投資調査部　鈴木　英之

10月の東京株式市場では、日経平均がもみ合いになりました。9月末を14,455円で着地した後、米暫定予算・債務上限問題で米政府機関が閉鎖されたことを嫌気し、10月8日の取引時間中には13,748円の安値を付けました。しかし、この日に米国で次期ＦＲＢ（米連邦準備制度理事会）議長に緩和的金融政策に前向きとみられるイエレン副議長が指名されたこと、16日に米暫定予算・債務上限問題で当面の合意を得たことを背景に、米株価は上昇基調となりました。これを受け、日経平均も23日には14,799円まで上昇しました。しかし、この水準が9月28日の高値14,817円に近く、結局、ここを抜け切れなかったことから、月末にかけてはやや軟調となった。結局、10月末の日経平均株価は0.9％の下落となりました。

はじめてお取引された銘柄人気ランキング（現物）では、新規上場の省電力関連のエナリス（6079）が7位にランクインしました。また、業績悪から年初来安値更新を続けたヤマダ電機がバーゲンハンティングの買いから、10位にランク入りしました。エナリス（6079）は10月8日に公募価格280円で東証マザーズに上場、8日は買い気配で寄らず、翌9日に717円で初値を付けたあと、ストップ高。その後も省電力関連と時流に乗った銘柄であることから、個人投資家の人気を集め、25日には高値2,330円と、公募価格から9倍以上の高値を付けるなど、大人気となっていました。はじめてお取引された銘柄人気ランキング（信用）では、ネット広告関連のアドウェイズ（2489）がランクイン。来年にも、無料通話アプリで大人気のＬＩＮＥが来年にも東証マザーズに上場との観測記事などから、LINE関連銘柄として個人投資家の人気を集め、売買代金ランキングではソフトバンク（9984）、NEXT FUNDS日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信（1570）のいつもの2強に引き続き「魔法使いと黒猫のウィズ」が1000万ダウンロードのニュースがあったコロプラ（3668）が9月に引き続き3位とランキング上位に定着しつつあります。また、日経平均株価の上値が重かったことから、秋の学会シーズンで様々なニュースのあったバイオ関連株中心に新興市場の一角に値を上げるものが多く、ペプチドリーム（4587）がランクイン。また、公募増資発表で株価の思惑が台頭したシャープ（6753）も上位に名を連ねました。

11月の株式相場は、さらに膠着感を強めたあと上下どちらかに大きく放れる可能性があり、注意が必要です。5日の米バージニア州知事選で、ヒラリー・クリントン（民主党）に近い候補者と茶会党（共和党）候補者がぶつかっており、その勝敗は、今後の米財政論議にも影響を与えそうです。6日にトヨタの決算発表。7日に米GDP速報値発表、8月にオプションSQ、米雇用統計発表と重要日程が続きます。10月末現在、日経平均の予想一株利益は911円で、５月以降概ね横ばいで推移しています。４〜９月決算発表（その実質的クライマックスがトヨタ決算か）を経て、この値が上振れないと、波乱の可能性もあるとみられます。反面、米雇用統計が終わり、財政問題にゆれた10月の米経済の織り込みが済めば、アク抜けが進む可能性もありそうです。