イスラエル・イラン情勢の原油市場への影響
更新:2025/6/18
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)
6月13日、イスラエルはイランに対して突如攻撃を実施、6月15日に行われる予定だった米国とイランの核協議は中止となった。イラン側もこれに対して報復を行い両国は空中戦ながら戦闘状態に突入。現時点の西側メディアの報道では、イスラエルがイランの制空権を確保し、イランが中東諸国並びに米国に停戦の仲介を要請しているとしている。今回のイスラエルの軍事行動はいくつかの要因が重なったことによるもので、イランが核濃縮を止めるつもりが無いこと、それが分かっているものの米国とイランが協議を行った場合(恐らく根本的に戦争が好きではない)トランプ大統領が妥協して合意する可能性があることなどが主な所ではないか。今後の展開は恐らく以下の通り段階があるが、現時点では、2.の状態。実際にどうなるかは、今後のニュースを注視するほかない。
1.イスラエルの攻撃に対してイランが反撃、米軍基地などヘの攻撃はなく、一定の応酬が続いたのちに終了
2.1.の攻撃対象が拡大する場合
3.ハメネイ師やネタニヤフ首相などの両国重要人物の殺害による戦闘激化
4.米軍基地ヘの攻撃が行われ、米国がイランに報復を行い戦闘が激化
5.イランに対する地上部隊の派遣(全面戦争)
いずれにしても現在、両国は戦闘状態にあることは事実であり、この一連の攻撃で両国のガス・石油インフラに影響が出ている状況。イスラエルはエジプトやヨルダンに輸出するガスを生産している、同国最大のガス田であるリバイアサンガス田の稼働を停止、イラン側もイスラエルの攻撃で同国最大のサウスパースが被害を受けたとされている。これを受けて既にガス価格は上昇している。
原油に関しても同様であり、仮に製油所や輸出ターミナルに攻撃があった場合、原油価格は上昇する。具体的な破壊行動がなくとも、まずは投機筋のショート・ポジションの買い戻しから入るため、国際指標であるブレント原油価格は昨年4月・10月に起きた両国の軍事行動の際に付けた80ドルや90ドルが目安となるが、取りあえず80ドル近辺まで上昇して第一弾の買い戻しは終了している。このまま仮にイランの原油が市場に出てこなくなった場合、恐らく平均価格は75ドル程度になるだろう。ただし、ホルムズ海峡の航行に支障が出なければ、OPECプラスの余剰生産能力で補うことが可能であるため、価格上昇は長期には及ばないと考えられる。
では、イランが戦闘状態になると必ず意識されるホルムズ海峡が本当に封鎖されたらどうなるだろうか。実は今回、かなり早い段階でイラン側から「ホルムズ海峡を封鎖する」との声明が流れた。ペルシャ湾で妨害電波が出ているとの報道が流れたが、今のところ物理的に同海峡を封鎖する動きは見られていない。仮に、ペルシャ湾の北側、イランの領海を通過できず半分の船舶が航行できなくなり供給量が半分に減った場合、ブレント原油価格は平均で100ドル程度までの上昇が有り得る。仮に完全に封鎖されると、130ドル程度に上昇することが想定される。もちろん、ここを封鎖する場合、イランがその他の中東産油国を敵に回すことを意味するため、これが行われる場合はかなり厳しい状況に陥っており、原油の調達にも支障が出ることが予想される。消費国もしばらくの間は戦略備蓄の放出で凌げるだろうが、それも永劫可能というわけではない。
仮に原油供給が途絶した場合、産業活動は停滞を余儀なくされ、電車やバスなどの交通機関は間引き運転となり、物流の停滞でモノの価格は上昇、コストプッシュのインフレが発生し、価格高騰沈静化・インフレ沈静化のための金融引き締めが不可避となり、金利上昇で株も下落というシナリオが想定される。電力・ガス供給の減少は産業活動の停止のみならず、病院や公共交通機関などの必須のインフラの稼働停止に繋がるため軽く考えるべきではない。まして今年は猛暑が見込まれている。こうなることを回避するための外交努力が必要であることは間違いないが、イスラエル側はその気がなさそうであり、まだ消しきれないシナリオの1つである。日本が独自でできる自衛はエネルギーの調達先を増やす、省エネなどに加え、原発の再稼働ぐらいしか選択肢がないが、あらゆる選択肢を事前に考慮しておくべきだろう。実際に停止してしまってからでは選択肢は限られる。何も起きなければそれはそれで良しとするべきである。
なお、何もなければトランプ関税の影響もあって原油価格は65ドル程度までの下落が見込まれるが、戦況次第の部分はあり、正直なんとも言えない所だ。
