日経平均が波乱の展開です。7/8には、前日比638円95銭安と今年最大の下げ幅を記録し、終値は6/18以来の2万円大台割れになりました。続く7/9も売り先行となり、一時は19,000円割れも意識される水準まで下落しました。途中からは切り返す展開になり、日経平均は上昇して終わりましたが、不安定な状態が払しょくされたとは言い切れないのが現実です。
従来から懸念されていたギリシャ問題に加え、中国株式市場で株価が急落したことが大きな要因ですが、特に後者については、本土市場での売買停止銘柄が4割に迫るなど、市場運営そのものへの不信感も影響しているとみられ、その後遺症がしばらく残る可能性があります。
しかし日経平均は、多くの機関投資家が意識する2015/3期末の水準が19,206円であり、重要な下値支持ラインのひとつに到達したと考えられます。企業業績の拡大が続く限り、株価の上昇トレンドは崩れないと「ココがポイント」は予想しています。波乱の株式相場ではありますが、基本的には押し目買いスタンスが有効と考えています。
オプションの『ココがポイント!』
「中国株安」「ギリシャ危機」の織り込みが進捗 |
日経平均の動きが不安定になっている背景として、重要なのは、中国株安への不安とギリシャ危機であると考えられます。しかし、この2つの悪材料は、株式市場で次第に織り込みが進捗しつつあります。
【バブル的上昇前の水準まで下落した上海指数】
上海総合指数は、6/12に5,166.350ポイントの高値を付けた後に下落へと転じていましたが、7/8には3,421.525ポイントまで下落し、高値からの下落率は34%に達しました。中国経済の減速が鮮明となる中、緩和的金融政策や株価刺激策を好感する形で株価は急騰してきましたが、それが転機を迎えた形です。この日は、中国本土の証券取引所に上場する銘柄の43%にあたる1,249銘柄で売買停止になっていることが報道され、市場では中国政府当局の株価対策に対する不信感が強まる形になりました。しかし、図1にもあるように、上海総合指数が重要な節目に達し、2015年春以降のバブル的上昇部分が帳消しになったことは確かですので、今後は当局による株価対策が効いてくる可能性が強まりそうです。
【ギリシャ問題は他の南欧諸国には波及しない公算が大きい】
7/5の国民投票でギリシャ国民がEUの緊縮財政に反対し、それに対して債権国が態度を硬化させたことで、ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性が大きくなったと指摘されています。
しかし、ギリシャの対外債務の8割程度が公的債務で、仮にギリシャが名実ともにデフォルト(債務不履行)しても、民間部門で信用不安が広がる可能性は低いと考えられます。また、図2にもあるように、ギリシャ危機が伝搬すると心配されているイタリア、スペイン、ポルトガルの経常収支が黒字化していることは、非常に重要な改善点です。これは、南欧諸国における国内部門の赤字が外からの資金でカバーされていることを示すからで、本質的には経済危機に襲われる状態にはないと言えます。
それを反映するかのように、南欧3ヵ国の10年国債利回りは「危機水準」といわれる7%を大きく下回っています。危機が南欧諸国へ伝搬するリスクが低い以上、ギリシャ問題はギリシャ固有の特殊な問題として、市場は理解しはじめると考えられます。
なお、当面は7/12にユーロ圏首脳会合でギリシャの財政再建策と同国支援策が話し合われる予定です。この日はまたも日曜日であり、週明けの東京市場が三たび、この問題を主要国の中では真っ先に織り込む役回りを演じることになり、その点は注意が必要です。
図1:上海総合指数(日足)と各種移動平均
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2015/7/8現在。
図2:黒字化している南欧3ヵ国の経常収支(対GDP・%)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。四半期単位。Qは「四半期」を意味している。
企業業績の拡大を評価し、引き続き押し目買いスタンスで |
東京株式市場では7月下旬から、いよいよ決算発表が始まります。2015年4〜6月期決算では大幅増益の銘柄が増えると期待されます。市場の関心は「ギリシャ」から「企業業績」へ移ると考えられます。
輸出企業の多くは、ドル・円相場について、1ドル115円を前提為替レートとしていますが、2015年4〜6月の為替レートは実際には平均121円程度で推移したため、その分、利益は上振れしやすくなっています。6月調査の日銀短観では、3ヵ月前に想定していたよりも、景況感が改善している企業が多数派でした。図3でも示したように、企業業績の方向感を示唆する日経平均の予想EPSは引き続き上昇傾向になっています。
企業業績の拡大が続く限り、株価の上昇トレンドは崩れないと「ココがポイント」は考えています。波乱の株式相場ではありますが、基本的には押し目買いスタンスが有効と考えています。
そうした中、7/9には日経平均が一時19,115円まで下落しました。この水準は、2015/3末の日経平均終値19,206円(2015/3・月間の終値平均19,197円)を下回る水準で、前年度末の株価水準として多くの機関投資家が意識する水準でもあります。日経平均は、重要な下値支持ラインまで下げてきたと考えることができます。
図3:日経平均と予想EPSの推移
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
【ココがポイント!】オプション市場は「8月限」相場に〜乱高下の中、コールの押し目買いにチャンスも |
こうした中、日経平均オプション市場は「2015年7月限」が7/10にSQ算出日を迎え、取引の中心は「2015年8月限」(SQ算出日は8/14)に移行します。
図4にもあるように、日経平均株価が波乱となったことで、コール・プレミアムの変動も非常に大きくなっています。2015年8月限・行使価格20,000円のコール・オプションは8日に高値730円を付けていましたが、9日には一時265円まで下げています。この日は、途中から日経平均が切り返したため、15時15分に同コール・オプションは470円まで値を戻すなど、荒れた展開になっています。
これまで述べてきたように、「ギリシャ危機」や「中国株安」を背景とする相場波乱が一巡し、日経平均が再び20,000円大台を回復してくるという相場観を持つ場合は、コール・オプションの買いを狙うことになります。ただ、相場が大きく変動しているため、タイミングが非常に重要です。オプション市場での取引には臨機応変に対処したいところです。
図4:日経平均コール・オプション
(2015年8月限・権利行使価格20,000円)の推移
- ※日経平均データをもとに、SBI証券が作成。データは2015/7/9の取引時間中。
図5:日経平均コール・オプション(2015年8月限・権利行使価格20,000円)を375円(7/8終値)で買った場合の8/14・SQにおける想定損益図
- ※日経平均オプション・データをもとに、SBI証券が作成。諸コストは勘案していない。また、SQ前に売却した場合の損益は、この通りになるとは限らない。