2025-06-19 20:59:37

緩和傾向継続の小麦需給、大豆/トウモロコシ新穀需給は見方が分かれる~2025年5月度米農務省需給報告より

更新:2025/5/16

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

5月12日に米農務省より月例需給報告が発表された。5月は初めて来期2025/26穀物年度の需給見通しが発表される月である。今回の報告では改めて小麦の弱い需給状況が確認された一方で、新穀で大豆は需給逼迫、トウモロコシで需給緩和の方向性が示された。但しトウモロコシは緩和の幅が事前に予想された程となっておらず、大豆、トウモロコシは若干強気の内容と評価された。以下5月需給報告のポイントを報告する。

◆米国トウモロコシ需給
旧穀需給見通しは輸出を+50百万ブッシェル上方修正し、その分期末在庫が下方修正され1,415百万ブッシェルとなった。新穀生産量は3月末発表の作付け意向面積をベースにトレンド単収を前提として15,820百万ブッシェルと予想している。24/25年度から+953百万ブッシェルの増産となるが、あくまで現時点での理論値であり事前に予想された数字である。需要面では国内飼料用、輸出用の今年度からの増加を想定、供給増に起因する価格下落で国内需要量全体は史上最高を見込んでいる。但し、来年度ガソリン需要の伸びを想定しておらず、その流れでエタノール需要を今年度並みでおいた点は興味深い。結果新穀の期末在庫は1,800百万ブッシェルで、今期末からの積み増しではあるが、2,000百万ブッシェル前後を見ていた事前予想を大きく下回った。

(出所:USDA)

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバルでの今期の生産量はブラジルが+4百万トン増と大幅上方修正となっている。一方で飼料向け等需要増と相殺され、期末在庫は▲0.4百万トンの下方修正となっている。来年度新穀は米国、アルゼンチン、ブラジル、ウクライナ等で増産を見込んでおり、今年度から+43.7百万トンの供給増を予想するも、今年度比較で期初在庫が少ないこと、あるいは飼料需要増の要因から期末在庫は+0.5百万トンの微増にとどまる見通しである。トレード面では現在在庫消化から輸入量を抑制している中国は来年度+2百万トン増の10百万トンを予想している。結果として新穀の期末在庫は277.84百万トン、需給率は99.30%、在庫率は21.8%となる。

(出所:USDA)

◆米国大豆需給
大豆旧穀は輸出見通しを前月から+25百万ブッシェル上方修正し、その分期末在庫を下方修正、350百万ブッシェルに修正された。新穀需給は生産量が作付面積減、単収増を反映させて4,340百万ブッシェルと今年度の4,366百万ブッシェルから小幅減少にとどまった。一方で、引き続き好調な国内搾油需要を反映させて需給合計は4,415百万ブッシェル、期末在庫は今年度から▲55百万ブッシェル減の295百万ブッシェルを予想している。搾油需要はミールが飼料用、輸出用で好調、また、油もバイオディーゼル用増加を前提としている。結果来期末(2026年8月末)の在庫率は6.7%まで下落する計算である。

(出所:USDA)

◆大豆世界需給
大豆の世界需給では、今期はブラジルとアルゼンチンが生産量見通し据え置きとなるなど微調整であった。新穀需給ではブラジルが更に増産し+6百万トン増の175百万トンを見込む。中国の輸入需要を今年度104百万トンから112百万に増加する見通しであり、増加の大部分をブラジルが供給する図式が示されている。結果として米国の輸出シェアであるが10年前は40%であったが来年度は26%まで落ちる計算であり南米依存が強まる可能性がある。グローバルでの新穀期末在庫は124.33百万トンで今期末から+1.15百万トンの積み増しを見込む。在庫率は29.3%で現状から大きな変化はないと予想されている。

(出所:USDA)

◆米国小麦需給
今月末で期末を迎える米国旧穀需給は微調整、前月から▲5百万ブッシェル下方修正の841百万ブッシェルの着地予想である。また、新穀であるが全小麦の生産量見通しは1,921百万ブッシェルで旧穀の1,971百万ブッシェルから微減となる見通し。作付け面積は減少しているが、昨今の降雨による作柄改善から単収増が見込まれる背景がある。輸出入の見通し、国内需要などの出入りはあるが総需要も小幅減の1,959百万ブッシェルとなる見通しである。但し、今期の期末在庫=新穀の期初在庫が今年度比較で大幅増となることから、来期末の期末在庫は923百万ブッシェルと6年ぶりの高水準で更に需給緩和の状況になる見通しである。

(出所:USDA)

◆世界小麦需給
一方新穀の世界需給では、今年度不作であったEUは現状作柄が良好であることから前年度から+13.9百万トン増の136百万トンを予想している。その他インド、アルゼンチン、カナダなどで増産が見込まれる一方で、今年度記録的な豊作であった豪州やカザフスタンは幾分の減産を見込み、ネットでグローバルには+8.8百万トンの増産が予想されている。需要面では食用、飼料用共に伸びが予想され、結果として来期末の在庫は今期末から+0.5百万トン増の263.73百万トンとなる見通しで、需給率は100.1%、在庫率32.9%となる。

(出所:USDA)

◆今後の相場展開~本格的な天候相場へ
大豆、トウモロコシの新穀需給は未だ理論値の域を出ないが、大豆は需給の一段の引き締まり、トウモロコシは需給緩和の方向性が示された。現時点での米国での新穀作付けは両産品共に平年以上のペースで順調に進んでおり、今回の需給報告で示された供給側の数字は現時点では是認出来る。

今後作付けの後半戦、その後の生育状況が相場展開を左右することは言うまでもないが、大豆は豊作前提でも比較的厳しい需給状況で、新穀の生育に多少でも障害が出ると上値リスクが大きいと考えられる。また、大豆は最大の輸出先である中国との関係も材料視されているが、当面は中国側の関税有無に拘わらず価格面で南米が有利なタイミングであり、米国の新穀商談が本格的となるタイミングまでは産地の天候を主たる材料として動くと思われる。

トウモロコシは今後の生育及び新穀の需要次第では期末在庫20億枚超もあり得ると思われ、下値リスクもそれなりに内在していると言える。もちろん大豆同様に生育に影響を与える天候異変があれば常に上値リスクは伴う。

小麦については需給状況が弱いことから、トウモロコシとの価格差なども意識されつつも、当面の反発はテクニカル主導の買い戻しに限定されると考える。

(出所:CFTC、CBOT)

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(5月13日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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