NYダウ、日経平均とも4月はリバウンド期待? |
NYダウは波乱含みも4月の需給は良好
米中貿易戦争が警戒される中、中国政府が報復措置として、米国からの自動車や航空機などの輸入品に総額約500億ドル相当の追加関税を課す方針を発表するなど、対抗姿勢を鮮明にしている。一方で両国が貿易摩擦の解決に向けた交渉を水面下で続けているほか、中朝首脳会談の実現で地政学リスクも低下しており、政治面からの懸念は和らいでいるとの声も聞かれている。また、3月半ば以降ハイテクの大型株、いわゆるFANG銘柄の株価調整が続いてきたが、これまでの急速な上昇後のむしろ健全かつ必要な調整過程との見方が支配的だ。季節的に需給が良好であることや、決算シーズンを控えていることを考えると、足元で乱高下が続いているNYダウについて、更に大きな調整が必要になるとは考え難いだろう。 米企業分析のファクトセット社の調査によれば、1-3月期のS&P500構成銘柄の利益は、昨年末時点で前年同期比11.4%の増加が予想されていたものの、3月末時点では同比17.3%の増益予想と、11年1-3月期以来の高い利益成長(前年同期比)となる見通しである。4月は米国の確定申告に関連して需給要因も良好なことから、次第に落ち着きをみせてくることが予想される。減税による恩恵に加えて、原油相場の上昇によるエネルギーセクター、金利上昇による金融セクターへの好影響が予想される。 とは言え、テクニカル面でみると、NYダウは25日線に上値を抑えられる一方で、200日線が支持線として意識されている。調整トレンドではあるが、煮詰まり感が台頭してきている状況。週足では26週線に上値を抑えられているが、52週線が支持線として意識されやすい。200日線を割り込んだとしても、52週線が強い支持線となる可能性があり、同水準に向けた押し目待ちの状況であろう。
図1:直近1年のNYダウチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
海外勢の需給変化に注目、25日線突破でリバウンド期待
日経平均については、調整トレンドが続いているが、こちらも52週線での踏ん張りがみられている。短期トレンドでは200日線や25日線での攻防となっており、しばらくは見極めが必要なところである。米中貿易摩擦の行方のほか、国内政治リスクが重しとなりそうである。また、海外勢のフローは限られているほか、金融セクターの弱さを見る限りでは調整トレンドの中でのリバウンドといったところであるが、名実ともに新年度相場入りとなり、今後の需給変化が注目される。米ハイテク株の不安定な値動きが収まるようであれば、日経平均は25日線の抵抗を明確にクリアし、リバウンドが試されることになりそうだ。地政学リスクが一先ず和らいでいることも、リスク選好に向かわせやすいだろう。もっとも、金融セクターのリバウンドが本格化してこないと、自律反発の域は脱せない可能性はある。 海外投資家の売買動向については、3月3週(19-23日)は現物株と先物合計で2599億円の売り越し(前週は3435億円の売り越し)だった。海外投資家の売り越しはこれで11週連続となるが、2月4週9413億円から減少傾向にあり、売り圧力は和らぐ格好となっている。個人は5303億円の買い越し(同435億円の売り越し)となり、買い越しに転じている。4月下旬から本格化する3月本決算発表を控えて、海外勢の買い戻す動きが意識されてくる。
図2:直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
3月米雇用統計予想と今後の見通しについて |
<今回の予想(3月雇用統計)> (日本時間4月6日午後9時30分発表予定)
・非農業部門雇用者数:前月比+19.0万人程度
・失業率:4.0%
・平均時給:前年比+2.7%
非農業部門雇用者数は前月比+19万人程度と予想されている。失業率は0.1ポイント低下する可能性がある。また、平均時給の伸び率は2月実績をやや上回ると予想されており、雇用情勢の改善が続いていることが再確認されそうだ。
<前回のレビュー(2月雇用統計)> (日本時間3月9日午後10時30分発表)
・非農業部門雇用者数:前月比+31.3万人 (市場予想:+20.5万人程度)
・失業率:4.1%(前月比横ばい) (市場予想:4.0%)
・平均時給:前年比+2.6% (市場予想:+2.8%)
