2026-05-11 06:28:41

金価格は景況感からは割高すぎか

更新:2025/11/11

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

◆金属セクターの上げを助長した投機の動き
2025年の主要商品のパフォーマンスを見ると、今年は貴金属セクターの上昇が顕著だったことは各種メディアが報じている通り。投資に興味が無い人でも金価格動向は話題になった。しかし、金を含む貴金属セクターだけでなく、銅を含む非鉄金属セクターも商品によっては顕著な上昇になっている。銅や錫、亜鉛など、実際に鉱山や製錬所からの供給が減少している商品は需給バランスのタイト化から価格が上昇するのは自然だ。しかし、精錬銅は鉱山供給の制限があっても需要の低迷で精錬品は供給過剰の状態にあり、そこまで積極的に物色されるような状況にない。このことは恐らく実需以外の要因、即ち投機筋の動向が価格を押し上げていることを示唆している。

(出所:CME、LME、ICE)

投機筋のポジションを見ると、いずれの商品も4月の「解放の日」を境にネット買い越しを縮小、その後買い戻しが入っている。エネルギーは総じてネット買い越し幅を縮小させているが、金ETFの管理トン数(現物投機の数量指標の1つ)が増加、LMEは投機筋の買い越しが増加していることが分かる。簡単にまとめると、原油は景気そのものを反映して今年は低迷しているが、金は米中戦争、銅は米中対立の延長線上にあるがAI革命やデータセンター向けの需要、下火になったが脱炭素向けの需要増加の他、地震や異常気象の影響で大手鉱山の生産が低迷したことが材料視され、実際に供給不足に陥っている訳ではないがストーリー性があることから物色対象になっていると考えられる。しかし、このまま上昇を続けるというよりは金も銅も一旦調整局面があると考えている。

(出所:ICE、COT)

(出所:Bloomberg)

(出所:LME、COT)

◆利益確定の動きとAI市場加熱の逆回転リスク
金は中長期の目線で見た場合、株価と連動する傾向が強い。足元AI関連が好調なため、関連のハイテク銘柄株が上昇しておりそれが株価を押し上げ、結果的に金価格を押し上げる構図となっている。ただし、2024年もそうだったが、年末に向けて金価格は緩やかに調整している。

銅に関しても同じように昨年末にかけて売られ水準を切り下げた。この間、ほとんど投機筋の動きと銅価格は連動していることが分かる。投機筋は別に現物が欲しいのではなく、ここから得られるキャッシュが欲しい訳で、いずれかのタイミングで利益確定の作業を行わなければならない。今年も年末に掛けて利益確定の動きが価格上昇を抑制すると予想される。また、AI市場の過熱が行き過ぎなのではとの見方が出ているのも事実であり、これが逆回転して株価が下落した場合、金・銅共に下落する可能性はあるだろう(株価が更に上昇することも有り得るが、その場合は逆に上昇へ)。

こうしたショックが発生しなかったとしても、銅に関しては、金と異なり工業向けに用いられることが多いため、物価上昇を超えた上昇ペースでの上昇となった場合、消費が追いつかなくなって需要が減少する、ないしは代替商品への振り替えが起きる(いわゆるレーショニング)ことがある。例えば銅線ではなくアルミ線に、銅管ではなく樹脂を使ったパイプなどにといった形だ。既に銅は過去最高値に迫っており、この価格を上回る上昇は余程好景気になって消費者が問題なく消費出来る場合だろうが、過去の例を参考にすると恐らく早晩調整があると考えられる。

しかし、金は米中対立が今後も続く可能性が高い事を考えると、「武器としてのドル」に対する防衛手段として物色される可能性は高く、銅に関しても主要鉱山の生産停止が2026年も続き、コストアップで精錬品供給が制限される可能性があることはやはり買い材料とされやすい。また今後もAIやデータセンター向けの需要は増加が見込まれることから中長期の目線はやはり強気である。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 新村 直弘

1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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