3月の日経平均株価は総じて揉み合いの展開になりました。しかし、権利落ち日となった3/29(火)からは7営業日続落(アベノミクス相場開始以来では「最長」の連敗記録)となり、4/8(金)には当面の安値となる15,471円まで下落しました。権利付最終日である3/28(月)に付けていた短期的高値17,167円からは10%弱下落した格好です。米国では、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げペースは緩やかになるとの見方が浸透し、株価が上昇する反面で、ドル安が加速したことから、日本株には逆風となりました。
しかし、米国経済の好調さをアピールするような指標の発表が増えていることに加え、中国経済にも立ち直りの兆しが出始めていて、株式市場にもようやく真の「春風」が吹くようになりそうです。米国株高、円安・ドル高に促される形となり、日経平均株価は4/12(火)〜4/14(木)に3日続伸し、計1,159円も上昇する展開になっています。
下落・上昇と大揺れの株式市場は今後、上下どちらの方向に動くのでしょうか。そうした中で、市場参加者はどう戦えば良いのでしょうか。
「円高だから株安」、「円安だから株高」という指摘に惑わされるな? |
3月下旬以降、株式相場の重要なカギを握っていたのは「為替」でした。円高を嫌気して日経平均株価は下げ、円高が一巡すると株価は戻るという形です。しかし、こうした「円高だから株安」、「円安だから株高」という指摘について、時には疑ってかかった方が良いかと思われます。
4/8(金)までの株安局面では、米国経済はそれほど強くなく、世界経済にも不透明感が強く、米国の利上げペースは緩やかになるという前提で円高・ドル安が進んでいました。しかも、G20でドル高修正を含めた合意が形成され、当面はドル安になるとの観測すら台頭していました。マイナス金利導入に伴うデメリット面を数多く指摘されたこともあり、日銀は手詰まり状態なので、日銀が今後追加緩和に踏み切るのは困難と考えられ、それが円高の一因との見方すらありました。
しかし、多くの米地区連銀で製造業の景況感を示す指標が改善し、新興国の株価や通貨も上昇し始める中で、投資家のスタンスはすでに「リスクオン」に戻りつつありました。そうした中、外為市場で吹く風も、円高・ドル安をもたらす「北風」から、円安・ドル高をもたらす「春風」へ変化し始めました。
そもそも、株価の下落が権利落ち日である3/29(火)から加速した点は重要です。マイナス金利が浸透する中、配当の権利を確保する動きが強かった分、配当落ち後の反動が厳しくなっていた可能性があります。外国人投資家の多くは、日本株を買う時に円売り・ドル買いのヘッジを並行して行っていることが多く、日本株を売る時は逆の動きとして円買い・ドル売りが起きやすくなります。3/29以降の円高・ドル安は、株安により誘発した部分も多いかもしれません。すなわち、「株安だから円高」であったのかもしれません。
株高、商品相場高等に反映されているように、世界市場で投資家がリスクを取る姿勢が回復してきましたので、米国が次の利上げを準備する条件も整ってきたと言えそうです。そのこと自体が一段の円安・ドル高につながる可能性もありそうです。当面、株式市場は戻りを試す局面が続くのではないでしょうか。
図1は日経平均株価の一目均衡表です。日々線は直近の下落相場で、いったんはクモから下抜ける展開になりましたが、ここにきて急回復しています。このようにクモを下回った後で短期に回復した後は、株価上昇への期待が膨らんでいると考えられます。
図1:日経平均株価(一目均衡表・日足)〜クモから下抜け後も短期に回復した点は評価も?
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/4/14現在。
【ココがPOINT!】強気だけれど「転ばぬ先の杖」を備えておきたい場合は? |
前項で述べたように、今後の日経平均株価について基本的に「強気」と考えるのであれば、株式を買い建ててホールドする戦略が有効です。「日経平均株価」自体を買うことはできませんが、それに準じた先物ポジションやインデックス・ファンドで買い建てることができます。
しかし、相場観が的中するとは限りません。そもそも、短期間に急上昇してきた後ですから、テクニカルな反動安が起こっても不思議ではありません。また、為替の読みをはずし、結局株価の読みもはずす場合もあります。
そこで、現物株の買いにプット・オプションの買いを組み合わせる合成ポジション(プロテクティブ・プット)を組み、損失をヘッジする方法があります。図2はその一例です。株価が上昇している時は、現物株の買いが奏功し、利益が膨らんでいきます。しかし、株価が下落した時はプットの買いによる利益と現物株の買いに対する損失が相殺され、損失が一定水準で収まる計算になっています。
現実問題として、相場に注意すべき点が出てきた場合、買い持ち高を売ればよいという指摘もあります。確かに、インデックス・ファンドや先物を単純に買い持ちしているのであれば、それも妥当な考え方です。しかし、現実に複数の個別株をポートフォリオとして保有している場合などは、個別銘柄の投資判断も重なり、そう単純ではないと思います。当面の波乱相場をヘッジするのであれば、プットの買いと合成した方が簡単と言えるかもしれません。
なお、図2から明らかなように、合成損益図は「コールの買い」と同じ形です。したがって、現在、何のポジションもない中立のポジションであれば、はじめからコールの買いだけで対応する方法もあります。ただ「プロテクティブ・プット」にせよ、「コールの買い」にせよ、保険を掛ける形になりますので、それ相応にコストが高くなるというデメリットがありますので、その点には注意が必要になります。
図2:プロテクティブ・プット戦略(現物株の買い+プットの買い)
- ※日経平均オプション・データをもとにSBI証券が作成。16,875円で日経平均株価(現物)を買い、同時に2016/5限の日経平均プット・オプション(権利行使価格16,875円)を400円で買ったと仮定した場合の5/13(金)SQ時における想定損益図。手数料・税金等の諸コストは考慮していません。