バイオディーゼル使用義務量を織り込み始める大豆市場~2025年7月米農産品需給報告より
更新:2025/7/18
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
7月11日に米農務省より月例需給報告が発表された。今回は新穀の作付面積に6月末発表の作付面積が適用されたが、3月末の作付意向面積との差異が小さかったことから新穀供給面での大きなサプライズはなかった。
以下に報告の主なポイントを列記するが、今回注目されたのはEPA(米環境保護局)が打ち出した来年、再来年の再生可能燃料使用義務量の引上げ提案に伴う大豆、大豆油需給であり、今後更なる修正の可能性を含む。
◆米国トウモロコシ需給
旧穀需給見通しは輸出を+100百万ブッシェル上方修正、飼料需要減▲75百万ブッシェルとの相殺で期末在庫が1,340百万ブッシェルと▲25百万ブッシェルの下方修正となった。輸出は6月以降も好調な旧穀輸出成約を反映している。
新穀需給は作付面積の差異により生産量見通しが▲115百万ブッシェル減の15,705百万ブッシェル、期初在庫減と合わせ供給は▲140百万ブッシェルの下方修正。需要面で飼料需要▲50百万ブッシェル減との相殺で期末在庫は1,660百万ブッシェルとなり在庫率は11.3%から10.8%に減少する見通しである。需給緩和が意識されて来たトウモロコシであるが、楽観視はできない在庫レベルになってきている。
(出所:USDA)
◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバルでは新穀の生産量は米国が▲2.9百万トン下方修正の一方でカナダ、メキシコなどで増産を見込み、差し引きで▲2.3百万トンの下方修正となった。需要面では飼料需要を▲1百万トン下方修正したほかは大きな修正はなく、期初在庫の修正なども勘案した新穀の期末在庫は前月推定から▲3.2百万トン減の272.08百万トン、需給率は99.01%、在庫率は21.3%となる。
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
米国の旧穀大豆需給は前月見通しを据え置いた。新穀は生産量が▲5百万ブッシェル減の見通し。需要はバイオディーゼル向け大豆油需要増を見込み、搾油用を+50百万ブッシェル上方修正、一方南米との競争力も鑑み、輸出を▲70百万ブッシェル下方修正した。結果、期末在庫は310百万ブッシェルに上方修正し、在庫率は6.7%から7.1%に上昇した。
大豆油の需給は搾油増による増産分及び輸出見通しの下方修正分合計がバイオディーゼル向け需要としている。バイオディーゼル向け大豆油は155億ポンドを見ている(今年度見通し122.5億ポンド)。他方大豆ミールは増産分が飼料需要増、輸出増で数字を合わせている。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
大豆の新穀世界需給ではウクライナの生産量見直しで+0.9百万トン上方修正、一方搾油需要は米国をはじめウクライナやトルコでの増加を見込む。また、中国の輸入見通しは前月から変わらずの112.0百万トンとなっている。米国の輸出シェア減少により南米三国からの輸出見通しは124.7百万トンで世界貿易に占めるシェアは66.5%となる。結果グローバルでの新穀期末在庫は126.03百万トンで前月時点での推定から+0.77百万トン上方修正された。在庫率は29.7%で前月比+0.2%となる。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
米国の新穀全小麦生産量見通しは1,929百万ブッシェルで前月から+8百万ブッシェルの上方修正となった。収穫面積減が見込まれるも、単収増が寄与する形。需要面で輸出を+25百万ブッシェル上方修正し、850百万ブッシェルとした。相殺で期末在庫は▲8百万ブッシェル下方修正され、890百万ブッシェルとなる見通しである。
(出所:USDA)
新穀の世界需給では、生産量をカナダ、ウクライナでの乾燥傾向を反映して下方修正の一方で、ロシア、カザフスタンで上方修正した。需要面は飼料需要中心にグローバルで+0.8百万トン増を見込み、結果期末在庫は前月見通しから▲1.2百万トン下方修正、261.52百万トンとなる見通しである。これにより需給率は99.7%、在庫率は32.3%となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開
~短期的には足元生育状況が鍵。中長期には大豆/大豆油のバイオディーゼル需要をどの程度見るかがポイント
今月の需給報告は需給数字のみで判断すると大豆、小麦はやや弱気、トウモロコシは中立からやや強気と捉えられる。但しサプライズを与える程の内容ではなかったことから金曜日の市場は良好な作柄も反映して弱含みの展開であった。
トウモロコシは受粉最盛期であり、大豆の開花も順調に進んでいる環境下、中西部の主要州は定期的な降雨が見られ、今のところ単収に負の影響を与える天候パターンは予報されていない。暫くは産地の天候を睨み、弱含む展開が予想される。
しかしながら中期的には大豆主導で上昇リスクが高まると予想する。EPA(米環境保護局)のよるバイオディーゼルの使用義務量引上げ提案による大豆油の需要が今後もさらに増加が想定されること、またこれにより輸出見通しを下方修正しており、上記通り輸出市場では南米の重要性が益々強まる環境下、秋口以降南米の新穀で作付けから収穫まで問題なく経過することが必須となってくる。
現時点でペルー沖太平洋ではエルニーニョ、ラニーニャ現象の発現可能性は低いと予想されているが、今後の夏場の北米、秋からの南米の天候に何等か異変あれば、市場は敏感に反応すると思われる。
トウモロコシは新穀需給が緩和一辺倒ではなくなる中、来年度の新穀作付けが大豆にシフトするシナリオが現実味を帯びてくると、大豆に追随しての価格上昇リスクはある。特に現状投機筋は良好な作柄を背景に大きく売り越しており、このポジションの動向も要注意である。
小麦は需給報告では米国産の輸出需要増を見ているが、基本的にグローバルの需給は緩い。大豆、トウモロコシの上値リスクが具現する場面や、長期化するロシア・ウクライナ紛争で黒海からの小麦積み出しに障害が出るリスクは引き続き常に意識しておきたい。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(7月15日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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