2016年の夏は雨や曇りの日が目立ち、台風も次々と日本列島を襲うなど天候不順に泣かされました。景気の「気」は人間の気持ちが経済に強く影響しやすいことを表現しているようにも感じられます。事実、この夏の株式市場は上値が重く、商い的にも盛り上がらない日々が続きました。
しかし、10月に入り「秋晴れ」の日が目立つようになると、不思議に株価も堅調に推移し始めました。10/20(木)には日経平均株価の終値が17,235円と、9/5(月)の高値17,156円を超えてきました。次の上値抵抗ラインは5/31(火)の高値17,251円ですが、そこを超えてくると4/25(月)の高値17,613円まではやや間があるため、株価上昇が加速しやすくなります。
「オプションの『ココがPOINT!』」では、日経平均株価の上昇ピッチが加速し、さらに上記の上値抵抗ラインすらブレイクする可能性も大きいとみています。今回はその理由や、とるべき投資戦略についてご説明したいと思います。
不透明感が晴れつつある!? |
図1は日経平均株価(日足)の一目均衡表です。すでに、(1)「遅行スパン」が日々線を上抜け、(2)日々線が「クモ」を上抜け、(3)「転換線」が「基準線」を上抜け、という3条件が揃い、「3役好転」の形になっています。テクニカル的には「強気相場」に転換していると見受けられます。
日経平均株価が17,000円を抜け切れていなかった10/19(水)までは、(1)の部分がやや微妙な形状でしたが、10/20(木)の上昇で「上抜け」が明確になってきました。ちなみに、日経平均株価は週足チャートについても、10/19時点で52週移動平均が17,077円でしたので、そこから上放れた現在は、より「強気」の形になっています。
ここにきて、株価上昇加速の兆しが強まってきた背景には、政治のさらなる安定化に対する期待があるとみられます。10/20(木)の日本経済新聞・朝刊では、自民党の総裁任期が3期9年に延長される方向であることが報じられています。仮にそうなれば、安倍政権が最長2021/9まで継続する道が開かれ、東京五輪終了後も「アベノミクス」が続く可能性が出てきます。さらに、米大統領候補の第3回(最終回)テレビ討論会後もクリントン優位が確保され、市場の不安心理は後退しつつあります。
10/19(水)に米国で発表された「ベージュブック」(地区連銀経済報告)では、米国経済が緩やかなペースで拡大していること、物価の上昇はわずかにとどまっているものの、労働市場については引き続きタイトであること等が確認されています。米国の政策金利は12/14(水)まで実施されるFOMC(米連邦公開市場委員会)で引き上げられるとの見方がメインシナリオであり、それまでは引き続き、円安・ドル高が進みやすい投資環境であると考えられます。
円安・ドル高の継続や、原油価格の上昇等を加味すれば、10/20(木)以降に本格化する我が国の上場企業決算(7〜9月期)で、仮に業績予想の下方修正が多くなっても、株価の波乱にはつながりにくいと考えられます。日銀短観(9月調査)では、6月調査時点で予想したほど、9月の業況が悪くならなかった業種も少なくありませんでした。また、ここにきて中国経済が回復色を強めているように見受けられます。決算発表でポジティブ・サプライズが起こるケースも少なくなさそうです。
これら、テクニカル面、ファンダメンタルズ面の諸要因をみる限り、不透明感が徐々に晴れ、日経平均株価の上昇が加速しても不思議ではないと考えられます。
図1:日経平均株価・一目均衡表(日足)〜「3役好転」が明確に?
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/10/20現在。
【ココがPOINT!】一転、ボラティリティが高まる可能性に注意し、それに合わせた戦略を!? |
日経平均株価(日足)は、一目均衡表の「3役好転」を実現しただけではありません。図2をご覧になれば明らかな通り、半年以上にわたって続いてきた「三角保ち合い」からの上放れも明確になってきています。9/5(月)の高値17,251円を上放れてくると、次の上値抵抗ラインは4/25(月)の高値17,613円とみられ、そこまでは強い抵抗ラインも見当たらないことから、株価上昇が加速しやすくなります。さらに、同高値を超えてくると「W底」からの離脱が濃厚となる形状となり、一気に2/1(月)の高値17,905円を取りに来るケースも想定されます。
ちなみに、日経平均株価の予想EPSは10/19現在で1,189円56銭であり、日経平均株価が仮に17,905円まで上昇した場合の予想PERは15.05倍の計算になります。2/1時点の予想PERが15.28倍であったこともあり、十分許容範囲であるとみられます。
このように、外部環境面で不透明感が薄まりつつある一方で、テクニカル面でも株価上昇の加速が期待できる局面であり、オプション取引では素直に「コールの買い」が有効であるとみられます。例えば、2016/11限の場合、権利行使価格17,500円のコール・オプションは135円(10/21 15:10)という価格が付いています。損益分岐点(諸コスト考慮前)は17,635円(17,500+135)と計算されますが、日経平均株価の「W底」からの離脱が明確化する形となり、株価上昇が加速した場合、そこを上回ることはそれほど困難ではないと思われます。
ちなみに、日経平均株価の予想変動率の大小を示す日経平均VI先物は、図3が示すようにいまだ低水準で推移しています。したがって、株式市場は値動きが大きくなる可能性を十分織り込んでいないとみられ、その分、コール・オプションは割安感の強い状態になっていると考えられます。もっとも、この日経平均VI先物自体が買い場といえるかもしれません。
図2:日経平均株価(日足)
図3:日経平均VI先物(日足)
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/10/20現在。