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プラチナ価格の上昇は中国動向が左右か
2025/2/6
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
プラチナ投資関連情報を提供しているWPICの推計では、2025年のプラチナ需給バランスは▲53万9,000オンスの供給不足になる見通しであり、これで3年連続の供給不足が見込まれている。また、投機目的の需要(延べ棒・コイン、ETFなど)を除いた需給バランスもこの3年間供給不足の状態だったが、こちらも供給不足幅を縮小させる見通しだ。需給バランスは供給不足ながら、供給過剰幅の縮小は価格の下落要因となるため、2025年もプラチナ価格は現状水準での推移が予想される。
供給は南アフリカからの生産が減少する一方、リサイクル品からの供給回復が見込まれ、全体で前年比+5万5,000オンスの732万4,000オンスが見込まれている。ただし、PGM(Platinum Group Metals プラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの6種を指す。触媒や電子部品、半導体、宝飾品に用いられる)価格の低迷で鉱山供給の回復が遅れていること、ロシアに対する欧米の制裁によりロシアからの生産が下振れする可能性があることは供給見通しの下振れリスクだ。
工業製品需要は、工業向け需要が▲21万8,000オンスの減少となるが、自動車触媒向け需要が+7万2,000オンス増加するほか、宝飾品・投機需要の緩やかな回復で、786万3,000オンスが見込まれている。ファクターとして読みにくいのが自動車向け需要で、100%純粋なバッテリー車(EV車)の普及への過度な期待が後退、内燃機関を搭載するハイブリッド車(HV車)の需要が高まる一方、通常の化石燃料車の需要の減少見通しも鈍化すること、欧州・中国の排ガス規制強化の継続を受けて、プラチナ需要が上振れる可能性がある。
(出所:WPIC)
現在のプラチナ価格は、貴金属セクターのベンチマークである金に比べるとかなり割安に推移しているがプラチナの取引自体は活況で、実需・投機を合わせた総建玉は2000年以降で最高水準となっている。これは投機筋のみを切り出しても同じだ。プラチナ市場の売りと買いを合わせた総建玉はプラチナ先物市場への資金流入の指標とも言えるが、投機資金が流入したとしても需給ファンダメンタルズがタイトでなければ価格が上昇しないことを示唆している。
なお、先物市場には証拠金として資金が流入するため、その証拠金に基づいて売り・買い両方の取引が行われることから、必ずしも資金流入=価格上昇の構図になるわけではない。これに対して現物ETFは購入と同時に現物を担保として保有する現物ETFが多いため、ETF市場への資金流入は価格上昇要因となる。コロナ・ショックが発生した2020年以降の値動きのみを切り出すと、プラチナ価格に対して最も説明力が高いのが投機筋の先物市場の売買動向であり、ETFの管理在庫も含むそれ以外の統計とは明確な価格相関性がない。基本的には最大用途である自動車触媒向けの需要見通しが不透明であるためと考えられ、投機筋のポジションもネット買い越しではあるがヒストリカルに見て拮抗している。
(出所:NYMEX、CFTC)
自動車触媒向け需要の見通しは、長期的にみてEV普及の鈍化とHV需要の増加、内燃機関車の需要が継続すること、欧州でも内燃機関車の販売が継続する中でのEuro7規制導入見通し(2027年から)を考慮すると、脱炭素に伴うEVの加速度的な普及で需要が減少するという見通しは修正され、緩やかな増加になると考えられる。このことはプラチナ価格の上昇要因となる。
また、この状態で比較的プラチナ価格に対する説明力が高いのが宝飾品需要であるが、宝飾品向けの需要は中国の需要が劇的に減少したことで全体の需要が押し下げられた。中国の個人消費回復の遅れが、プラチナの宝飾品向けの需要も減じているとみられる。中国の自動車に占めるEV車の比率が上昇する中では、中国の宝飾品需要の回復ももう1つの需要増加・価格上昇要因となり得る。とはいえ、中国の個人消費回復のためには、現在、中国の倹約志向の高まりの一因である不動産問題の解消、ないしは株価の上昇が必要になると予想されるため、結局のところ中国政府の経済対策が価格を左右することになる。トランプ政権の対中制裁強化も個人消費をさらに冷え込ませるリスク要因の1つだ。とはいえ、中国政府もこの状況を放置すると国内の政情不安に繋がるため、2025年は財政赤字を許容して経済対策実施の見通しであることから、この観点から宝飾品向けのプラチナ需要も緩やかではあるが回復が予想される。
(出所:WPIC、NYMEX)
以上を勘案すると2025年のプラチナ価格は現状維持~緩やかな上昇が想定される。しかし、需要の緩やかな回復が期待される中で上述の通り鉱山供給が下振れる可能性があることを考えると、貴金属セクターのベンチマークである金価格が史上最高値を維持する中で、循環物色によるプラチナ上昇シナリオも意識しておく必要があろう。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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