2025-07-20 03:02:56

トウモロコシ需給はやや強気に変化~2024年12月度米農務省月例需給報告より

2024/12/16
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

12月10日に米農務省より月例の需給報告が発表された。例年12月の需給報告では新穀の単収見直しは実施されず、修正は主に需要面となる。また12月は大豆、トウモロコシは9月に始まる穀物年度の3ヵ月が経過したタイミングである事や、南米では作付け直後で生産量が大きく左右される時期ではないので、比較的サプライズの少ないレポートが多い。但し、今回についてはトウモロコシ需給でやや大きめの修正があり、今後のマーケットに影響を与えると考えられる事から、本コラムでは特にトウモロコシを中心に報告する。

◆米国トウモロコシ需給
2024/25年度の需給見通しは以下の通りであるが、供給面は前月から修正なしの一方で需要面の上方修正があった。まず国内需要でエタノール向けが+50百万ブッシェル(以下mbu)増加し5,500mbuとされた。米運輸省の集計による全米の高速道路の自動車総走行距離とエタノール消費量の間には高い相関があるが、米景気が想定よりも堅調であった可能性を示唆している。EIA(米エネルギー情報局)の報告による今年の9-11月エタノール生産量から算出されるトウモロコシ需要量は2017年以来の高水準であった事が示されている。また輸出需要は+150mbuの2,475mbuとした。11月28日現在、輸出成約報告累計は22,808千トン(898mbu)、既船積数量は11,384千トン(447mbu)となっており、年度後半の南半球との競合によるペースダウンを加味しても極めて順調なペースと言える。結果として期末在庫は▲200mbuの1,738mbu、期末在庫率は13.9%から11.4%に減少した。

出所:米運輸省、米エネルギー情報局

出所:USDA

◆トウモロコシ世界需給
トウモロコシのグローバルでの国内需要はブラジル、EU等の需要増を背景に+8.18百万トン増の1,237.66百万トンとした。8月報告時の需要見通しから毎月上方修正を継続しており、累計で+19.49百万トン(+1.6%)の上方修正である。結果として世界の期末在庫は前月から▲7.7百万トンの296.4百万トン、8月報告時から▲13.73百万トン減少となっている。8月時点では供給量が僅かであるが需要量を上回る状況であったが、12月の見通しでは需給率98.4%(需給率=需要÷供給)となって来ている。

トレード面ではEU及びメキシコで旱魃(かんばつ)による減産を背景に両国(地域)輸入増を各+0.5百万トンと見込んでおり、米国の輸出需要増の一部背景となっている。一方中国の輸入量を前月から▲2百万トン減の14百万トンとした。中国の輸入量下方修正は4ヵ月連続であり、8月の需給報告時点から累計で▲9百万トンの下方修正である。この間中国国内の需要見通しに変化はなく、輸入減はそのまま期末在庫削減に繋がっている。中国は200百万トンを超える期末在庫を保有しているが、不安定な米中関係、また紛争を背景にしたウクライナ産調達の不透明感などもあり、輸入依存度を減らしつつ国産強化を進めていると想像される。

出所:USDA

◆小麦、大豆需給のハイライト
小麦の米国需給は輸出見通しを+20mbu上方修正し、その分期末在庫が下方修正されて795mbuとしている。主に白色種の東南アジア向け増加を見込んだ数字である。世界需給ではロシアの輸出量を▲1百万トン下方修正して47百万トンとした。ロシアは2月15日以降6月末迄の輸出枠を11百万トンとする事が報じられており、輸出関税も引き上げられる等、年度前半の記録的な輸出ペースに歯止めを掛ける動きに出ている。11月までの輸出実績、12/1月の予測などを考慮すると今後更なる下方修正の可能性も含んでいる。その場合、米国あるいは豊作が見込まれている豪州産などに需要がシフトする可能性もある。

大豆は米国需給については前月から修正なし、世界需給でもアルゼンチン、ボリビアで作付面積増から生産量見通しを上方修正した他は需給に大きな変化はなかった。中国の大豆輸入見通しも109百万トンで変更はなかったが、中国農務省筋は今後輸入ペースが落ちる事も示唆しており、中国の大豆買付動向は引き続き市場に重要な要因となる。

◆今後の相場展開~更に重要となる南米での生育状況
先月は大豆の背景に変化がある点を指摘したが、今月はトウモロコシにも需給上大きな変化があったと認識したい。米国また世界需給が徐々にタイト化する環境下で、従来通りではあるが今後の南米の生育状況は非常に重要となる。10月中旬以降現在までブラジルの雨季には順調な降水が確認されており、今のところ生育状況は良好である。当初乾燥傾向が伝えられていたアルゼンチンも特段の問題は起きておらず、当面は1月以降の天候推移が焦点となろう。
投機筋の動向を見るとトウモロコシは11月初頭にネットショートからネットロングに転換して以降ポジションを積み上げつつあり、米国の順調な国内/輸出需要動向も見た動きと推察される。大豆、トウモロコシの世界需給はブラジル、アルゼンチン、更にパラグアイの南米三国合計で大豆231.2百万トン、トウモロコシ172百万トンの生産量が前提となっており、通常の天候パターンが必須である。今後の天候次第とは言え、年明け以降の南米の天候推移は更に需要度を増す事になり、比較的安値圏推移の現状からすると、下値リスク比較では上値リスクが大きいと考える。

出所:CFTC、CBOT

※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
(12月11日記)

檜垣 元一郎

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。

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