2025-06-22 17:28:52

ドクター・カッパーの役割変化

2025/1/8
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

◆2024年の商品相場全体を見渡すと「行って来い」の動きだった。年初から年央にかけては景気回復や景気刺激策への期待が価格上昇を牽引したが、年後半にその期待が剥落し、多くの商品が水準を切り下げた。

こうした中、「ドクター・カッパー」として知られる銅の動きを見ると、近年では必ずしも世界の景況感を正確に反映しているとは言えない状況にある。銅の役割はこの数年で変化してきた可能性があり、銅・中国棒鋼・Brent原油の価格指数化グラフを見ると、いずれも類似した動きをしていることが確認できる。これらは景気循環型商品であり、本来であれば景気の指標として重要な役割を担うべき商品群である。

出所:ICE、LME、SHFE

原油価格が銅や鉄鉱石よりも大きく変動する理由としては、保管が難しいこと、OPECが過去に価格支配力を持っていたこと、さらにはその状況下で価格調整が行われていたことが挙げられる。ただ、それでもこれらの商品は、景気の浮沈にある程度対応した変動を示している。

銅は、工業用途が幅広いため、長らく景気の先行指標として注目されてきた。しかし、中国の生産・消費シェアが5割に達する中で、銅は「中国の景況感を表す指標」としての色彩が濃くなっていた。中国が世界の工場である限り、銅が世界全体の景気を示す役割を果たしていたが、米中対立や市場の分断が進む現在、中国で生産された商品が西側諸国で消費されなくなる可能性が高まっていることがその要因の1つだ。また、銅の溶錬費(TC)の低下が示すように、銅鉱石の供給リスクが顕在化し、2023年から2024年にかけて銅鉱石不足への懸念が価格を押し上げる要因となったことも、銅価格の動きが純粋に需要動向に左右され難くなったことを示唆している。

もちろんこの背景には、脱炭素による電化の進展や、AI需要による半導体向け銅需要の増加で需給がタイト目に推移していることが影響している。まとめると、これらは景気全体の動向というより、銅特有の需給要因による価格上昇と見る方が適切であろう。むしろ、今後、銅は「電化などの構造変化」の指標になる可能性の方が高いのではないか。

一方、供給が比較的潤沢な鉄鋼製品や原油は類似した価格推移を示しており、これらの方が世界経済の動きをより正確に反映している可能性が高い。ただし、棒鋼価格は中国国内消費が主であり「中国の景況感」の指標としての性質が強い。一方、Brent原油は輸出を前提に取引されており、世界全体の景況感を表す指標としての役割を担っている。当社の見解では、OPECの価格支配力が低下する中で、原油価格は今後さらに世界景況感を反映しやすくなると考えられる。脱炭素社会が進展し原油需要が大幅に低下する可能性もあるが、現時点では原油が景況感の指標として最も適切なのではないか。

これらの価格動向は、個別の需給要因が大きな影響を与えるものの、景気循環型商品としての重要性は変わらない。このため、銅、中国棒鋼、Brent原油の3商品の動きをフォローすることが、経済全体の動向を把握する上で重要である。しかし、景気を診断するには、複数の「専門医」の視点が必要であると言えよう。なお、金価格は投機的な動きに左右されやすいため実態から乖離することも多く、景気指標としては適切ではないと考えられる。

新村 直弘

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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