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株との連動性を高める金
2025/1/29
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
◆ドル指数と金価格の長期トレンド
金価格は上昇を続けており、過去最高値に迫る展開となっている。金価格は主に実質金利とリスク・プレミアム(実質金利以外の要因)で構成されるが、現在は実質金利の影響がかなり低下しており、リスク・プレミアムが価格を決定している。リスク・プレミアムに影響を与える主な要因は、ドル指数の動向、通貨の分散投資需要(ドルやユーロからのシフト)、安全資産需要(信用リスクや地政学的リスクなど)だ。
過去、リスク・プレミアムが大きく上昇した局面として、以下のようなイベントが挙げられる。
✓1971年のニクソン・ショック(ドル回避)
✓中東戦争(地政学的リスク)
✓1985年のプラザ合意(ドル回避)
✓2008年のリーマン・ショック(ソブリンリスク、信用リスク、ドル指数動向)
これらのイベントでは、多くの場合ドル回避が発生しておりドル指数動向に関連するリスク・プレミアムの上昇が金価格の急騰を引き起こしている。
一方で、ドル高が進行しても金価格が上昇するケースも存在する。実際、リーマン・ショックがあった年以降の約18年間のトレンドを見ると、金価格とドル指数はともに水準を切り上げている。金価格がドル指数と連動する局面では、ドル指数がトレンド線を下回ると金が物色され、逆にドル指数がトレンド線を上回ると金価格はトレンドを下回る傾向が確認できる。この関係性は18年間継続しているが、例外的に両者が同時にトレンド線から大きく乖離するケースがある。ドル指数の場合、金融政策がタカ派に転じた場合が主な要因であり、金の場合は信用リスクや地政学的リスクが高まった際に発生している。
(出所:CME)
ドル指数においては、利下げによる下落よりも、利上げによる上昇の影響が大きいようだ。一方で金価格が大幅に上昇した過去の事例は、リーマン・ショックによる信用リスクやその後の米国債格下げ、またコロナショックが挙げられる。いずれも事態収束後には時間経過と共に金価格がトレンド線を下回る水準まで低下している。
◆株価との連動性を高める金価格~直近3年の動き
近年の金価格の動きは、それまでと異なる傾向を示している。2022年以降、ロシアのウクライナ軍事侵攻や中東情勢の悪化によって地政学的リスクが高まり、安全資産需要が増加した。この影響で金価格はトレンド線を上回る水準にあり、ドル指数も同時に上昇している。この状況は、2011年8月の米国債格下げ時点と類似しており、現在の乖離が特異な状況であることを示している。
注目すべき点は、2022年以降、金価格の上昇が株価の上昇と連動している点である。これ以前は金価格と株価の明確な相関はなかったが、現在では株価動向が金価格の主な説明要因となっている。特に、株を中心に運用を行うファンドが金をポートフォリオに加える動きや、株価指数と金の両方に投資するファンドが増加していることが影響していると考えられる。恐らく市場参加者は利息や配当が付かない金よりも株を主体に売買を行っている可能性が高いため、今回の金高は株高に連れる形で発生したと考えるのが妥当ではないか。
(出所:CME)
◆金価格の見通し
そこで株価見通しを基準に金価格を予想すると、市場参加者の予想では2025年末のS&P500の目標値は4,450ポイント(最低)、6,500ポイント(平均)、7,100ポイント(最高)とされている。過去3年間の株価と金価格の関係を基に回帰分析を行うと、金価格は1,990ドル(トレンド線回帰時)、2,845ドル(平均的予測)、3,090ドル(強気予測)と計算される。仮に大きなショックが発生した場合でも、金価格は2,000ドル付近でサポートされる可能性が高い。
株価が2025年上半期まで強気な見通しであることを考慮すると、金価格も年央までは上昇すると予想される。しかし、その後は株価や金価格がトレンド線に回帰するリスクも意識する必要がある。いずれにしても、株価と金価格の両方が過去のトレンドから大きく乖離している点には注意が必要である。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)
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