Level 4-2 構造的な変化
2026/5/20
おカネは「信用」で成り立っている
ー 通貨の信用が失われるとき、「金」という選択 ー
私たちが使っているおカネ(紙のおカネ、コイン、電子マネー)は、それ自体に大きな価値があるわけではありません。本来、おカネは「ものやサービスと交換するときに使う道具」です。では、どうしてその紙や数字に価値があるのでしょうか?
理由は簡単で、「その国の政府や中央銀行を信用している人が多いから」です。
つまり、おカネは国の信用で成り立っている“証明書”のような存在なのです。
おカネの中のおカネ〜ドル(基軸通貨)
これまで長い間、アメリカのドル(米ドル)は「世界でいちばん信用される通貨」として使われてきました。
たとえば、
- 国と国の貿易の支払い
- 世界の通貨の交換(為替)の中心
など、さまざまな場面でドルが中心的な役割をしてきました。
これを 基軸通貨(きじくつうか) といいます。これは、アメリカの総合的な国力(経済・金融・軍事力や文化などのソフトパワー)に支えられていました。しかし最近、次のような理由でドルへの信頼が低下しています。
- アメリカの財政赤字や貿易赤字が増えている(信用低下)
-
経済制裁などで「ドルを武器※1」のように使うことがある
そのため、一部の国では、「ドルに頼りすぎるのは危ない」と考え、ドルの保有量、外貨準備を減らす動き(ドル離れ)が起きています。
- ドルの武器化 米国がドル決済を止めることで、相手国の貿易や金融を麻痺させる経済制裁手段
外貨準備とドル資産
外貨準備とは、国がいざというときに備えて持っている“外国のお金の貯金”のことで、多くの国はその一部としてドル建ての資産(主にアメリカ国債)を保有しています。
信用度が高く利回りも魅力的なため、各国の外貨準備の中核資産となっています。
主要国の米国債保有額の推移を見ると、日本は横ばい〜増加傾向にある一方で、対立が深まる中国や、一定の距離を置くインド・ブラジルなどは、米国債の保有を減らす動きが見られます。
- 単位:10億ドル
- 価格データは2025年4月時点、ブルームバーグより取得
このような動きを背景に、ドルへの依存が見直され、資金の一部は金へと向かっています。その結果、金価格は上昇傾向を示しています。
では、こうした流れの中で、「金(ゴールド)はおカネの代わりになり得る」のでしょうか。
次に、その役割について考えていきます。
Tips 単位:ニュースによって値段が違うのはなぜ?
日頃、目にするニュースでも金価格が取り上げられる機会が増えてきました。そんななか、「○○貴金属店頭価格」や、「金価格が上昇・・」などで報じられる価格はそれぞれ異なります。
それは@重さの単位、A通貨、B市場が違うためなのです。
よく使われる例
- 世界:@トロイオンス、Aドル建て、Bニューヨーク市場
- 日本:@グラム、A円建て、B堂島取引所
ちなみに、「トロイオンス」とは、貴金属に限り使用される国際的な単位で 、1トロイオンスは約31.1g。フランスで中世に栄えた街「トロワ」が名前の由来です!
金(ゴールド)はおカネの代わりになるか?
おカネの役割は、主に3つあります。それは、経済活動を円滑にする道具であり、主に「交換」「価値」「保存」の3つの役割を果たします。
-
1
交換(決済)
おカネがあれば、物々交換のように条件を合わせなくても、誰とでもスムーズに売り買いができる。
-
2
価値(ものさし)
商品やサービスの値段を「100円」「1万円」など、共通の数字で比べられる。
-
3
保存(貯蔵)
野菜や魚と違っておカネは時間がたっても価値が減りにくく、保存(貯める)することができる。
一方、金属である金(ゴールド)は、その性質上、交換や価値のものさしとして使うにはおカネより不便です。
たとえば、交換では金の受け渡しに手間がかかったり、少額の買い物では金を細かく分けられなかったりします。また、価値のものさしとしても、物の値段を「金0.003グラム」などで表すのは分かりにくく、計算も複雑です。
そのため今すぐに、金が基軸通貨であるドルやおカネにとって代わるのは現実的ではないと言えるでしょう。
