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強弱が大きく分かれる大豆、トウモロコシ需給~2025年8月度米農務省需給報告より

更新:2025/8/18

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

8月12日に米農務省より月例需給報告が発表された。今回から単収は実地調査をベースに推定されるが、昨年度より作付/収穫面積についても8月度のレポートで見直しを実施することになっている。今回、大豆の作付面積が6月末レポート比較で▲2.5百万エーカー減、トウモロコシは+2.1百万エーカー増となった点も両産品の需給状況に大きく影響する形となった。トウモロコシは史上最高の生産量見通しを背景に需給が大幅に緩む一方で、大豆は同じく単収は記録的ながら作付面積の減少から需給が幾分逼迫する形となる。小麦は米国需給が若干引き締まる見通しであるが、輸出需要次第であり、必ずしも強気とは言い難い環境である。

◆米国トウモロコシ需給
旧穀需給見通しは輸出を+70百万ブッシェル上方修正、エタノール等需要減▲35百万ブッシェルとの相殺で期末在庫が1,305百万ブッシェルと▲35百万ブッシェルの下方修正となった。新穀需給は作付面積が+2.1百万エーカー増、単収見通しをエーカー当たり188.8ブッシェルとし、生産量見通しが史上最高の16,742百万ブッシェルとなった。これは前月見通しから+1,037百万ブッシェルの上方修正である。需要面で飼料需要+250百万、エタノール需要+100百万、輸出を+200百万ブッシェル上乗せしたものの、期末在庫は2,117百万ブッシェルと+457百万ブッシェル増、在庫率は10.8%から13.3%への上昇である。需要上乗せ分の実現可能性も含め、先月から一転して需給緩和が顕著になる需給バランスである。

(出所:USDA)

(出所:USDA)

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシは新穀の生産量は米国が+26.33百万トン、ウクライナが+1.5百万トン上方修正の一方でEU(主にルーマニア)、セルビアで各▲2百万トンの減産があるも、差し引きで+23.8百万トンの上方修正となった。需要面では飼料需要を+10.2百万トン上方修正するも新穀の期末在庫は前月推定から+10.5百万トン増の282.54百万トン、需給率は100%、在庫率は21.9%となる。

(出所:USDA)

◆米国大豆需給
米国の旧穀大豆需給は国内搾油、輸出増見通しから今月末となる期末在庫を330百万ブッシェルと、▲20百万ブッシェル下方修正した。新穀は作付面積が▲2.5百万エーカー減少の一方で単収は史上最高の53.6ブッシェル/エーカーを見込み、相殺で生産量は前月推定から▲43百万ブッシェル減の4,292百万ブッシェルの見通し。需要は輸出を先月に引き続き▲40百万ブッシェル下方修正し、国内需要は微調整にとどめた結果、期末在庫は▲20百万ブッシェル下方修正の290百万ブッシェル、在庫率は7.1%から6.7%に下落した。大豆油の需要増は今回加味されず、またトランプ大統領が意欲を示す中国向け輸出増も余裕がない事態となりつつある。大豆の作付について、西部コーンベルトが顕著ではあるが、ほぼ中西部全域において、最終段階で大豆からトウモロコシへの作付け転換が行われた形である。

(出所:USDA)

(出所:USDA)

◆大豆世界需給
大豆の世界需給では目立った修正は行われていないが、輸出市場で米国の減少分をアルゼンチンが埋める図式が示されている。なお、中国の輸入見通しは前月から変わらず112.0百万トンとなっている。米国の輸出シェア減少により南米3カ国からの輸出見通しは125.5百万トンで世界貿易に占めるシェアは67.0%となる。結果グローバルでの新穀期末在庫は124.90百万トンで前月時点での推定から▲1.17百万トン下方修正された。在庫率は29.4%で前月比▲0.3%となる。

(出所:USDA)

◆小麦のハイライト
米国の全小麦生産量見通しは1,927百万ブッシェルで前月から▲2百万ブッシェルの下方修正となった。内訳は硬/軟質冬小麦が合計で+16百万ブッシェル上方修正の一方で、春小麦が▲20百万ブッシェルの下方修正である。需要面では、輸出が前月に続き+25百万ブッシェルの上方修正となり、875百万ブッシェルとした。その他微調整含め期末在庫は▲21百万ブッシェル下方修正され、869百万ブッシェルとなる見通しである。

(出所:USDA)

世界需給では、生産量は中国で▲2百万トン下方修正の一方で、EU等での上方修正との相殺で806.90百万トンと▲1.65百万トン下方修正された。需要面はEUで増加、中国で減少などの見通しを反映して▲1.09百万トンの減少とみている。結果、期末在庫は前月見通しから▲1.44百万トン下方修正、260.08百万トンとなる見通しである。これにより需給率は99.7%、在庫率は32.2%で先月とほぼ同水準である。

(出所:USDA)

◆今後の相場展開~大豆強気、トウモロコシ弱気だが...
今月の需給報告は先月からの修正が大きく、市場予想の範囲を超える部分もあった。需給の数値のみで判断すると大豆は一段と厳しい需給となり、トウモロコシは需給緩和に向かうだろう。小麦は輸出需要を上方修正するも実現可能性を勘案してやや弱気となる。

大豆は最終決定を待つ段階ではあるものの、大豆油由来のバイオディーゼル需要は増加が確実であり、一段の搾油需要増の可能性がある。国内需要増が大豆輸出にどの程度の余力を残すか読みづらい環境であるが、少なくともショート先行の市場参加者はカバーを急ぐと思われる。

一方トウモロコシは強弱両面から今回レポートでの不確実な点を示す。
 @史上最高の単収188.8ブッシェル/エーカーは現実的であるか?
 A供給増に伴う国内/輸出需要増見通しの実現可能性は?

まず@については、最新の週間作柄報告ではトウモロコシの優良/良の割合は72%で過去5年の比較では最高水準ではある。今年に次いで良好であった年は2020年であるが、8月の同時期で優良/良の割合は71%、不良/著しく不良の割合が少なく今年の状況に類似している。同年8月需給報告時点での単収見通しは181.8ブッシェル/エーカーの高水準が見込まれたが、8月後半から急ピッチで作柄を落とし。最終単収は172.0ブッシェル/エーカーであった。今年が同様の展開となる根拠はないが、足元8月下旬に向けての中期予報で中西部の広範囲で乾燥傾向が示されており、受粉を無事終えても以降の天候次第で単収低下リスクは大きい。

Aについては、国内飼料需要の大幅増を想定しているが、需給報告でUSDAは同時に牛肉の生産の伸び悩みも示唆しており、他畜種を含め大幅な飼料需要増に繋がるか注視する必要がある。輸出需要については南米次第の面もあろうが、昨穀物年度並みの豊作前提では厳しい競争にさらされる可能性がある。端的な表現を使えば、先月報告時点から1か月の間に5億ブッシェル強の需要増が是認出来る根拠はあるか、との点である。

以上を勘案すると、大豆は中長期で強気が維持されると考える。トウモロコシは生産量の不確定さから約定最安値レベルから新たに売り先行で仕掛けるかは微妙であろうが、需要がやや楽観的である点を踏まえると当面は底値を探る動きを予想する。小麦は上記通り引き続きファンダメンタルズは弱いと判断できるが、既に投機筋は売り先行となっており、大豆、トウモロコシの価格次第では反発機会を伺う動きとなろう。

(出所:CFTC、CBOT)

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(8月13日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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