足元の日経平均は10月2日に年初来高値24,448.07円(取引時間中)を付けてから10月23日では22,000円(同)を割り込むなど急ピッチの下落をみせている。10月5日に発表された9月分米国雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが予想を下回り、賃金上昇率はやや鈍化、失業率は1969年以来の水準に低下した。米金融当局が年内4回目の利上げを実施し、2019年にさらに数回引き上げるとの見通しは、今回の失業率の一段の低下で強まったとされ、米10年債利回りが上昇したことでハイテク株中心に米国株の圧迫要因になった。
これにより、日本株やアジア市場も全般売り込まれる展開となっており、売りが売りを呼ぶ展開が続いた。10月19日に中国・国家統計局が発表した第3四半期GDP成長率は、前期比年率プラス6.5%(市場予想はプラス6.6%)、9月の鉱工業生産指数は前年比プラス5.8%(同プラス6.0%)と深刻なダメージを示す数字ではなかったものの、第4四半期(10-12月)以降に米中貿易摩擦の影響が反映されるのではないかといった中国経済減速に対する警戒感が市場に広がってきている。加えて、サウジアラビアによる記者殺害問題のほか、イタリア債務問題に対する懸念などの長期化も背景に、積極的な押し目買いも入れにくく、戻りも鈍い状況となっている。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日銀金融政策決定会合について
今回の日銀金融政策決定会合:政策金利は据え置きの予想
日本銀行は10月30−31日開催の金融政策決定会合で、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続することを賛成多数で決定する見込み。政策金利のフォワードガイダンス導入は、2%の物価目標達成に寄与することが引き続き期待されており、2019年も「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を維持していくとみられる。
政策金利のフォワードガイダンスについては、「当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持する」としたフォワードガイダンス(政策金利の指針)や長期国債買い入れのめどである年間約80兆円も維持するとみられる。指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J−REIT)の買い入れ方針も変更なしと予想される。
米FOMC会合について
今回のFOMC会合:政策金利は据え置きの予想
米連邦準備制度理事会(FRB)は11月7−8日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策を決定する。政策金利(FFレートの誘導目標水準)は現行の2.00%−2.25%に据え置きとなる見込み。9月26日に公表した最新の経済見通しでは、2018年の実質国内総生産(GDP)の伸びは3.1%になるとの予想が示されたものの、2019年は2.5%、2020年は2.0%、2021年は1.8%に鈍化すると予想されている。インフレ率は、今後数年間は2%近辺で推移すると予想されている。
前回のFOMC声明には「緩和的」との文言が含まれていなかったが、米FRBは中立金利に近付いているとの認識を有しているとみられる。中立的な金利水準については3%程度との見方が多いようだが、労働市場は非常にひっ迫していることや新興国の通貨安は一服しつつあることから、FRBは遅くとも2019年末までに政策金利を3%まで引き上げることを検討しているとみられる。12月のFOMCで0.25ポイントの追加利上げが決定される見込み。
欧州中央銀行(ECB)金融政策について
今回のECB理事会:金融政策は現状維持の予想
欧州中央銀行(ECB)は今週25日に開催される理事会で金融政策を決定する。各種政策金利は今回も据え置きとなる見込み。資産購入プログラムについては10月から月額150億ユーロに減額されており、経済情勢や物価動向に大きな変化がない場合、年末時点で資産購入プログラムは終了する予定となっている。
ECBの各種政策金利が現状維持と予想される主な理由については、1)インフレ基調はやや上向きであり、インフレ見通しを巡る不透明性は後退しつつある、2)米国の通商政策が世界経済に与える影響を引き続き慎重に見極める必要がある、3)欧州委員会はイタリアの予算案を期限までに却下する可能性がある、などが挙げられている。
金融政策・政策金利の決定スケジュール
日本銀行
- 10月30-31日:日本銀行金融政策決定会合
