先物市場では、225先物が心理的な節目である18,500円を割り込むなどさえない推移が続いている。
北朝鮮及びシリアの地政学リスクが高まっていることが、年初来安値更新の背景にある。シリアに関しては、米政権側からは「一度だけ」と伝わっているが、トランプ政権発足で近づきつつあった米国とロシア間の関係悪化が警戒されている。
東アジアでは、北朝鮮の挑発行動のエスカレートで米軍が軍事展開を活発化させており、緊張感が日に日に高まっている。今月のマンスリーレポートは、足元話題性が急速に高まっている地政学リスクと為替について説明したい。
また、地政学リスクの高まりから不測の事態に備えるため、米国の金融政策も利上げペースを遅らせる等、政策変更の可能性がある。そうなった場合、ドル・円がどこまで円高になるのか、日経平均株価への影響はどうなるのかについても説明したい。
ドル・円はどこまで円高になるのか? |
11日の欧米市場では、ドル・円は昨年11月18日以来となる心理的な節目である110円を割り込んだ。
リスク回避の流れが強まっており、米国債券や金が買われる地合いとなっている。主要通貨に対して日本円は全面高となったが、市場関係者の間では「リスク選好的な円売りポジションを解消する動きによるもの」との声が聞かれる。つまり、ポジションの巻き戻しに伴う円高推移との見方が強い様子。
状況次第では、米国は北朝鮮に対する武力行使を辞さないとの指摘もあり、軍事的衝突の勃発など北東アジアにおける地政学的リスクがさらに高まった場合、「隣国である日本にも影響が及ぶことを考えるとドル買い・円売りが拡大し、ドルは主要通貨に対して全面高となる可能性もある」との声も聞かれる。地政学リスクの高まりでリスク回避の円買いが進むとの見方が市場コンセンサスだが、あまりに当事国と日本が近いことから円は売られるというロジックだ。足元では北朝鮮有事の日本への影響は大きくないとの見立てで、円高が進んでいる。
地政学的リスクの高まりは、株、為替市場だけではなく各国の金融政策にも影響を与えるだろう。
一部市場関係者は「米連邦準備理事会(FRB)は利上げをいったん停止し不測の事態に備えるはず」と指摘。米10年債利回りは、既に2.2%台まで低下しているが、17年3回の利上げペースから17年2回の利上げ、つまり年内利上げはあと1回だけとの観測が強まれば、日米金利差のさらなる縮小から円高ドル安局面が強まる可能性はある。
ドル・円は12日午前の段階では、109円30銭台で推移している。目先、200日移動平均線(図1 赤のライン)が位置する108円70銭台がサポートラインとなるか注目されよう。この水準を割り込むと次の節目として、11月9日安値101円20銭と12月15日高値118円66銭の上昇幅(17円46銭)の61.8%押しの水準107円87銭処が意識されるだろう。ただ、昨年12月から米国は2回利上げを実施している事実を考慮すると、トランプ政権が誕生する前の102-3円まで円高が進む展開は考えにくい。
図1:直近1年のドル円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日経平均はどこまで下落するのか?下値メドは18,220円? |
ドル・円が110円前後での推移となれば、企業の18年3月期業績見通しでの想定為替レートは105円から110円の間に落ち着くだろう。前期(17年3月期)と今期(18年3月期)では為替の円安効果などで、10%前後の増益となるのではないかとの見方が強かったが、その前提の一部が崩れることとなる。トランプ政権による米国での設備投資増加期待は根強いものの、トランプ政策の実現性に対する不透明感台頭でトランプ政権の求心力は低下傾向にある。
昨年11月以降、日本株上昇の原動力となっていたトランプ政権に対する期待感を根底としたドル高の流れが一巡となれば、225先物、TOPIX先物ともに売り優勢の展開となろう。
実際、東京証券取引所が発表した3月第5週(27日-31日)の投資部門別売買動向(現物+先物)では、外国人投資家が1,146億円の売り越しとなった。外国人投資家の売り越しは4週連続で、3月月間ベースでは1.7兆円ほど日本株を売り越している。1月-3月では2.1兆円の売り越しだ。売り材料は定かではないが、地政学リスクが市場で話題となる前から、外国人投資家が日本株を売っていたことを考慮すると、「森友学園問題」に伴う国内政治リスクが要因ではないかと思われる。
外国人投資家による売りを細かくみると、3月第4週と第5週はTOPIX先物を1,000億円超売り越している。期末に伴う需給要因との見方もできるが、3月下旬辺りから、午後のTOPIX先物売りが市場では話題となっていた。TOPIX先物を手掛けるのは中長期投資家、日経225先物を手掛けるのは短期的な投資家といった見方がある。つまり足元のTOPIX先物売りは、日本市場から中長期的な投資を手掛けている投資家の資金が流出していると考えることができる。
悲観的な見方ばかりになってしまったが、楽観的な見方もご紹介したい。4月は外国人投資家が買いに転じやすいというデータが存在することは既にご存知だろう。昨年も1-3月の怒涛の売り(先物+現物で約5.5兆円の売り越し)から4月は途転(どてん)買いとなった。期末から期初による需給的な側面が大きいとの見方はあるが、市場のメインプレーヤーによる日本株買いがデータとして確認できれば、市場は落ち着きを取り戻すと想定。
シリアと北朝鮮の動向を注視する神経質な相場展開だが、日銀によるETF買い入れ実施が引き続き下支えとなろう。225先物が18,000円台を割り込むような弱い展開は回避されると想定。上値メドは25日移動平均線が位置する19,000円。一方、昨年12月安値である18,220円を下値メドと考える。
図2:直近1年の日経225先物(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3:直近1年のTOPIX先物(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近1年のドル円、日経平均の相対チャート(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
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