎖に伴い、10月度の発表がなく、9月以来2か月ぶりの需給報告であった。先月本稿にて仮に10月需給報告が発表された場合の弊社予想を掲載したが、今回の報告内容の方向性は概ね予想に沿う形となった。トウモロコシ、大豆ともに単収は史上最高で、作付面積増も加わりトウモロコシは生産量見通しも史上最高である。また小麦は米国に加え主要生産国で軒並み大豊作見通しとなっており、世界需給は一層緩和させる形が示された。
◆米国トウモロコシ需給
9月末の四半期在庫報告を反映して旧穀期末在庫=新穀期初在庫が+207百万ブッシェル(以下mbu)上方修正された反面、単収及び生産量は下方修正された。但し単収はエーカー当たり186.0ブッシェル(以下bpa)で修正幅が▲0.7bpaに留まり、市場の事前予想を上回る生産量である16,752mbuと9月報告比較では▲62mbu減に留まった。相殺して供給量合計は+144mbu増の18,309mbuに達した。一方需要面では輸出を+100mbu上方修正して3,075mbuと初めて30億ブッシェルを超える見通しを示した。USDAの説明では政府機関閉鎖中も発表が継続された週間輸出検証高を根拠としているが、夏場の価格低迷から主要輸入国の成約ペースが早く、その成約分が順調に積み出されている結果でもあり、年間の輸出見通し数字の妥当性は年内に順次追い付いてくる週間輸出成約報告の推移と今後の南米の新穀生育状況次第である事は頭に入れておきたい。結果として期末在庫は2,154mbuで+44mbuの上方修正、在庫率は13.35%となった。
(出所:USDA)
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバル需給では大幅な修正はなかった。生産量では既に終了した収穫の結果を受けブラジルの旧穀が+1百万トン増の136百万トン、一方新穀では米国の下方修正とインドでの増産見通しが相殺されて、グローバルでは▲0.3百万トンの下方修正を行った。需給面では旧穀は需要が下方修正された結果、期末在庫(=新穀期初在庫)が+7.5百万トン増となったが、新穀年度での需要増を見込み、結果新穀の期末在庫は281.3百万トン、9月見通し比▲0.1百万トンの微減に留まった。結果需給率は100%、在庫率は21.7%となる。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
小麦の米国需給は9月末のスモールグレインサマリーレポートを反映して全小麦生産量を1,985mbuに+58mbu上方修正された。需要面が据え置かれた結果、期末在庫は生産量増加分を反映して+58mbu上方修正され、901mbuとなる見通しである。
(出所:USDA)
世界需給では、北半球の春小麦、南半球の冬小麦がほぼ例外なく大豊作見通しであり、グローバル生産量が大幅に上方修正された。主要国を列挙すると、米国(+1.6百万トン、以下同じ)、カナダ(+1.0)、EU(+2.2)、ロシア(+1.5)、カザフスタン(+2.9)、豪州(+1.5)、アルゼンチン(+2.5)となり、グローバルでの生産量は9月時点予想から+12.7百万トン上方修正の828.9百万トンと見ている。需要面で飼料用需要増加を見込むものの、期末在庫は9月見通しから+7.4百万トン上方修正、271.4百万トンとなる見通しである。これにより需給率は101.2%、在庫率は33.1%となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開~引き続き大豆の需給引き締まりに注目、穀物系は需給弱い
需給報告を受けた11月14日の相場は小麦、トウモロコシは報告の弱い内容を受けて売りが先行、また大豆は中立からやや強気と捉えられるも、中国向け成約の不透明感なども残り利益確定売りが強まった。米国の生産量はこの後来年1月の需給報告で一旦最終数字となるが、暫くの間は米国については需要相場、また並行して南米での作付け、発芽など生育状況に目が向けられる。大豆は本稿でも指摘しているが、来年度以降の米国でのバイオディーゼル混合義務量の最終数字並びにそれに伴う計算ルール改定が注目される。中国向け輸出は成約が再開されたものの、コミットされた1,200万トンの数字に届くのが精一杯と思われ、余剰分のどの程度が国内搾油需要に廻るか、そしてその数字が具体的に需給報告でどの様に反映されるかがポイントとなる。
トウモロコシは大豆に連れる局面もあろうが、輸出好調ではあるが需給は明らかに弱く、南米での天候異変がない限り頭は重くなりそうである。
小麦はグローバルベースでの一段の需給緩和が顕著であり、輸出市場での競争激化が想定される。自身の材料でのショートポジションの買戻し以外、上昇力は限られるものとなろう。
以上を勘案すると、大豆は中長期で強気維持、トウモロコシ、小麦は弱気で反発は大豆次第と予想する。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(11月16日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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