- 12月19-20日:日本銀行金融政策決定会合
米連邦準備制度理事会(FRB)
- 11月7-8日:連邦公開市場委員会(FOMC)会合
- 12月18-19日:連邦公開市場委員会(FOMC)会合
欧州中央銀行(ECB)
- 10月25日:ECB理事会(総裁の記者会見予定)
- 12月13日:ECB理事会(総裁の記者会見予定)
図2 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3 直近1年のユーロ円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
移民などの国内問題が選挙争点に 上院は共和党優位、下院は民主党優勢
中間選挙の争点など
11月6日に行われる米国の中間選挙(mid-term elections)は、結果次第でトランプ政権の今後が大きく変わる可能性がある。アメリカでは失業率が3%台に低下し、直近の経済成長率(今年4−6月期)は前期比年率+4.2%の高い伸びを記録している。9月にロイター通信などが世論調査では、トランプ大統領の経済政策を「支持する」と応えた人は50%で「支持しない」の42%を上回っていた。
トランプ政権の貿易政策に対する批判的な意見は少なくないものの、経済問題が中間選挙の争点になるとの見方は少なく、有権者の関心は移民問題や社会保障・格差などの国内問題に向けられているようだ。
最近行われたいくつかの世論調査結果に基づいて、専門家や市場関係者の大半は、共和党は上院で多数派を維持すると予想しているが、下院では民主党が議席の過半数を獲得する可能性が高いと指摘している。
中間選挙に関する主な数値
- 218:下院での過半数議席
- 共和党199対民主党205(優勢+やや優勢とみられる下院での議席数)※
- 44.2%:大統領支持率※
- 35/100:上院での改選対象
- ※議席予想、大統領の支持率は「RealClearPolitics」 (10/21現在)を参照
中間選挙後の市場展望:3つのシナリオ
シナリオ1:民主党による下院支配
- 法案可決数の減少、立法活動の減速、民主党分裂リスクで株式市場の先高観は後退も
- 株高一服、米国金利の先高観後退でドル安の可能性
シナリオ2:現状維持(共和党による両院支配)
- 恒久減税、キャピタルゲイン税へのインフレ調整導入で株高期待が高まる可能性
- 過度の円安はないとしても、株高とある程度の円安が進行する可能性
シナリオ3:民主党による両院支配
- 減税や規制緩和措置の見直し、家族や低所得者向けの税控除導入の可能性
- 減税見直しで株式は一時的な調整も、ドル高進行に批判的な意見が増える可能性
図4 直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日経平均予想EPSの推移とPER14倍、15倍、16倍時の日経平均株価と今後の予想
足元で長期金利上昇に対する不安感が根強い米国にて、11月6日に行われる中間選挙は結果によっては日本株にとっても波乱要因になりうるだろう。
そんななか、前述した長期化するサウジアラビア問題やイタリア財務懸念など、積極的な売買を手がけにくい外部環境となっており、引き続きヘッジファンドなどによる短期筋の先物売りに振らされるボラタイルな動きは継続しやすいだろう。目先は本格化する国内企業決算が注目材料となろうが、半導体需要減速や中国市場拡大一服など直近の受注動向から、10月10日に2019年2月期予想を下方修正した安川電機<6506>などの決算動向を受け、4-6月期決算を通過して大きく高まっていた国内企業決算に対する期待感は後退しつつあるとみられる。
とはいえ、日銀が10月1日に発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)では、企業の今期想定為替レートは107円台半ばと112円台で推移する現行の為替水準は、依然として約5円ほど円安方向に乖離している。期初ほどの業績上振れ期待はしにくいものの、現在約1,730円程度で推移する日経平均のEPS(1株あたり利益)水準は、切り上がる可能性は十分に期待されよう。仮に7-9月期決算通過後から今期末(19年3月末)にかけての日経平均EPSが1,800円台乗せとなるシナリオをメインとした場合、PER(株価収益率)14倍での日経平均は25,200円、PER15倍での27,000円、PER16倍では28,800円となる。短期的には前述した外部環境からセンチメントは好転しにくいものの、現行PER12倍台で推移する日経平均のバリュエーション面を踏まえると、中長期的な業績改善を見込んだ日本株買いはPER15倍台、日経平均株価27,000円までは十分に強まる可能性はありそうだ。
提供:フィスコ社