11/6に発表された雇用統計が予想以上の強い結果となり、米国での年内利上げ観測が急速に強まったにもかかわらず、当日のNYダウは上昇しました。このことは、日米の株式相場が新たな局面に入ったことを示唆しているように思われます。足元の日経平均株価は「強い」動きになっています。
日経平均株価は中長期上昇トレンドに入ったとみられます。ただ、市場参加者としては短期的な相場の「振れ」にも注意を怠ることはできません。「日経平均2万円」の前後で、相場はどう動き、投資家としてはどう対応すべきでしょうか?
「中長期的」では「強気」に「基調転換」の可能性 |
日経平均株価が堅調に推移しています。その背景や今後の見通しについては、11/10付「225の『ココがPOINT!』」で詳しくご説明していますので、そちらもご参考いただければ幸いです。
今回はテクニカル面について吟味し、短期的な側面も含めて相場の先行きを占ってみたいと思います。
11/10付「225の『ココがPOINT!』」では、日経平均株価の一目均衡表について触れました。そこでは「三役好転」の詳細についてのご説明はしませんでしたが、図1に示したように
(1)「遅行スパン」が日足チャートを下から上へ突き抜け(赤丸1の部分)
(2)「転換線」が「基準線」を下から上へ突き抜け(赤丸2の部分)
(3)日足チャートが「クモ」の上限を下から上へ突き抜け(赤丸3の部分)
となっており、「一目均衡表」を分析する限りでは、日経平均株価が「強気転換」したと考えられます。さらに、主要移動平均線を同一平面上に書き込んだ「日足チャート」(図2)では、
(1)「25日移動平均線」が、10月半ばごろまでは横ばいになっていましたが、11月に入り上向きに転換(矢印1の部分)
(2)中長期的な相場の方向感に影響する「200日移動平均線」を日足チャートが上放れ(赤丸2の部分)
等の現象が出ていますので、この面でも日経平均株価は「強気転換」したと考えられます。
図1:「三役好転」となった日経平均株価・一目均衡表(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成。2015/11/11現在。
図2:移動平均分析で「強気転換」が鮮明化してきた日経平均株価
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成。2015/11/11現在。
「短期」では、過熱感に注意すべきタイミングか? |
市場参加者としては、中長期的な相場の基調が大きく変わった可能性を理解しておく必要があるのではないでしょうか。複数のテクニカル指標が「強気」に転換していることに加え、「相場が米国の年内利上げを織り込んだ」という可能性が強く、米国の利上げ観測を「リスク要因」と捉えてきたこれまでの相場とは質が異なってくる可能性があるためです。日経平均株価は、20,000円どころか、年初来高値(20,868円)を更新してくる可能性が出てきたと思います。
ただ、現状の株価水準から一気に年初来高値を超えて上昇することは難しく、どこかで一度「スピード調整」をはさむ可能性に注意が必要です。短期的に考えると、日経平均株価のRSI(11/11時点で72%)が過熱圏(70%以上)に入っている上、25日移動平均線からの上方乖離率(11/11時点で5.3%)も反転の目安とされる7〜8%(近年は5%前後)に接近していることから、20,000円直前または少し超えた水準程度まで上昇した後「ひと休み」になる展開も想定しておくべきではないでしょうか。
なお、相場の基調が予想外に強い場合、「ひと休み」が大きめの株価下落になるのではなく、一進一退を繰り返しながら移動平均線の上昇を待つ「日柄調整」になる場合もありますので、注意が必要です。下の図3はそうした例のひとつです。
ほぼ1年前の2014/11/10に、上昇を続けていた日経平均株価の25日移動平均線からの上方乖離率が10.0%に達しました。通常は同乖離率が7〜8%で「行き過ぎ」と理解されますので、株価はそこで天井を打っても不思議ではありませんでした。
確かに、その後は若干の上値余地があったものの、株価の上昇スピードは落ち、一時は高値から1,000円超下げる局面もありました。しかし、トレンドとしては2ヵ月程度ボックス相場が続き、再び2015/2から上昇トレンドに転じました。
図3:移動平均乖離率が「過熱感」を示唆後、日柄調整に転じたケース(2014/10/1〜2015/3/31)
- ※日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。
【ココがPOINT!】相場への対応は「買い」か「売り」だけではない |
前項までで述べたように、株式相場は中長期的に「強気」局面に転換し、上昇基調を続けると予想されるものの、短期的には過熱感の高まりも無視できないというのが現状認識になると思います。
今、仮に日経平均と連動する現物株の買いポジションを持っている場合、このような相場観を反映させた投資行動を取るとするならば、「当面は買いポジションを維持し、過熱感が強まった時点で売る」ということになります。しかし、実際は相場局面の判断や売買タイミングを合致させることは非常に困難であると考えられます。
こうした時、先物・オプション取引の口座がある投資家であれば「カバードコール」という手法があります。現物株の買いポジションをそのまま維持する一方で、コール・オプションを売り建てるという手法です。
図4は、2015/11/10の市場データをもとに、カバードコールの理論損益を試算してみたものです。日経平均株価の3つの局面で、カバード・コールの損益を計算しておきたいと思います。
(1)SQにおける日経平均が時価よりも安い時、現物株は下落するものの、「コールの売り」でプレミアムを着実に獲得できるため、損失はその分限定される。
(2)相場観が当たり、SQにおける日経平均株価が時価よりも少し高い時、現物株の値上がり益に加え、「コールの売り」でプレミアムを若干享受できることになる。
(3)SQにおける日経平均株価が時価よりも相当高い時、現物株の値上がり益が増える分、「コールの売り」による損失が大きくなり、利益が限定的になる。
現物株を売買する時、判断すべき相場観は(株価が)「上がる」か「下がる」の2つであると考えられます。しかし、オプション取引が利用できる場合は、同じ「上がる」と判断する時でも、「大きく上がるのか」または「少しだけ上がるのか」によって、取るべき戦略が変わってきます。同様に「下がる」と判断する時にも、「大きく下がるのか」または「少しだけ下がるのか」によって、取るべき戦略が変わってきます。オプション取引を利用することで「相場観」の細かい差異をポジションの違いとして表現し、損益に実現することが可能になります。
図4:カバードコールの理論損益図
- ※日経平均および日経平均オプション取引データよりSBI証券が作成。2015/11/10の日経平均終値(19,671円)で現物株を買い、この日の日経平均コール・オプション(2015/12限月・権利行使価格19,625円)を日中終値(465円)で売り建て、SQまで売り持ちしたと仮定した場合の合成損益(カバードコール)を太線(3)で示しました。手数料、税金等の諸コストは計算に含めていません。
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