株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
当コラムに関してご留意頂きたい事項
- 当コラムは投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。
- 当資料に示す意見等は、特に断りのない限り当資料作成日現在の (株) マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) の見解です。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
- 本資料は当社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
ご注意事項
- 買付時の手数料は、売買代金の1.65% (税込)、売却時の手数料は無料です。
- 本取引は金・銀・プラチナの価格変動により、投資元本を割り込むことがあります。
-
本取引は、政治・経済情勢の変化および各国政府の貴金属地金取引への規制等による影響を受けるリスクがあります。
また、かかるリスクが顕在化した場合、当社の提供するサービスの全部、または一部が変更、停止されるリスクがあります。 - 本取引は為替相場の変動により損失を被ることがあります。
- 本取引は、システム機器、通信機器等の故障等、不測の事態による取引の制限が生じるリスクがあります。
- 本取引は売値 (Bid:お客さまが売ることの出来る値段) と買値 (Ask:お客さまの買うことのできる値段) の差 (スプレッド) があります。
- スプレッドは固定されるものではなく、需給バランスや、政治・経済情勢の変化にともない、当社の任意で変更いたします。
商品先物取引に関するご注意事項
商品先物取引のリスクについて
商品先物の価格は、対象商品の価格の変動等により上下しますので、これにより損失が発生することがあります。また、商品先物取引は、少額の証拠金で当該証拠金の額を上回る取引を行うことができることから、時として多額の損失が発生する可能性を有しています。したがって、商品先物取引の開始にあたっては、下記の内容を十分に把握する必要があります。
- 市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、短期間のうちに証拠金の大部分又はそのすべてを失うこともあります。また、その損失は証拠金の額だけに限定されません。
- 損失を被った状態で建玉の一部又は全部が決済される場合もあります。更にこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。
- 商品取引所は、取引に異常が生じた場合又はそのおそれがある場合や、JSCCの決済リスク管理の観点から必要と認められる場合には、証拠金額の引上げ等の規制措置を講じることがあります。
- 市場の状況によっては、意図したとおりの取引ができないこともあります。例えば、市場価格が制限値幅に達したような場合、 転売又は買戻しによる決済を希望しても、それができない場合があります。
- 市場の状況によっては、商品取引所が制限値幅を拡大することがあります。その場合、1日の損失が予想を上回ることもあります。
商品先物取引の手数料について
商品先物取引のインターネットでの取引にあたっては、下記のとおり所定の手数料がかかります。
金 (限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円 (税込)
銀 (限日現金決済先物取引):片道1枚につき82.5円 (税込)
白金 (限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円 (税込)
堂島コメ平均 (米穀指数先物取引):片道1枚につき330円 (税込)
商品先物取引は、クーリング・オフの対象にはなりません
商品先物取引については、注文の成立後、その注文を解約すること (いわゆるクーリング・オフ) はできません。
金融商品取引法等に関する表示
商号等 株式会社SBI証券 金融商品取引業者、商品先物取引業者
登録番号 関東財務局長 (金商) 第44号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 日本STO協会、日本商品先物取引協会、一般社団法人日本暗号資産等取引業協会