金・プラチナ取引 > 金・プラチナ取引とは(金・プラチナ・銀の特徴) > 金・プラチナについてもっと知ろう!「マーケットレポート・コラム」 > 貴金属・コモディティレポート > 穀物収穫終盤戦 市場の観点は南米の天候へ~2024年10月度米農務省月例需給報告より
穀物収穫終盤戦 市場の観点は南米の天候へ~2024年10月度米農務省月例需給報告より
2024/10/18
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)
10月11日に米農務省より月例の需給報告が発表された。今回のレポートでは収穫が進む大豆、トウモロコシの単収が注目された中、結果として修正は小幅で、期末在庫は事前予想の範囲から逸脱しなかった。市場の焦点は南半球の天候にシフトすると予想される。
◆米国旧穀需給
2023/24年度旧穀の需給見通しでの大きな修正はトウモロコシで、9月30日発表の四半期在庫が先月需給報告の見通しから下振れした分が反映され、繰り越し在庫は前回需給報告比▲52百万ブッシェル減の1,760百万ブッシェルとなった点である(※以下、特段注記がなければ各数値の変化は、前回需給報告との比較)。需要面で飼料用、エタノール用、輸出向けを上方修正する形で数字を合わせた。大豆は四半期在庫報告との差異が+2百万ブッシェルに留まり、需給報告内容も各項目で小幅な調整にとどまった。
◆やや強気ながら事前想定内の米国小麦需給
小麦は9月30日発表のスモールグレインサマリーの数字を反映し、全小麦生産量が▲11百万ブッシェルの下方修正となった。需要面は飼料用で+10百万ブッシェルの上方修正のみで結果期末在庫は▲16百万ブッシェル減の812百万ブッシェルとなった。全小麦では小幅修正とも取れるが、パスタ用に主に供給されるデュラム小麦が+9百万ブッシェル増であり、デュラム以外の軟質/硬質含めた小麦全体では▲25百万ブッシェル下方修正されている点は今後念頭に置く必要はある。
◆期末在庫減も想定内であった米国トウモロコシ需給
トウモロコシの単収は183.8bpa(ブッシェル/エーカー)で、前月推定値から+0.2bpa上方修正した。これに伴い生産量は+17百万ブッシェル増の15,203百万ブッシェルとした。上記旧穀期末在庫減との相殺で供給量全体では▲33百万ブッシェル減となった。需要面では輸出を+25百万ブッシェル上方修正した。これはウクライナ中心に黒海地域からの輸出減少を補う構図を想定している。結果期末在庫は▲58百万ブッシェル下方修正の1,999百万ブッシェルとなり、在庫率は微減の13.34%となった。但し、旧穀期末在庫減は織り込まれているので、サプライズとはならず、新穀単収増が若干の弱気材料と捉えられた。
◆前月に続き小幅修正にとどまった米国大豆の需給
大豆の新穀需給は前月に続き微調整にとどまった。供給面では旧穀期末在庫増、単収減(53.2bpa→53.1bpa)による生産量減、需要面で残渣用減がいずれも一桁百万ブッシェル単位での微修正で、結果期末在庫は前月から変わらずの550百万ブッシェルであった。単収の下方修正は幾分の上方修正を見ていた市場には強気には映るが、修正幅が小幅でインパクトは限定的であった。
◆世界需給のポイント
小麦はEU、ロシアで減産見通し(前回需給報告比▲2百万トン)となった。一方でウクライナは+0.6百万トンの増産、これを受けて輸出量は+1百万トンの増加の見通しとしており、EUからの輸出減をカバーする形となっている(ロシアの輸出見通しは変わらず)。若干の乾燥傾向が懸念される豪州については生産量32百万トンで据え置きとなっている。世界需給で見ると減産と同時に国内需要減も見ており、結果として世界の期末在庫は前月比で+0.5百万トンの微増となった。
なお、需給バランスは2期連続で供給不足となるが、需要対比では▲0.8%相当でありそれほど大きな供給不足という訳ではなく、在庫で吸収できるレベル(在庫率は需要対比で32.2%が見込まれる)であることから市場参加者はまだこの点を重視していない。しかし、その他の穀物も同様だが、これまで市場参加者が記録的な豊作を見込んで積み上げた売りポジションを解消する動きを強めているため、今後の異常気象による不作リスクが顕在化した場合、価格上昇の材料にされる可能性はある。
出所:USDA
大豆は世界レベルでも大きな修正はなかった。作付け前の乾燥懸念が出始めているブラジルであるが、現時点では生産量を修正する段階には至ってない。米国の生産量見通しで下方修正があったものの、世界需給にインパクトを与える減産ではない。輸入国サイドも大きな修正はなく、中国は109百万トンで据え置きとなっている。結果世界の期末在庫は134.65百万トンと前月比微増(+0.07百万トン)としている。
出所:USDA
トウモロコシ生産はロシア、ウクライナで下方修正となった(両国合計で▲1.5百万トン)。収穫の進展に伴い単収が想定を下回っている点が主因である。この減産分を米国が部分的にカバーすると見ており、上記米国需給の通り+25百万ブッシェル(=約0.6百万トン)増となっている。
輸入サイドでは中国の輸入量が景気後退や在庫調整を背景に前月比▲2百万トン減の19百万トンとした。中国の輸入見通しは先月も▲2百万トン下方修正しており、2ヶ月で▲4百万トンとなった。また、特記事項として南米のブラジル(+1百万トン)、アルゼンチン(+1.5百万トン)で国内需要増を見ている。
両国ともに旧穀の繰り越しがあり、輸出見通しに修正はないが、両国ともに国単独で見た場合に需給はタイト化する見込みであり、今後天候要因等での生産減は輸出市場に大きな影響を与えるリスクが内在する。
出所:USDA
◆今後の相場展開~収穫終盤戦、市場の観点は南米の天候へ
