需給報告は大きなサプライズなし。大豆は需給報告翌日発表のバイオディーゼル使用義務量の引上げ提案が今後の波乱要因。~2025年6月度米農務省需給報告より
更新:2025/6/19
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
6月12日に米農務省より月例需給報告が発表された。通常6月は新穀の作付面積、単収の見直しは行われないので、大豆、トウモロコシについては残り2か月強の旧穀需給(期末在庫の着地)が主な焦点となる。また小麦は収穫間近の冬小麦の生産見通しにも注目が集まる。以下に報告の主なポイントを列記するが、今回は概ね変更点は少なく、結果市場へのインパクトも限定的であった。一方、翌13日にEPA(米環境保護局)が打ち出した来年、再来年の再生可能燃料使用義務量の引上げ提案は大豆需給に与えるインパクトは大きく、今後の波乱要因となろう。
◆米国トウモロコシ需給
旧穀需給見通しは輸出を先月に続き+50百万ブッシェル上方修正し、その分、期末在庫が下方修正され1,365百万ブッシェルとなった。輸出は5月までの実績に加え、現時点での成約残を勘案しての修正である。新穀需給は旧穀の期末在庫=新穀の期初在庫下方修正以外は需給自体の修正はなかった。結果、新穀期末在庫は1,750百万ブッシェルで在庫率は11.6%から11.3%に小幅減少する見通しである。新穀の生産量については来月のレポートでは6月末発表の実作付面積が採用され、8月以降のレポートでは実地サーベイを基にした単収が使われるので、徐々に理論値から実態に近づいて行く。
(出所:USDA)
(出所:USDA)
◆米国大豆需給
米国の大豆需給は旧穀、新穀共に前月見通しを据え置いた。合わせて大豆ミール、大豆油の需給も前月から据え置きとなった。来期末(2026年8月末)の在庫率は6.7%で変わらず。
(出所:USDA)
◆大豆世界需給
大豆の世界需給では旧穀で中国の搾油量を▲1百万トン下方修正、その分同国の期末在庫が上方修正された。新穀は中国の在庫増加が反映された以外は主だった修正は入っておらず、結果グローバルでの新穀期末在庫は125.30百万トンで前月時点での推定から+1.03百万トン上方修正された。在庫率は29.5%で前月比+0.2%となる。
(出所:USDA)
◆小麦のハイライト
今月から始まった25/26新穀物年度の冬小麦生産量は硬質系が微減、軟質系と白色小麦が微増で、前月から据え置きの春小麦と合わせて全小麦の生産量は1,921百万ブッシェルで結果前月と同量であった。需要面では輸出量を価格競争力から見て前月から+25百万ブッシェル上方修正し825百万ブッシェルとした。期末在庫はその分▲25百万ブッシェルが下方修正され、898百万ブッシェルとなる見通しである。この下方修正を勘案しても需給緩和状況に大きな変化はない。また硬質冬小麦の主産地であるカンザス州では作柄の改善から、今後単収の増加が予想されている。
(出所:USDA)
一方、新穀の世界需給では、EUやインドで増産見込みである。EUは昨年干ばつに襲われたスペインでの生産量回復が著しく、またインドはモンスーン期の順調な降雨が背景となっている。一方ロシアの旧穀期末在庫見直しで▲1.5百万トンの下方修正を見ており、結果供給面は▲1.2百万トンの下方修正となった。需要面では北アフリカ諸国やインドでの食用、種子用、工業用など合計で+1.8百万トンの増加が見込まれ、結果期末在庫は前月見通しから▲3.0百万トン下方修正、262.76百万トンとなる見通しである。これにより需給率が僅かであるが100%を割り込み99.9%、在庫率は32.4%となる。
(出所:USDA)
◆今後の相場展開〜本格的な天候相場へ。大豆はバイオディーゼル需要が波乱要因
今月の需給報告は事前の予想通り大きなインパクトを与える内容ではなかったので、まずは大豆、トウモロコシは今後生育に重要なステージに入ることもあり産地での天候が鍵となる。但し大豆については13日にEPA(米環境保護局)よりバイオディーゼルの使用義務量が今年の33.5億ガロンから来年度56.1億ガロンへの引上げが提案され、提案が認められると来年度(カレンダー年)以降原料たる大豆油の需要が急増する。更に提案では輸入品由来の製品との格差をつける形となっており、米国産大豆油にまずは需要が集中する事が想定される。先月も指摘の通り、元々大豆は豊作前提でも新穀需給の引き締まりは顕著であるので、更なる需要増は価格レベルの上昇リスクが高まる。今後の天候推移は見つつも、バイオディーゼル絡みでの議論も注視しておく必要がある。
(出所:CBOT)
トウモロコシは需給緩和の方向性自体に変化はないが、緩和の幅が小さくなりやや上値リスクが増大しつつある。いずれにしても特に7月、8月の天候推移は更に重要になってくる。
小麦は需給の緩さから投機筋は大幅な売り越しとなっているが、大豆、トウモロコシの上値リスクや長期化するロシア・ウクライナ紛争で黒海からの小麦積み出しに障害が出るリスクは常に意識しておきたい。
(出所:CFTC、CBOT)
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(6月15日記)
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
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