2025-06-22 17:40:21

アルミにもトランプ関税の影響

2025/2/26
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

アルミ価格はその他の商品と同様、米政権の関税引き上げ方針を受け、取引所の価格ではなく現物プレミアムが上昇する形で市場は反応している。銅は今回の関税引き上げの対象となるカナダ・メキシコからの供給比率が13.8%程度にとどまる一方、アルミは輸入品53.5%に占めるカナダのシェアが56%と高いため、関税引き上げが仮にカナダに限った話だとしても米国内の供給に占めるシェアが30%に達するため、実際に現物供給に支障が出る可能性を意識した動きとみられる。まだなんとも言えないが、アルミ関税とカナダに対する関税がともに加算され、50%になる可能性もあるようだ。

仮に米国がすべての国に対してアルミとアルミ製品に対する追加関税25%を適用した場合、米国のアルミ調達コストは+13.4%上昇することになる(もし50%になればこれの2倍)。しかし、関税が引き上げられた場合、輸入者側の値引き圧力の高まりや、輸入価格上昇分をそのまま国内価格に転嫁できず、輸入側の事情で輸入が減少することも起こり得る。その結果、関税引き上げ対象となる国の米国向けの輸出フローは減少し、その他の地域にシフトすると予想される。この影響が出るのが欧州やアジアということになるが、既に欧州の現物プレミアム(通常、LME価格に対して地域毎の需給などを考慮して付加される上乗せコスト)は低下しており、おそらく記録的な高水準になっていた日本のアルミ現物プレミアムにも下押し圧力が掛かると予想される。

(出所:CME)

また、現物プレミアムだけではなく、LMEの本体価格も上昇している。これは主要取引所のアルミ在庫の水準が低く、世界的に需給がタイト化していることが背景にあると考えられる。実際、中国のアルミ生産は旺盛で2025年1月は前年比+3.7%の374万トンとなったが、それでも精錬品の輸入が増加している。また、LMEアルミの期近の期間構造が、現物価格の方が期先の価格よりも高いバックワーデーションになっていることも、現物需給がタイトであることを示唆している。

(出所:LME、SHFE、CME)

以上を勘案すると、アルミ価格はしばらく上昇余地を探る動きになりやすいと予想される。また、3月には中国で全人代が開催されるが、不動産セクター問題の解決に向けて何らかの対策が打ち出されると予想される。このことも期待需要の増加を通じて、アルミ価格を押し上げることになるだろう。

しかし、米国の関税引き上げの影響で相互の交易活動が停滞、米国内でも輸入価格の上昇が需要を押し下げる可能性は否定できない。トランプ関税による経済の混乱が、株価を押し下げ市場参加者のリスク選好を後退させて価格が下落する展開も十分有り得る。また、ここまで厳しい状況にあれば実施されるだろうと考えられている中国の不動産対策が実施されない、あるいは期待ほどではなかった場合なども年初から買いポジションを積み上げている投機の手仕舞い売りを誘い、価格を下押しするシナリオも否定できない。当分、トランプ劇場にアルミ市場・アルミ価格も翻弄されることになると懸念される。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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