指数は膠着相場を下放れる格好に |
7月は歴史的な膠着相場となった日本株市場だったが、北朝鮮と米国との関係悪化に伴う地政学リスクが再燃し、日経平均、TOPIXは下への動きを強めている。2ヵ月に及ぶレンジ相場を下放れたことから225先物は22日に19,330円まで下落。ナイト・セッションでは19,250円まで下がる場面がみられた。
一方、東証一部の売買代金は2兆円を割り込むなど商いは閑散のまま。短期的な投資を手掛ける一部海外投資家による売買が中心となっていることから、さほど売り圧力は強まっていない。ボリンジャーバンドでは、拡大する-2σに沿った「バンド・ブレイク(ウォーク)」が示現したものの、下げは限定的となった。お盆シーズンも影響しているようだが、海外投資家が積極的な売買を行っていないことが背景にあると考える。海外投資家は8月末のジャクソンホール会合まで静観の姿勢を維持するのではないだろうか。
7月の日経平均の月間値幅はわずか344円と、1986年1月に記録した260円以来の膠着相場となった。日米ともに政治不安が高まったことで積極的な売買は手控えられ、為替市場でも円高・ドル安が進行し大型株の上値は重くなった。一方、日銀による上場投資信託(ETF)買入れ実施を受けて下値も限定的。堅調な企業業績が相次いでいるにも関わらず、買いは波及せず手掛けにくい地合いとなった。
図1:直近1年の日経平均株価(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
ジャクソンホール会合ではドラギECB総裁が3年ぶりに講演を実施 |
そのようななか、24日から26日にかけて、米ワイオミング州ジャクソンホールで、カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)が開催される。この会合には、イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長のほか、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が3年ぶりに出席し講演を行う。ユーロ域内経済の好調を背景に、ドラギECB総裁は、金融刺激策への依存度が減ったことを示唆するのではないかと市場では見られている。ECBは秋の定例理事会で、資産購入規模を現行の各月600億ユーロ規模から縮小する計画(テーパリング)を発表すると見込まれており、来年1月から規模を一月100億ユーロずつ削減していくとの観測。
ECB理事会の2週間前に開催されるジャクソンホールでの講演は、この方針を示唆する絶好の機会と思われる。2014年の会合では、ドラギ総裁が資産購入プログラムの導入を示唆した過去を考慮すると、同じジャクソンホールの会合でテーパリングを示唆するのが理にかなっている。かつてバーナンキ前FRB議長も量的緩和(QE)第2弾を示唆する講演をジャクソンホールで行ったことから、ジャクソンホール会合は注目のイベントとなろう。
図2:直近1年のユーロ円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
各国金融政策変更を受け、日本株はどう動くか |
6月以降、欧州ではテーパリングの思惑が高まっている一方、北米(カナダ、アメリカ)では利上げを実施。オセアニア地域(オーストラリア、ニュージーランド)では利下げ打ち止め観測が強まるなど、主要国の金融政策は大きく変化している。変わらないのは「金融緩和の現状維持」を押し進める日本ぐらいか。日銀内でETF買入に対する議論が起こっているとの声もあるが、現状、出口戦略は議場に上がらないだろう。一方、イエレンFRB議長も出席するが、こちらは年内再利上げの有無を見極める展開となろう。市場では年内利上げの見送りが織り込まれており、為替市場ではドル買いが入りにくい。となれば市場の関心はユーロに向かおう。ユーロ・円、ユーロ・ドルともに上値が重くなっているが、ジャクソンホール会合でのドラギECB総裁のコメントをきっかけに、ユーロ買いが再開する可能性はある。
各国中央銀行の方向性に大きな変化が出ていることから、グローバル・マクロ戦略をとるヘッジファンドなどは投資資金の組み入れ変更を検討していることだろう。7月以降の日本株の膠着相場はこうしたアセットアロケーションの変更(投資資金の資産配分)が絡んでいるのではないかと考える。アセットアロケーションがどのように変更されるのか不明だが、足元の好調な企業業績やGDPなど経済指標を考慮すると日本株に投資資金が流入するのではないだろうか。国内政治に対する懸念は払拭されていないが、需給面をきっかけとした8月末以降の日本株上昇の展開に期待したい。
一方、日本株上昇を阻害する要因として意識しておきたい材料に、アジア地政学リスクがある。こちらのリスクを解消するのは時間がかかることだろう。市場はミサイル発射に慣れた感はあるが、アジア地政学リスクが払拭されていないことを楽観視してはいけない。ジャクソンホール会合後、海外投資家が日本株買いに動いたと仮定しても、こうしたリスクがネックになって上昇トレンド形成という強い流れは難しいと考える。15年につけたアベノミクス相場の高値20,900円水準が上値メドとなろう。
図3:直近1年の日経平均株価、ユーロ円の相対チャート(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近1年の日経平均株価、ドル円の相対チャート(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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