日経平均株価は2016年の年初から6営業日続落しました。年初からの「連敗記録」としては過去最長です。この間の下落幅は1,814円、率にして9.5%に達しました。世界的な株価下落、中国経済への不透明感、人民元安、円高、原油安など、悪材料が数多く重なったことが大きいでしょう。
中国人民銀行によるオフショア市場での元買い介入等もあり、1/13(水)に日経平均株価は7営業日ぶりに反発しました。しかし、同じ日のNY市場でダウ平均が364ドル安と急反落したことを受け、1/14(木)の日経平均株価は再び大きく売りが先行する展開になっています。
株式相場の大揺れは今後も続きそうな気配です。年初の株価急落は、その年の波乱を示唆しているケースも多いので、今後も株価の乱高下が続く可能性があります。リスクヘッジ手段や機敏な投資判断が、これまでにも増して必要になりそうです。
25日移動平均とそこからの乖離率が相場を示唆? |
1/13(水)に、日経平均株価は7営業日ぶりの上昇となりました。2016年がはじまって初の上昇ということになります。人民元の落ち着きや輸出の予想外の改善等を背景に、中国経済への不安が一服したことが理由でしょう。
もっとも、こうした外部要因のみならず、日経平均自体に「下げ過ぎ感」が強まっていたことも反発の一因とみられます。25日移動平均に対し、日経平均のマイナス乖離(1/12)が8.6%まで拡大(後に詳細説明)したこと、日経平均のRSI(1/12)が9.8%(通常は30%未満が「売られ過ぎ」)まで低下したこと、東証一部の騰落レシオ(1/12)が57.9%(通常は70%未満が「売られ過ぎ」)まで低下したこと等が、その具体例です。
図1は、日経平均株価とその25日移動平均の乖離率を示したものです。1/12(火)を例にご説明すると、この日の日経平均株価終値は17,218円96銭でしたが、その25日移動平均は18,840円17銭であり、そこからはマイナス8.6%乖離している計算になります。やや大雑把にみた場合、日経平均の25日移動平均乖離率は茶色い四角で示した箇所のように、-5%から+5%の間で推移しているとみられます。逆に、-5%未満では「売られ過ぎ」、+5%以上では「買われ過ぎ」と考えることができますので、-8.6%という数字はかなり「売られ過ぎ」の状態を示していると捉えることができます。
ちなみに、図1で示された2006年以降のデータでは、25日移動平均からの乖離率が-10%以上-7%未満の時、5営業日後に上昇している可能性は67.2%で、5営業日平均騰落率は+0.6%でした。今回、テクニカル指標を基準に考えた場合、かなり教科書通りの動きをしたと言えるかもしれません。
もっともこうした「買い時」や「売り時」を計る「オシレーター系」のテクニカル指標は、相場の大きなトレンドを示唆してくれる訳ではありません。図1の青丸で示した25日移動平均乖離率は、確かに「売られ過ぎ」を示唆していますが、下落トレンドの中の短期的なボトムを言い当てているに過ぎません。今回の年初からの波乱相場が、中期的にはどんなトレンドに発展していくのかは、もう少し時間が経過しないと判明しない可能性がありそうです。1/14(木)の波乱を見る限りでは、株式市場の大揺れはもう少し続くと考えた方が良さそうです。
図1:日経平均の25日移動平均乖離率はおおむね-5〜+5%で推移
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/1/13現在。
【ココがPOINT!】株式相場の「大きな揺れ」に備えるには? |
株式市場は今後の値動きをどう予想しているのでしょうか。図2は日経VI(ボラティリティー・インデックス)の先物相場の値動きを示したものです。この指数は「投資家が日経平均の将来の変動をどう読んでいるか」を示す指数で、数字が大きい程、投資家が「日経平均は大きく変動する」と読んでいることを示しています。
図2では、日経平均VI先物指数が大きく上昇していますので、日経平均は今後も大きく動く可能性がありそうです。確かに、日経平均は昨年の9/29の16,901円が当面の安値になっていますので、仮にここを大きく割り込むようなケースとなれば、急速に値動きが荒くなる可能性もありそうです。もっとも、テクニカル的には「下げ過ぎ」を示唆している指標も多く、キッカケさえあれば、日経平均が反発に転じる可能性もでてきそうです。
このように、相場の方向感は読むのが難しいものの、「とにかく大きく動きそう」という時は、オプション取引における「ストラドルの買い」が有効と考えられます。同じ限月・同じ権利行使価格のコール・オプションとプット・オプションを同数量買うというポジションです。図3ではその想定合成損益図を示しており、日経平均が上下どちらかに大きく動いた時に利益が出る「仕組み」になっています。
「ストラドルの買い」での注意点は、コールとプットのオプションを両方買い建てするために、コストがかさむということです。図3の例では既に、コールとプット1単位ずつで計1,150円もコストをかけていますので、これを吸収して利益を出すのは、見かけ以上に困難が伴うのが現実です。図2の日経平均VI先物指数が高止まりせず、相場が落ち着いてしまった場合は、投資したプレミアムがすべて損になる可能性もあるので、注意が必要です。
図2:日経平均VI先物(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
図3:「ストラドルの買い」の想定合成損益図(例)
- 日経平均コール・オプション(2016/2限月・権利行使価格17,000円)を605円で、プット・オプション(2016/2限月・権利行使価格17,000円)を545円(ともに1/14の11:30直近値)で買い、SQまで保有したと仮定した場合の想定合成損益図。ただし、手数料・税金等の諸コストは除きます。