2025-06-22 18:28:47

トウモロコシ価格上昇の日本国内への影響

更新:2025/5/2

提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA)

昨年はラニーニャ現象発生の恐れで価格の高騰リスクが懸念されたトウモロコシ価格だが、蓋を開けてみれば記録的な豊作となり、トウモロコシ価格は比較的安定した推移となっている。トウモロコシを含む穀物価格に影響を与えるのはやはり産地の生産状況であり、そしてどの程度輸出に回せるかどうかが重要になる。トウモロコシの輸出は2024-25穀物年度で米国が34.3%、ブラジルが23.3%であり、次いでアルゼンチン19.1%、ウクライナが11.7%となっており、これらの地域の生産動向が価格に影響を与える。基本的に穀物は食品であるためそれを消費する人口が増加しなければ消費量は大きく変わらないのだが、2005年の米国のエネルギー政策法によってガソリンにエタノール混合を義務付ける、「再生可能燃料基準(RFS)」が導入され、輸送需要がエタノール需要を左右し、トウモロコシ需要も左右するようになった。結局、これまでは景気の動向に連動し難い商品だったが、この20年で「景気に半分程度連動する」商品になった、とも言えるだろうか。結果的に原油価格を通じたガソリン価格動向に価格が左右されるようになった。

日本は主に米国からトウモロコシを輸入しており、昨年の輸入量は1,528万トンで、米国産が1,169万トンとシェアは76.5%に達する。ブラジル産は323万トンで21.2%だ。日本でも北海道などでトウモロコシを栽培しているが、これは食用の「スイートコーン」であり、米国産のトウモロコシとは少し種類が異なる。生産量も25万トン程度であり、全体の供給量の2%弱である。では、これだけ大量に輸入されているトウモロコシは何に用いられているのか。約7割程度が家畜の飼料原料として用いられており、2割程度がコーンスターチ用の工業需要(但し約7%の製紙用を除く大半は糖化製品、加工澱粉などの食品原料用)、そして1割程度がコーンフレークやポップコーンなどの食用に用いられている。大半が家畜の飼料と考えて良いだろう。

(出所:CBOT)

家畜といった場合、最終的には食肉加工会社などが国内で牛や鳥、豚などを育てているケースはあり、飼料価格の上昇は肉や鶏卵の生産コスト上昇に繋がる。工業需要は食品向けに加工されるものも多く、トウモロコシを直接使う菓子メーカーの他、甘味料やコーンスターチを使用する飲料メーカーの調達コストにも影響がある。ただし生産する商品や用途によって、生産コストへの影響はまちまちであるため、トウモロコシ価格の上昇がこれら全ての業種の業績に等しくマイナスの影響を与える、というものではない。ただ、生産コストへの影響が大きいという意味では畜産向けの影響が大きいと考えられる。畜産に影響が出るということは牛肉や豚肉、鶏卵価格の上昇に繋がり企業の業績のみならず、我々の生活にも影響が及ぶことを示唆している。

農林水産省の調査では、令和5年の経営コストに占める飼料費の割合は、肥育牛が40%、乳牛が北海道で48%、都府県平均で56%、肥育豚が67%、養鶏ではブロイラーが59%、採卵が57%と高い。そして飼料はトウモロコシだけで作られておらず、家畜の種類(牛・豚・鶏)によって異なるが、3割〜5割がトウモロコシ、1割〜2割が大豆ミール、1割が小麦の副産物、残りが魚粉やコメなどだ。やはりトウモロコシ価格の変動リスクに晒されやすい。実際、日本の企業物価指数のうち、配合飼料価格指数とトウモロコシ輸入CIF価格の間には高い相関性がある。

今のところ価格が安定しているトウモロコシであるが、北米の生産動向によっては再び上昇も有り得る。国内消費のほとんどを海外、米国から調達しているため、為替レート変動の影響も無視できない。ただし、現在世の中を騒がせているトランプ関税の影響は、トウモロコシに関しては既にそのシェアが高いこと、季節的に米国産が割高となる時期があり、ある程度の調達先の分散は不可避であることからその影響はさほど大きくないと考えられる。

(出所:日本銀行)

なお、2010年以降のTOPIX食料品株指数と大阪取引所(OSE)トウモロコシ価格の間には、緩やかな逆相関の関係が確認できる。ただ、対象企業数が多く食料品と言っても企業の業種も多様であり、統計的に有意といえるレベルではない。またOSEトウモロコシ先物は殆ど取引されていない状況であり、あくまで参照価格の位置付けではあるが、これまで観てきた様に調達コストの上昇が業績に影響して株価にも影響を及ぼしている可能性は否定できない。今後もこうした株価と食品価格の動向は、意識してウォッチしていく必要はあろう。

(出所:東京証券取引所、大阪取引所)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー (MRA) 檜垣 元一郎

1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。

その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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