米国株式市場では、NYダウが大幅続伸し、2/25(金)は834.92ドル高と、本年最大の上昇幅を記録し、34,000ドル台を回復しました。株式市場には「銃声が鳴ったら買え」という格言があり、「戦争の危機が迫っているときは、その間に売り、実際に戦争となったら買い」という経験則があります。今回のウクライナ情勢についても、ロシア軍の戦争に向けた動きが強まる過程で、すでに空売りが蓄積しており、ロシア軍が実際にウクライナに侵入したことで買い戻しが増えたものとみられます。
さらに、ロシアとウクライナの間で停戦協議が始まる可能性が指摘され、事態打開への期待が高まったことも、株価の大幅続伸につながった可能性もありそうです。NYダウについては2/9(水)高値から2/24(木)安値までの下落に対する半値戻し水準は34,048ドルと計算されますが、2/25(金)には同水準を回復した形で、NY株の回復力は意外に強いという見方も出てきそうです。
単純に軍事力の比較では、ロシアがウクライナに対して圧倒的に優位となっています。ロシアがウクライナの首都キエフを包囲している現状では、戦闘状態そのものは短期間に済み、ロシアの要求の多くを飲む形で終結するとの見方が優勢となってきている模様です。
ただ、ロシアの要求は「ウクライナのNATO加盟断念」や「ウクライナの非武装化」にとどまらず、東ウクライナの独立や、現ウクライナ政権の交替と親ロシア派傀儡政権の樹立等に進む可能性があり、ウクライナや西側諸国には認めがたいものになりそうです。仮に、ロシアの要求に近い線でまとまった場合、北欧3国のNATO加盟や、それに対するロシアの反対等、新たな紛争につながる可能性もあります。また、バイデン政権の求心力低下や、台湾海峡問題を含む東アジア安保体制の不安定化等も想定され、長期的には株安材料が増えることになりかねないと思われます。
そうした中、西側諸国が「劇薬」ともいえる国際決済網からのロシア締め出しを決断したことや、ドイツ等によるウクライナへの武器供与、ウクライナによるロシアへの抵抗激化、ウクライナによるロシアとの停戦交渉合意等の動きがあり、市場は波乱含みとみられます。
日本時間2/28(月)8時半現在、米国株先物市場は売り先行となっており、日経平均株価は「NYダウ834.92ドル高」の勢いを、あまり享受できない可能性もあります。また、国際決済網からのロシア締め出しで、原油・商品市場の混乱が激しくなり、投資家としては引き続き、インフレ進行を意識した投資戦略で対応する必要もありそうです。加えて、ロシアとウクライナ・西側諸国との戦いは、サイバー上でも繰り広げられつつあり、株式市場で引き続き「サイバーセキュリティ」の問題がクローズアップされる展開も想定されます。
その他、ウクライナ情勢の変化がマーケット全般に与える広範な影響に、十分な注意が必要と思われます。
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