18年12月から19年1月にかけての株式市場は、急ピッチの下落をみせた後に上値の重い展開が続いている。12月相場では、19日に新規上場したソフトバンク<9434>が公開価格1,500円を下回る1,463円の初値をつけた後、値を下げたことが地合いを大きく悪化させる一因となったほか、米政府機関閉鎖への警戒感の高まりを受けた米国株急落や円高進行によって、日経平均は節目の20,000円を割り込んで急落する場面もみられた。
年末にかけては、米国株に対する買い戻しの動きが日本株に対しても波及したことで、28日の大納会は、国内6連休を控えて売りが優勢であったものの20,000円はキープした。しかし、1月相場では、年明け2日の引け後に米アップルが中国市場での需要後退を理由に売上高予想の下方修正を発表し時間外取引で急落したことを受けて、円へのリスク回避目的の買いが進み、海外市場において対ドルで一時104円台後半への大幅な円高が進行する場面があった。
世界的な景気後退への警戒感が強まるなか、米政権運営を巡る先行き不透明感も相まって、4日の大発会では再び20,000円割れとなった。その後は、米中貿易摩擦を巡る高官協議による進展期待と米利上げペース減速への期待を背景に、NYダウが10日にかけて5営業日続伸し約1カ月ぶりに24,000ドル台を回復したことから日経平均もリバウンドをみせた。
15日には警戒されていた英議会下院で欧州連合(EU)離脱案否決が明らかとなったが、これに対する日本株への影響は限定的であった。一方で、米政府機関の閉鎖問題は継続しているほか、日本企業の業績拡大鈍化などは、依然として市場の懸念材料として根強く残っている。これにより、10月2日の昨年来高値をつけた水準からの価格帯売買高における商いの集中しているレンジである22,000円処までの戻りには時間を要しているようだ。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2 直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日本銀行の金融政策について
今回の日銀金融政策決定会合:金融政策は現状維持の公算
今月22−23日に開かれる金融政策決定会合では、短期の政策金利を−0.1%、長期金利である10年物国債金利を0%程度に誘導する金融緩和策(長短金利操作)の現状維持が賛成多数で決定される見込み。12月の金融政策決定会合では、「世界経済の先行きについては、不透明感が高まりつつある」などの意見が出ていた。世界経済の成長減速への懸念が広がっているものの、きわめて緩和的な金融環境や政府支出による景気の下支えなどによって景気の拡大は続く可能性は残されている。日本銀行は現行の金融政策を当面維持するとみられる。
FRBの金融政策について
今回のFOMC会合:利上げ継続の是非について議論へ
米連邦準備制度理事会(FRB)は1月29−30日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策を決定する。政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の2.25%−2.50%に据え置きとなる見込み。今月9日に公表されたFOMC議事要旨(12月18−19日開催分)によると、多くのメンバーは「政策のさらなる引き締めに辛抱強くなれる余地がある」との見解を示していた。バランスシート縮小計画についても、米連邦準備制度理事会(FRB)の保有資産を予定より高水準に維持する案などについて議論されていた。今月開催のFOMC会合では利上げ継続の是非やバランスシート縮小計画の再点検などについて議論される可能性が高いと予想される。
欧州中央銀行の金融政策について
今回のECB理事会:主要政策金利の据え置きを全会一致で決定へ
欧州中央銀行(ECB)は今月24日に今年最初の理事会を開催する。主要政策金利の据え置きが全会一致で決定される見込み。ECBのドラギ総裁は昨年12月開催の理事会終了後の会見で、「域内の物価圧力をさらに高めるとともに中期的な総合インフレ動向を後押しするため、大幅な金融刺激が依然必要となる」との見方を伝えている。金利引き上げ時期については、今回も2019年秋以降との見通しが示される見通し。
2019年1−6月における金融政策・政策金利の決定スケジュール
日本銀行:金融政策決定会合
- 1月22−23日、3月14−15日、4月24−25日、6月19−20日
米連邦準備制度理事会(FRB):FOMC会合
- 1月29−30日、3月19−20日、4月30−5月1日、6月18−19日
欧州中央銀行(ECB):ECB理事会
- 1月24日、3月7日、4月10日、6月6日
図3 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4 直近1年のユーロ円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
通商問題などを巡る米中対立について
米国と中国の高官(次官級)が直接交渉する協議が先週北京で開かれたが、当初7−8日の予定を1日延長して9日まで行われた。「公正で互恵的で均衡の取れた」両国の貿易関係を達成する方策について、技術移転の強要や知的財産保護、非関税障壁、商業目的で企業秘密を盗むサイバー攻撃などに関して議論されたが、これらの問題について両国の見解は大きく異なっていたようだ。
問題解決についてはさらなる協議に委ねられることになった。米国の貿易赤字削減については、中国側が1兆2,000億ドルの追加輸入を提案しており、一定の成果を得ることができたが、3月1日の交渉期限までに、「公正で互恵的で均衡の取れた」両国の貿易関係を達成することができるか、予断を許さない状況が続くとみられる。
ブレグジットの現状と今後のスケジュールについて
英国議会下院は15日、メイ首相のEU離脱協定案を反対432、賛成202で否決した。議会での否決は大方の予想通り。野党・労働党のコービン党首は採決結果を受け、メイ政権の不信任案を提出。採決はロンドン時間16日午後7時に行われる予定だが、市場関係者の多くは、不信任案は否決されると予想している。EU離脱を巡る英国政府の今後の対応については、以下のシナリオ(スケジュール)が予想される。
1月21日
メイ首相は今月21日までに、英国の次の計画を提示する見込み。首相はEUから何らかの了解を新たに得ることによって、離脱協定案について議会採決を行う可能性がある。EUとの離脱交渉期限の延長要請を実行するためには、明確なプランを事前に用意する必要がある。ドイツ政府報道官は15日、メルケル独首相が英国のEU離脱でメイ英首相に譲歩したとの一部報道を否定しており、EU側から何らかの了解や言質を得ることは難しいとみられる。
1月末頃
内閣に対する不信任決議が否決されなかった場合、野党・労働党は14日以内に過半数の支持を得て政権を樹立できることを示す必要がある。この場合、総選挙を行う必要はない。ただし、労働党が新政権を樹立できない場合は総選挙が公布される。
3月29日
メイ英首相は2017年3月29日に英国が欧州連合(EU)から離脱するため、リスボン条約第50条を発動させており、離脱の条件に合意するために英国とEUには2年間の期間が与えられている。英国の離脱時期(期限)は2019年3月29日(金曜日)となる。
中長期的なスケジュール
EUのトゥスク大統領は「EUにとどまることが英国に取り唯一の前向きな解決策」との考えを示しており、EU離脱の是非を問う国民投票を再び実施するという選択肢は残されている。
提供:フィスコ社