日経平均株価は8/11の取引時間中に、20,946円93銭の高値を付けた後は下落基調になっています。8/11〜8/13の3日間、中国人民銀行が、人民元の対ドル相場で基準値を引き下げたことが大きな要因となりました。これを受け、新興国の通貨や株式市場を中心に、世界のマーケットは波乱の様相を呈しました。
その後、8/13を最後に、中国人民銀行による「人民元切り下げ」が一巡したことで、マーケットは一時的に安定を取り戻す兆しを見せました。しかし、8/14に4,000ポイントを回復(7/28に3,537ポイントの安値)した上海総合株価指数が再び下落に転じたことで日経平均も再び下落してしまいました。
今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、一目均衡表などの基本的なテクニカル分析を用い、当面の相場の方向感を予想してみたいと思います。そして、その時にとるべき投資戦略についても考えてみたいと思います。
「大波乱」が接近!? |
日経平均株価は8/11の取引時間中に、20,946円93銭の高値を付けた後は下落基調になっています。冒頭で触れたように、中国人民銀行による「人民元切り下げ」が大きな要因です。その後「人民元切り下げ」が打ち切られたことで、マーケットは一時安定を取り戻す兆しを見せました。しかし、8/14に4,000ポイントを回復した上海総合株価指数が再び波乱となったことで日経平均も再び下落してしまいました。
図1は、そうした日経平均株価の動きを日足チャートで見たものです。ローソク足の他、一般的に多くの投資家が参考にしている25日・75日・200日の移動平均を重ねています。日経平均株価は8/18に25日移動平均を、8/19に75日移動平均を下回ってしまいました。
25日移動平均は、テクニカル分析で使われる最も重要な移動平均のひとつで、同移動平均よりも日々の株価が高い時は、当面は「強気相場」、逆に低い時は「弱気相場」と判断することが一般的です。同様に、日々の株価が25日移動平均を下から上へ突き抜けると「強気転換」、逆に上から下へ突き抜けると「弱気転換」したと考えられます。他の移動平均についても、基本的な考え方は同じですが、移動平均の期間が長期になるほど、より長期的な相場の強弱を判断するのに使われると考えるとよいでしょう。
8/20の日経平均終値は20,033円52銭でした。これに対し、この日の25日移動平均は20,541円、75日移動平均は20,328円でした。移動平均を分析する限りでは、向こう1〜3ヵ月の日経平均の方向感は下向きの可能性があり、要注意ということになります。もっとも、これだけでは判断材料として不十分ですので、次項では一目均衡表による分析も試みたいと思います。
図1:8/11に高値示現後の日経平均は波乱の展開〜足元では主要移動平均を下回る
- ※当社チャートツールをもとに、SBI証券が作成。2015/8/20現在。
一目均衡表の「三役逆転」に注意 |
一目均衡表では、おもに次の3つのポイントについて注目します。話をわかりやすくするために、「一目均衡表で何が起こった時に、相場は強気トレンドにある(あるいは強気転換)と判断されるのか」について簡単に整理しておきます。ここに記述した内容と逆の動きをした場合は、相場が弱気トレンドにある(あるいは弱気転換)と判断されます。なお、それぞれの説明の番号と図2における番号は一致しています。
(1)日足チャートが「クモ」の上にあれば「強気トレンド」。日足チャートが「クモ」を下から上へ突き抜ければ「強気転換」。
(2)「遅行スパン」が日足チャートの上にあれば「強気トレンド」。日足チャートを下から上へ突き抜ければ「強気転換」。
(3)「基準線」が上向きならば中期的に「強気トレンド」。「転換線」が「基準線」を下から上へ突き抜ければ「強気転換」。
図2の日経平均・一目均衡表(8/20現在)では、現在「クモ」の上限(先行スパン2)が20,033円95銭にあり、日経平均株価の終値(8/20)は20,033円52銭ですので、ぎりぎり「弱気転換」となり、要注意の形になりました。
さらに、(2)で示した「遅行ライン」が、日足チャートを上から下に突きぬけてしまっていますので、弱気シグナルがもうひとつ点灯していると考えられます。また、一目均衡表における「クモ」は、相場の下値支持ライン(または上値抵抗ライン)の役割を果たしますが、その「厚み」が、支持する力(抵抗する力)の強さを表します。8/27までは「クモ」が非常に薄い部分ですので、相場は不安定な時期にあると考えられます。ちなみに、「クモ」を形成する2つの先行スパンが交差する日(ここでは8/27)は「要注意日」と言われます。今回はちょうど、受渡しベースで「9月・月替わり営業日」になるタイミングですので、細心の注意が必要ということになります。
日経平均は、「遅行スパン」の日足チャートの下への突き抜けに加え、(1)でいう日足チャートの「クモ」の下への突き抜けなど、「弱気転換」の材料が増えてきました。また8/20現在、「転換線」と「基準線」が同値となり、いわゆる「三役逆転」という「弱気転換」がほぼ起こってしまった形です。テクニカル分析でみる限り、今後の日経平均の動きには注意が必要ということになりそうです。
図2:相場の「波乱」を示唆し始めた「日経平均株価・一目均衡表」
- ※当社チャートツールをもとに、SBI証券が作成。2015/8/20現在。
一目均衡表の主要用語
基準線 | 「過去26日間の高値と安値を足して2で割った数値」をつなげた線。 |
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転換線 | 「過去9日間の高値と安値を足して2で割った数値」をつなげた線。 |
先行スパン1 | 「基準線と転換線を足して2で割った数字を本日を含む26日先に表示し、それをつなげた線。 |
先行スパン2 | 「過去52日間の高値と安値を足して2で割った数字を本日を含む26日先に表示し、それをつなげた線。 |
クモ | 先行スパンの1と2に挟まれた場所。 |
遅行スパン | 当日終値を、当日を含む26日前に表示し、それをつなげた線。 |
【ココがポイント】オプション取引で「買いポジション」をリスクヘッジ! |
現在のように、株価に波乱の芽が膨らんでいる時に、現物株の買いポジションを保有していたと仮定するならばどうでしょうか。もちろん、現物株を売却し、現金比率を高めておくというのが基本的な戦略です。ただし中には、9月末に接近している配当や株主優待の権利を確保すべく、買いポジションを維持しておきたいと考える投資家も少なくないと思います。
こうした時に有効と考えられる戦略が「プロテクティブ・プット」です。現物株の買い持ちとプット・オプションの買いで成立する戦略で、図3はその理論損益図になっています。
ここでは、日経平均株価を8/20の終値20,033円で買うとともに、日経平均プット・オプション(2015年9月限・権利行使価格20,000円)を同じ日の日中終値335円で買う取引について、その合成損益図を示しています。
仮に、日経平均株価が今後波乱の動きとなった場合は、もちろん現物株の損失が膨らみますが、「プットの買い」による利益と相殺され、損失は一定水準に限定される計算となります。また、心配が杞憂に終わり、日経平均が上昇した場合は、プット・オプションの買いは権利放棄に追い込まれ、プレミアム料(335円)の部分は損失になりますが、トータルでは現物株の値上がり分が上回り、利益を享受できる計算になります。波乱が警戒される相場だからこそ、オプション取引の利用価値は高いと考えられます。
図3:現物株の買いポジションをリスクヘッジする「プロテクティブ・プット」の理論損益図
- ※日経平均オプションデータと日経平均データを用い、SBI証券が作成。
少ない資金で大きな利益が狙える先物・オプション取引って何?
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