2013年振り返り特集<第3弾>では、今年の海外株式市場の動きについてまとめていきたいと思います。景気にもサイクルがあるように、株価にも大きなサイクルがあります。今年の動きをおさらいしておくことは、来年以降の投資戦略を組み立てる上においても、とても有意義なのです!
- ※本レポートにおける指数および個別銘柄の変化率(パフォーマンス)は全て2013年12月13日現在の株価を元に算出しています。
世界の株価指数ランキング:2013年は先進国の株価指数のパフォーマンスが新興国を上回った稀な年!
まず図1は主要国・新興国の株価指数の2013年の変化率を比較したものですが、TOPIX(東証株価指数)がぶっちぎりの1位となりました。円高進展、高齢化、国際競争力の低下など数々の悪条件に長年苦しめられてきた日本ですが、年初来だとなんと+44%の上昇。日本株がこれほどの好パフォーマンスを記録したのは実に8年ぶりです。前回の大相場は2005年の小泉改革までさかのぼらないといけません(05年のパフォーマンスは同じく+44%)。アベノミクスの効果がいかに大きかったのかが、よくわかります。
図1
次に言えることは、先進国の株価パフォーマンスが新興国を上回った非常に珍しい年だったということです。図1を改めて眺めてみると、2位に食い込んだベトナムVN指数を除けば、上位に並ぶのは見事に先進国の株価指数ばかりです。新興国の経済成長が一服し不透明感が漂う中で、日米欧の国々が不景気から脱出する兆しをそれぞれ見せてくれたことが、良好な株価パフォーマンスとなって表れたのでしょう。
図2は、先進国と新興国の株価指数の過去10年間のパフォーマンスを比較したものです。これを見ると、ほぼ全ての年において、新興国の株価指数の上昇率が先進国の株価指数を上回り続けてきたことが確認できます。2013年のように、先進国の株価の上昇率が新興国の上昇率を大きく上回ったのは、おそらく初めての事ではないでしょうか?
図2
米国業種別ランキング:業種ごとの動き方のクセを知っておくと、来年以降の投資に役立つかも?
次に、米国の業種別ランキングを見てみましょう。図3は、2013年におけるアメリカS&P500指数の業種別の株価変化率です(S&P500指数にはいくつかの分類方法があります。本稿では全部で24業種に分けられる中分類を使用しています)。2013年は、米国市場が過去最高値を更新した記録的な年だったため殆どの業種がプラスとなっていますが、業種による差は意外と大きかったようです。
図3
来年以降の投資戦略を練る上では、業種ごとの特色を掴むことが大切です。続く図4〜7では、業種ごとの年次の株価変化率を、いくつかのパターンに分けて示しています。なおこれらの図はS&P500指数を基準とした相対値となっています。プラスの年はS&P500指数の変化率を上回り、マイナスは逆にS&P500指数の変化率を下回ったという意味です。
図4
図5
図6
図7
米国個別銘柄ランキング:アメリカ企業の強さ、市場の活気の良さが遺憾なく発揮された年
米国ラッセル1000指数の2013年における株価変化率トップ10とワースト10は図8の通りです。トップ10銘柄の株価上昇率はいずれも+100%を超えており、成長企業が次々と登場するアメリカ市場の活気の良さが窺いしれます。テスラモーターズ(TSLA)、ニュー スキン エンタープライズ(NUS)など新しいビジネスの台頭、ネットフリックス(NFLX)やパンドラ メディア(P)などのネット企業の好調、そしてエンドーヘルスソリューションズ(ENDP)などヘルスケア関連銘柄の躍進が2013年の主な特徴と言えるでしょう。一方、ワースト10には資源関連や大手百貨店などの伝統的な産業に従事する企業が多く並び、時代の変化を感じさせてくれます。
図8
中国個別銘柄ランキング:2013年は景気の踊り場。来年には不動産関連銘柄の巻き返しはあるか?
中国ハンセン指数の2013年における株価変化率トップ10とワースト10は図9の通りです。マカオでカジノを経営するギャラクシー エンターテイメント(00027)、サンズチャイナ(01928)や、チャット/ゲーム等多彩なサービスをネット上で展開するテンセント(00700)、スマートフォンで躍進したレノボ(00992)など、娯楽関連銘柄が特に高いパフォーマンスを記録した年でした。一方、ワースト10には不動産関連企業がずらりと並び、2013年が景気の踊り場だったことをうかがわせます。グローバル規模では景気の穏やかな回復が予想されている2014年、果たしてこれらの銘柄の巻き返しはあるのでしょうか?
図9
新興国の株価動向:先進国との株価パフォーマンスの差は何を意味しているのか?
最後に、新興国の株価動向について考えてみたいと思います。冒頭で述べたように、2013年は先進国の株価パフォーマンスが新興国を上回った珍しい年でした。これを、「新興国の成長神話の終わり」と考えるべきか、「来年以降はまた新興国が成長軌道に戻ってくる!」と考えるべきか、果たしてどちらなのでしょうか?
図10
図11
図12
図13
上の図10-13は、過去15年にわたって、香港ハンセン指数、ジャカルタ総合指数、タイSET指数、ブラジルボスペパ指数の動きを米国S&P500指数と比較してみたものです。これを見る限りだと、それぞれの株価指数は、基本的には米国S&P500指数との相関がかなり高いように感じられます。米国は世界最大のGDPを持つ国であり、米国市場は世界の株式市場の時価総額の半分近くを占める市場です。米国の景気動向が世界を左右するのは、ある意味当然かもしれません。
しかしその一方で、直近1-2年は米国との相関性が薄れているように見えるのも事実です。では、この違いは一体どこからもたらされたものなのでしょうか?
ぱっと思いつく理由としては二つあります。
(1)中国のシャドーバンキング、タイの権力闘争、ブラジルやインドネシアの格差拡大デモなどそれぞれの国における固有の問題が株価に悪影響を及ぼした可能性。
(2)米国の2013年の株高は大規模な金融緩和によってもたらされたものであり、今後の景気回復に対しかなり先行している可能性。
もし仮に(1)が主な原因だとすれば、それぞれの国における混乱が収束することが株価回復の条件となるでしょう。また、もし仮に(2)が主な原因だとすれば、2014年においては、景気回復を先取りして株価が上昇している米国よりも株価が出遅れている新興国の方が魅力的な投資対象だと言えるのかもしれません。
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