今週末に7月の米雇用統計の発表を控えているが、足元の米国経済指標はややさえない数字が並んでいる。米景気の失速懸念が早期の金利引き上げ観測を後退させている中、日本では国債価格が急落し日米金利差が縮小。為替市場では円高ドル安が進みやすくなっている。雇用統計の内容次第では、ドル・円は6/24(金)以来となる100円割れを試すとの声も聞かれる。今回の米雇用統計が、円高ドル安進行の材料となるのかを確認したい。
また、8/5(金)21:30に発表される米国雇用統計は、英国EU離脱ショックの影響が初めて反映されるため、市場予想を大きく下回る結果となれば、円高ドル安が進行し、「英国EU離脱ショックが再び」という景色が広がることも考えられる。
そうした状況の中、今回は8/5(金)21:30の雇用統計の事前予想、英EU離脱の影響が見られた米国GDP速報値、日銀ETF買い入れ増額の影響について確認してみたい。
7月の非農業部門雇用者数の市場予想は+18.0万人 |
今週末の米雇用統計だが、市場コンセンサスは、失業率が4.8%(前回4.9%)、非農業部門雇用者数は+18.0万人(同+28.7万人)、平均時給は前年比+2.6%(同+2.6%)と予想されている。一部では、市場コンセンサスと実際の数字との乖離が足元大きいため読みにくいとの声はある。また、市場コンセンサスとマイナス乖離していても、ドル買いとなるパターンもあれば、その逆もある。
米雇用統計は、7月とか6月とか明確な月で区切って発表しているが、実際は「全米の企業や政府機関のおよそ40万件のサンプル」を対象に調査を実施し、その調査期間は、「毎月12日を含む1週間」となっている。つまり、大幅な予想上振れで話題となった6月の米雇用統計は、英国EU離脱ショックをほぼ織り込んでいない。今回の7月の米雇用統計は、前回織り込まれなかった英国EU離脱ショックの影響が含まれることから、市場の関心は非常に高い。
想定よりも英国EU離脱ショックの影響が大きければ、7月の米雇用統計は、市場予想を大きく下回ることとなろう。米雇用統計が大幅な下振れとなれば、為替市場では、ドル・円は100円割れの攻防を迎えると考える。一方、市場予想を大幅に上振れる内容となれば、早期の利上げ観測が一気に高まり、ドル買い優勢の地合いとなろう。ここ1週間ほど、主要通貨に対してドルが弱含んでいたことから、買戻しのエネルギーは大きいと見る。
米雇用統計は、FRBが利上げを判断する上で重要視する経済指標であることから無視はできない。これまでも米雇用統計の発表前後で、FF金利先物(Fedウォッチ)は大きく変化する場面が見られた。東京時間3日の13時時点の9月利上げを予想する割合は12%、12月は38%となっている。38%と聞くとそこそこ高い気もするが、昨年12月に米国が利上げを実施した際、Fedウォッチで利上げを予想する割合は70%を超えていたことから、今のところ年内利上げは難しいと見ておいたほうが良さそうだ。これだけ、米金利引き上げ観測が後退した背景には、先週末の4-6月期米GDP速報値が予想を大幅に下回ったことが挙げられる。
図1:直近1年のドル/円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
英国EU離脱の影響が垣間見られた米国GDP速報値 |
7/29(金)に発表された4-6月期米国内総生産(GDP)は、前期比年率+1.2%にとどまり、市場予想の同比+2.5%程度を大幅に下回った。在庫や設備投資の減少が主な要因とされている。住宅投資はマイナスとなった一方、個人消費は堅調に推移した。1-3月期GDPは+1.1%から+0.8%に下方修正されており、米経済成長率は2015年10-12月期以降、2%未満の状態が続いている。
4-6月期に米経済は若干加速したが、成長率自体は低い伸びにとどまった。市場関係者からは、英国の欧州連合(EU)離脱などへの警戒感から、在庫や設備投資のすみやかな回復は期待できないとの見方が多く、現時点で利上げを行った場合、順調な個人消費を抑制するおそれがあるとの声も聞かれる。米国は英国EU離脱ショックの影響は極めて小さいと見られていたが、GDP失速が、今後の米経済指標への警戒感を高めるきっかけとなったようだ。
図2:直近6ヶ月のNYダウ(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日銀ETF買入が一定の下支えに |
一方、日銀会合通過後の日本株だが、ETF買入枠の拡大を発表したにも関わらず、16,000円前半とややさえない。ただ、追加の金融緩和発表前よりも、ドル・円が4円ほど円高に進行していることを考慮すると、よく下げ渋っているほうだと思われる。米雇用統計通過後に、ドル・円が今の水準よりも円高に推移しても、日銀によるETF買入が一定の下値メドとなろう。短期筋による猛烈な仕掛け売りが入った場面では、日銀ETF買入も崩されそうだが、日経VI(ボラティリティ・インデックス)は、日銀会合後、25p前後まで低下。
ボラティリティの低下は値幅の狭いレンジ相場を示唆することから、値動きの荒い相場を好む短期筋は参戦しにくいと想定する。米雇用統計の結果次第では、円高是正につながり、日本株は上を意識した展開が見られる可能性もある。閑散の夏相場だが、指数寄与度の高い銘柄を中心とした上昇で、8月第2週の日経平均は17,000円をつける場面が見られるかもしれない。
図3:直近6ヶ月の日経平均株価(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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