3月9日に発表された2月雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比+31.3万人で市場予想の+20.5万人程度を大幅に上回った。失業率は前月と同じ4.1%。平均時給は前年比+2.6%で伸び率は市場予想の同比+2.8%を下回った。
2月の非農業部門雇用者数は市場予想を大幅に上回ったものの、平均時給の伸び率は前年比+2.6%にとどまったことから、ドル・円は、107円05銭まで上昇後、106円68銭まで反落し、106円79銭で取引を終えている。米国株式は上昇。ダウ工業株30種平均は440.53ドル高の25335.74で取引終了。非農業部門雇用者数は大幅に増加したものの、平均時給の伸びは予想を下回っており、利上げペースは加速しないとの見方が株高につながったようだ。
【3月雇用統計を受けた市場反応について】
《平均時給の伸び率が予想を上回った場合、6月利上げの可能性高まる》
3月の平均時給の伸び率が市場予想を上回った場合、市場ベースのインフレ見通し引き上げの要因となり、6月の追加利上げ観測が強まる可能性がある。非農業部門雇用者増加数が市場予想を下回った場合でも2月、3月の2カ月で40万人を超える雇用増となった場合はドル買い材料になる。株式市場もおおむね好反応を見せると予想される。
《平均時給が予想を下回った場合、株高・ドル安の相場展開に》
3月の平均時給が予想を下回った場合、ドル売りがやや強まると予想される。年内3回の利上げ見通しが大きく後退する可能性は低いと思われるが、米株式市場ではインフレ加速に対する警戒感が低下し、ダウ工業株30種平均は前日比+1%超の上昇となる可能性があります。株高・ドル安の相場展開が予想される。
図3:直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
懸念材料の米国の対中通商要求、今後の見通し |
トランプ米政権は3月22日、中国による知的財産権の侵害に対して通商法301条に基づき、最大で1300品目、600億ドル相当の輸入に25%の関税賦課を適用することを決定。また、翌日23日には米国の安全保障を理由に、通商拡大法232条に基づき、鉄鋼に25%、アルミに10%の高関税を課す措置を発動した。同関税の対象国には中国、日本が含まれる。
米国の鉄鋼等への追加関税措置発表を受け、中国政府は3月23日、対抗措置として、果物、ワイン等120品目に15%、豚肉やアルミスクラップ等8品目に25%の関税を上乗せする案を公表し、今月2日にはトランプ米政権による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限に対抗し、米国製品128品目に最大25%の関税を上乗せする措置を発動した。報道によると、中国の商務省は2日に談話を発表し、「米国の措置は世界貿易機関(WTO)の安全例外条項を乱用した」と批判し、早急に輸入制限を撤回するよう米国に求めている。
米国政府は知的財産権の侵害を巡る制裁関税の対象リストを今月上旬頃に発表し、6月までに制裁関税を導入するものとみられている。通商・貿易分野における米中の対立がすみやかに解消されることは期待できないとの見方が多い。
ただ、国際通貨基金(IMF)によると、米国、中国の経済規模を考慮した場合、これまでに公表されている米国、中国の制裁・報復措置が全て発動されたとしても、新たに発生する関税額は最大で200億ドル程度にとどまる。経済規模で世界1位と2位の大国間で生じている貿易摩擦の影響を軽視することはできないものの、関税額の上乗せが両国の経済活動に重大な影響を及ぼすとは思えない。
中国側では、米国産の果物、ワイン、豚肉などの輸入が減少してもブラジル、NZ、ロシアなど他国からの輸入量を増やすことで十分対応できるとみられている。事態の進展を楽観視すべきではないが、米中間で生じている貿易摩擦が世界的な貿易戦争へとエスカレートする可能性は現時点では低いと思われる。米中双方が妥協できるレベルで制裁措置や報復措置をある程度まで緩和する可能性は残されていると思われる。
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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