今後の相場見通しであるが、米国での大豆、トウモロコシは共に大豊作がほぼ確定した。9月下旬以降所謂ハーベストプレッシャーもあり相場は下げ基調となっているが、この間に投機筋は豊作を前提とした売り越しポジションを縮めて来ている。
今後はすでに乾燥傾向が伝えられているブラジル中心に南米の天候推移が作付け序盤に与える影響がクローズアップされよう。現在ペルー沖の海面水温は低下傾向が継続しており、ラニーニャ現象の特徴が具現する可能性は高い。海面水温の低下が即異常気象に繋がるものではないが、不作を先取りしての上昇リスクは常に内在する。
出所:CFTC、CBOT
※穀物価格指数=2022年1月1日の価格を100としてトウモロコシ・大豆・小麦価格を指数化し、単純平均したもの。
以上を総括すると短中期には未だファンダメンタルズは弱いが、収穫一巡で売り圧力が弱まるタイミングで、南米の状況次第ながら徐々に投機的な買いが入りやすい環境には変わりないと思われる。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 檜垣 元一郎
1982年国際基督教大学教養学部卒。住友商事株式会社入社。1985年より穀物・油糧種子現物・先物取引に従事。2001年からはコモディティビジネス部で幅広い商品の価格リスク制御の提案業務を担当。
その後、香港投資子会社、ベルギーの現地法人の社長を歴任した後、2024年マーケット・リスク・アドバイザリーフェローに就任。
専門分野は農産物全般市場分析、排出権市場分析、商品デリバティブ取引全般。
金・プラチナについてもっと知ろう!
当コラムに関してご留意頂きたい事項
- 当コラムは投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。
- 当資料に示す意見等は、特に断りのない限り当資料作成日現在の(株)マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)の見解です。当資料に示されたコメント等は、当資料作成日現在の見解であり、事前の連絡なしに変更されることがあります。
- 本資料は当社が信頼できると判断したデータにより作成しましたが、その正確性、完全性等について保証・約束するものではありません。
ご注意事項
- 買付時の手数料は、売買代金の1.65%(税込)、売却時の手数料は無料です。
- 本取引は金・銀・プラチナの価格変動により、投資元本を割り込むことがあります。
- 本取引は、政治・経済情勢の変化および各国政府の貴金属地金取引への規制等による影響を受けるリスクがあります。
また、かかるリスクが顕在化した場合、当社の提供するサービスの全部、または一部が変更、停止されるリスクがあります。 - 本取引は為替相場の変動により損失を被ることがあります。
- 本取引は、システム機器、通信機器等の故障等、不測の事態による取引の制限が生じるリスクがあります。
- 本取引は売値(Bid:お客さまが売ることの出来る値段)と買値(Ask:お客さまの買うことのできる値段)の差(スプレッド)があります。
- スプレッドは固定されるものではなく、需給バランスや、政治・経済情勢の変化にともない、当社の任意で変更いたします。
商品先物取引に関するご注意事項
商品先物取引のリスクについて
商品先物の価格は、対象商品の価格の変動等により上下しますので、これにより損失が発生することがあります。また、商品先物取引は、少額の証拠金で当該証拠金の額を上回る取引を行うことができることから、時として多額の損失が発生する可能性を有しています。したがって、商品先物取引の開始にあたっては、下記の内容を十分に把握する必要があります。
- 市場価格が予想とは反対の方向に変化したときには、短期間のうちに証拠金の大部分又はそのすべてを失うこともあります。また、その損失は証拠金の額だけに限定されません。
- 損失を被った状態で建玉の一部又は全部が決済される場合もあります。更にこの場合、その決済で生じた損失についても責任を負うことになります。
- 商品取引所は、取引に異常が生じた場合又はそのおそれがある場合や、JSCCの決済リスク管理の観点から必要と認められる場合には、証拠金額の引上げ等の規制措置を講じることがあります。
- 市場の状況によっては、意図したとおりの取引ができないこともあります。例えば、市場価格が制限値幅に達したような場合、転売又は買戻しによる決済を希望しても、それができない場合があります。
- 市場の状況によっては、商品取引所が制限値幅を拡大することがあります。その場合、1日の損失が予想を上回ることもあります。
商品先物取引の手数料について
商品先物取引のインターネットでの取引にあたっては、下記のとおり所定の手数料がかかります。
金(限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円(税込)
銀(限日現金決済先物取引):片道1枚につき82.5円(税込)
白金(限日現金決済先物取引):片道1枚につき16.5円(税込)
堂島コメ平均(米穀指数先物取引):片道1枚につき330円(税込)
商品先物取引は、クーリング・オフの対象にはなりません
商品先物取引については、注文の成立後、その注文を解約すること(いわゆるクーリング・オフ)はできません。
金融商品取引法等に関する表示
商号等 株式会社SBI証券 金融商品取引業者、商品先物取引業者
登録番号 関東財務局長(金商)第44号
加入協会 日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 日本STO協会、日本商品先物取引協会