「テンバガー(10倍株)」は投資家のバイブル「ピーター・リンチの株で勝つ」という本に出てくる言葉です。この本は1977から90年にかけて米国大手運用会社のファンドマネージャーとして活躍したピーター・リンチによって書かれました。彼が運用を任されていた13年間でNYダウは約3倍に上昇しましたが、彼のファンドはなんと約28倍に大化けしたのです。そのため当時彼は、「世界ナンバー1のファンドマネージャー」とか「伝説のファンドマネージャー」と呼ばれましたが、その現場で培った投資のノウハウをまとめたのがこの本です。彼は「失敗してもいいからテンバガーを見つけよう」と提唱していますが、その理由は10銘柄中9銘柄が値下がりしても、1銘柄が10倍になれば他の損失を埋められるからとしています。
テンバガーがどこにあるのかから始めると、彼は明確に「小型の成長株を買いなさい」と言っていますので、中小型成長株から探すのが良いかと思います。そしてそのテンバガーを見つけるための最初のヒントは身近にあり、買い物をする場所、働いている場所、住んでいる場所で、消費者としての情報、自分の働く業界の変化などを意識的に利用すれば、誰もがテンバガーを見つけられると伝えています。
ところでテンバガーの意味ですが、米国では満塁ホームランをフォーバガーと呼ぶところからきており、テンバガーは2本の満塁ホームランにさらに2点を加えるようなもので、いかにスゴいかという意味も含んでいるようです。
では身近な気づきからテンバガーを見つけるにはどのような行動をとれば良いかですが、まずは変化に気づくことが大事で、次にその変化が起きているところに上場会社が絡んでいないかを会社四季報やネットで調べることです。
例えばステーキの立ち食いスタイルで圧倒的な安さを実現した「いきなり!ステーキ」は街中でも繁盛していたのを見かけましたし、テレビでも何度も話題に取り上げられていました。そこで会社を調べれば、すぐにペッパーフードサービス(3053)が運営していることがわかったわけですが、実際同社は1年ほどでテンバガーを達成してしまいました。
続いて会社を見つけたとして、その企業が成長株なのかどうかを判断しなければなりません。そもそも「成長」とは何かですが、成長とは売上高の伸び、つまり「増収率」で、私は増収率が継続して年率20%で伸びている企業はかなりの成長株だと考えています。その増収率は会社四季報では【業績】欄の「売上高」の数字を確認することになりますが、残念ながら会社四季報には増収率の数字が掲載されていないので自分で計算することになります。
ただし増収率が平均して20%を超えているかどうかの簡単な見分け方があり、それは売上高が4年で2倍以上になっているかを見るもので、それは4年で2倍は増収率が平均20%になるからです。
以下は純国産こだわりの独自ブランド「UNITED TOKYO」を運営するTOKYO BASE(3415)の四季報【業績】欄ですが、来期2019年2月予想の売上高は163億円と4年前の2015年2月期の44.7億円から3.6倍になっています。余裕で2倍を超えていますので同社は成長企業どころか急成長企業と判断できます。
【業績】 | 売上高 | 営業利益 |
---|---|---|
単15.2 | 4,470 | 628 |
単16.2 | 6,089 | 660 |
単17.2 | 9,356 | 1,290 |
単18.2予 | 12,500 | 1,720 |
単19.2予 | 16,300 | 2,300 |
最後に、テンバガーに近づくために、もう一つチェックしておくポイントがあり、それが稼ぐ力の「営業利益率」です。営業利益率は式で表すと「営業利益÷売上高×100(%)」となりますが、この数字が10%以上のものは稼ぐ力が強く優良企業といえます。
これは増収率の計算に比べると簡単で、売上高の数字からゼロを一つ取った数字を営業利益が上回っていれば、その企業の営業利益率は10%以上です。TOKYO BASEを見ると今期2018年2月期予想の売上高は「12,500(百万円)」ですのでゼロを一つ取ると「1,250(百万円)」となりますが、営業利益は1,720(百万円)と1,250(百万円)を大きく超えていますので営業利益率は10%以上あることがわかります。同社はこの切り口から見ても稼ぐ力がかなり強いと判断できます。
このように会社四季報もちょっと見方を変えればお宝の宝庫になりますので、皆さまも是非ご自身で実践してみてください。
- ※本文中でご紹介する個別銘柄について、その売買を勧誘または推奨するものではありません。また、株価の推移や業績予想値等はあくまで過去の一定期間の実績、および将来の予測値等であって、将来の運用成果等を保証したものではありません。