日米株価動向 |
米国株式市場
米国市場では、NYダウが3月以来約2ヵ月ぶりに節目の25,000ドル台を回復する展開となっている。貿易摩擦を巡る米中協議が中国の対米輸入拡大で妥結したことで、いったん投資家心理が改善したほか、足元の原油相場の上昇も好感される格好に。米FOMC(連邦公開市場委員会)議事録では、大半の当局者が堅調な経済見通しを受けて、近く利上げが必要となるとの認識を示す一方で、インフレ率が目標から若干上振れたとしても、米経済に影響を与えないとの考えから利上げを急がない姿勢も確認された。
一方で、ポンぺオ米国務長官によるイランへの経済制裁の発表や、貿易摩擦を巡る米中関係への先行き不安や米朝首脳会談実現への懐疑的な見方が浮上していることなどから、本格的なセンチメント改善には至ってはいない。「5月に売って立ち去れ(Sell in May and go away)」という格言通り、節税目的の個人退職年金の流入が一巡したことで、需給面の好材料が無くなっていく時期でもあることが手がけづらくさせる一因となっている。早期での利上げが必要となるといった市場コンセンサスだが、5月分の雇用統計の発表内容を受けた6月以降の利上げ見通しの変化にも注目が集まろう。
図1:直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
東京株式市場
一方の東京市場では、5月第4週の日経平均が週間ベースで9週ぶりの反落に転じた。これまでの上昇を支えてきた外部環境の急速な変化が主な背景にある。なかでも、米朝首脳会談の行方や米国の自動車輸入関税引き上げ問題、為替の円高進行などによって、リスク回避の売りが出やすい外部環境となっている。テクニカル的にも日経平均が2月2日以来となる23,000円台に乗せたことで戻り一巡、達成感が出た格好になっている。一部市場関係者によると、「23,000円はファンド筋が持つポジションの分水嶺だった」との指摘もあることから、この水準が戻りの壁として意識されてくるだろう。また、19年3月期の企業業績は、円安一服などを背景に足踏みが予想されており、前期にみられた米国の減税による恩恵の反動や原材料高なども懸念材料だ。
しかし、主要企業の今期想定為替レートの平均は1ドル=106円台と伝わっており、現行の為替水準を考慮すると保守的な印象である。これを踏まえると、企業業績は期中に上振れていく可能性も意識されてこよう。総じて、日本株に対して積極的に売買を手がける動きは限られているものの、企業業績が底堅い限りは大きく売り込まれる展開にもなりにくいだろう。目先は、25日移動平均線水準であり、直近の価格帯別売買高でも商いの積み上がりの確認できる22,500円を挟んでのもみ合いとなる可能性が意識されよう。
図2:直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
5月米雇用統計予想と今後の見通し |
<今回の予想(5月雇用統計)> (日本時間6月1日午後9時30分発表予定)
・非農業部門雇用者数:前月比+19.0万人程度
・失業率:3.9%
・平均時給:前年比+2.7%
5月の非農業部門雇用者数は、前月比+19.0万人程度、失業率は4月と同じ3.9%と予想されている。失業率は労働参加率が伸び悩んでいることから、4月に続いて4%を下回る可能性が高いと予想される。平均時給の伸び率は4月実績を上回る可能性があるものの、インフレ加速につながる3%超の上昇率とは差があるため、平均時給の伸びが市場予想と一致した場合、ドルは伸び悩む可能性がある。
【5月雇用統計を受けた市場反応について】
《平均時給の伸び率が予想を上回った場合、年4回の利上げ観測が再浮上か》
5月の平均時給の伸び率が市場予想を上回った場合、年内に合計4回の利上げが実施されるとの思惑が再び広がり、ドル買いが活発化するとみられる。非農業部門雇用者増加数が市場予想を下回った場合でも年初来からの雇用者増加数は2017年実績(1月-5月で+90.8万人)を上回る可能性があるため、ドル売り材料にはならないと予想される。
《平均時給の伸び率が予想を下回った場合、米長期金利低下・ドル安の相場展開に》
5月の平均時給が予想を下回った場合、米国株式市場にとっては好材料となるが、米長期金利はやや低下し、主要通貨に対してドル売りが強まると予想される。6月の追加利上げは織り込み済みだが、年4回の利上げ観測は大きく後退する可能性が高い。
図3:直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
北朝鮮問題:米朝首脳会談は予定通り6月12日開催で再調整 |
トランプ米大統領は5月24日に6月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談を中止すると発表した。会談中止の理由について、トランプ大統領は、北朝鮮の強烈な怒りとあからさまな敵対心を挙げたが、一部の識者は米国が首脳会談の中止を発表した理由について、米国と北朝鮮が接近しすぎるのを警戒した中国が、中朝首脳会談を複数回にわたり開催したこと、また北朝鮮への制裁で中国が協力姿勢を崩していることなど、「中国による介入」を挙げている。
しかしながら、翌25日にトランプ米大統領は北朝鮮との対話を再開したことを明らかにした。トランプ大統領は26日、米ホワイトハウスで記者団に対し、一度中止を発表した米朝首脳会談について、「とても順調に進んでいることに言及したい」と述べ、「我々は6月12日のシンガポールでの開催を見据えている。その予定は変えていない」と語り、当初の予定通りに開催をめざす方針を明らかにした。トランプ氏は韓国の文在寅大統領と、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による2回目の南北首脳会談について、「対話は、とてもうまくいった」と評価した。
アジア地域における安全保障問題の専門家や識者の間では、史上初となる米朝首脳会談の最大の目的は、「北朝鮮の非核化」との見方が多い。北朝鮮側が考える首脳会談開催の必須条件としては「米国が北朝鮮の現体制を保証するとの意思を明確に表明すること」を挙げている。米国側は体制保証の条件として、リビア方式での非核化を念頭に交渉しており、この点で北朝鮮との意見の隔たりが大きいと伝えられている。
6月12日の米朝首脳会談でどのような着地になるか、北朝鮮はリビア方式での非核化をのめるのか、また中国がどのように介入してくるのか、全世界の注目が集まっているがその結果次第では株式市場にも大きなインパクトを与える可能があり、6月12日の米朝首脳会談開催まで事前情報も含め、注意を払う必要がある。
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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