投資調査部　鈴木　英之

日経平均株価は2013年8月末、13,388円86銭となりました。2013年7月末終値に対する騰落率は、-2.04％の下落で、2013年5月以降４ヵ月連続のマイナスです。8月2日に米雇用統計（７月）が発表され、同じ日、東京市場ではトヨタ自動車（7203）の四半期決算が終了し、決算発表シーズンのヤマ場を超えました。これら重要日程以降は、株式市場も夏休み本番となってしまいました。特に安倍首相が夏休み期間となった8月10日〜21日（15日は除く）は、成長戦略の進展など、政策面での話題も出にくくなり、世の中全般のお盆休み本格化も重なり、取引は急速に閑散となりました。東証一部の売買代金は8月12日以降、2兆円を割り込み、月内はついに2兆円を回復することなく、終わりました。この間、株価の動きも基本的に「膠着状態」が続きました。2013年４月〜7月まで日経平均株価の月末終値は13,668円から13,860円の狭いレンジに収斂していましたが、8月5日〜9日の週以降は、週終値も3週連続で13,600円台で終わるというかなりの膠着状態となりました。ただ、月末にかけては、発表される米経済指標に息切れ感が見え始めたことや、米国などがシリアのアサド政権を攻撃するのではないかといった国際問題の懸念が強まり、日経平均株価は13,600円近辺の揉み合いレンジの中核をやや下回る水準で2013年8月を終了しました。

2013年8月は、多くの小売企業の株主優待について、権利が確定する月となるため、その権利を取りに行く投資家の買いが入りやすい状況となりました。8月は、イオン（8267）がその代表例となり、初めての取引で買われた投資家の方も多くおりました。同社は買い物金額に対し、保有株数に応じた割合で返金する「優待カード」を発行しています。ダイエー（8263）の子会社化といった話題もあり、信用取引でも人気を集めました。同様に、ビックカメラ（3048）は「お買い物優待券」、吉野家ホールディングス（9861）は、「300円の商品券」を最低10枚付与する株主優待を実施しており、その権利を確定する為の買い取引で売買代金が増加したと思われます。毎月のように投資家の売買を集めるガンホー・オンライン・エンターテイメント（3765）は、8月当初は下げ基調で推移し、押し目買い対象となりました。ニンテンドー３ＤＳ向けに「パズドラＺ」を発売すると8月27日に発表し、月終わりにかけても売買代金が増加しました。カゴメ（2811）は、シーズンストックという特性もありますが、中国で業務用調味料事業に参入すると伝わったことが買い材料となりました。

2013年9月相場は大きく動く可能性がありそうです。理由は、今後の世界経済および日本経済に大きく影響を残しそうなスケジュールが目白押しとなるためです。このうち9月6日（金）に結果が発表される米雇用統計（8月）については、中核指標である非農業部門雇用者数が市場コンセンサスを大きく上回ってくると、9月17日〜18日に予定されている米連邦公開市場委員会（FOMC）で、量的緩和が縮小される可能性が強まりますので、基本的には円安・ドル高、日本株高の材料になるとみられます。その他、9月7日（土）の「オリンピック開催都市の決定」、9月9日（月）の「4〜6月期GDP改定値」、9月13日（金）の「メジャーSQ」など、月前半から中盤にかけて重要な指標やイベントが目白押しとなっています。2013年9月はこれらの重要な材料を消化しながらの株価形成になることや、メジャーSQを控え、市場参加者の思惑が複雑に絡み合うことが予想されます。市場では、ＦＲＢ（連邦準備制度理事会）による債券買入額が減少するとの見方が有力です。これまではそれを織り込む形で、新興国通貨が売られ、リスク回避の円高が進んできました。しかし、いったん債券買入額縮小が決まれば、「アク抜け」感が広がり、円安・株高となる可能性もあるのではないでしょうか。