オプションSQを迎えるにあたっての雇用統計の意味
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東京株式市場では12月3日、日経平均株価終値が、15,749円66銭となりました。終値ベースとしては、11月28日に付けた15,727円12銭を超え、年初来高値更新となりました。外為市場でドル・円が103円台と、5月以来の円安・ドル高水準となり、ユーロ・円でも140円に迫る円安・ユーロ高となったことが要因です。しかし、12月4日は一転波乱となりました。特に大きな材料があった訳ではないのですが、3日の米国株が下落し、シカゴ日経平均が下げたことで、4日の日経平均は一時400円以上も下げる場面がありました。
こうした中、オプション市場ではプレミアムが大きく変動しました。12月2日に195円で終わっていた日経平均2013年12月限コール・オプション/権利行使価格15,750円のプレミアムは、2日に195円でしたが、3日には一時270円まで上昇、しかし、4日には一時75円と急落しました。
現物株市場の波乱を受け、オプション市場も波乱の色が濃くなっているので注意が必要です。そもそも、3日の米国市場が下げた背景には、6日(金)に、米国で雇用統計の発表があり、仮にそこで強い数字が出ると、金融緩和継続期待が後退し、株価が下がる可能性があるとの見方が台頭したことが要因でした。ただ、これはあくまでもひとつの見方であり、そもそも、雇用統計の数字を事前に正確に予想することは極めて困難です。市場には、雇用統計で弱い数字が出た場合を想定しつつ、行動していた向きもあったと思いますが、そうした投資家の声が反映されなかっただけかもしれません。この件に関して、確かに言えることは「雇用統計の発表が接近していたこと」だけであり、結果如何にかかわらず、イベント・リスクを回避したい動きが出たと考えるのが普通だと思われます。
雇用統計は、外為市場のみならず、株式市場や債券市場、デリバティブ市場等に、最も大きな影響を与える重要な経済指標と言っても過言ではありません。その理由は、たいていの場合、月替わり後最初の金曜日に発表され、前月の新鮮な米国の経済状況を示してくれるためというのがひとつです。加えて、この指標は、市場の予想を大きく覆すことが多い、予想の難しい指標だからです。そして、多くの場合、この経済指標はオプションSQの直前にやってくるのです。従って、オプション市場へ参加して日の浅い投資家の方は特に、米雇用統計をポジションを抱えたまま通過することのリスクを認識された方が良いように思われます。
図1:日経平均株価(日足)と予想PER(日足)
弊社WEBページのチャート機能をもとにSBI証券が作成。
波乱があっても損失を限定したい場合のポジションは?(プロテクティブ・プット)
結果が予想しにくく、波乱が想定されるようなイベントを手前に、最も効果的なリスク回避手段は何でしょうか。それは、ポジションを持たないことです。古来「休むも相場」という格言もありますが、先行きが読めなくなったり、読みがはずれるようになった場合は、相場から距離を置くことも大切です。
しかし、投資家によっては、ポジションを維持せざるをえない場合もあるかもしれません。また、先行きの読みについては自信があるものの、一定以上の損失は避けたいという場合もあるでしょう。このような時に、有効なのが現物株の買い(先物やETFの買いも同様)にプットの買いを組み合わせた「プロテクティブ・プット」と呼ばれる合成ポジションです。図2の太線で示しているのが、その合成ポジションの損益です。現物株の損益分岐点が日経平均で15,375円であると仮定した場合の「現物株の買い」と、日経平均2013年12月限プット・オプション権利行使価格15,375円を175円で買った「プットの買い」を組み合わせています。
オプション市場について一定の知識のある投資家でしたら、この合成ポジションが「コール・オプション」の損益図と同じであることがおわかり頂けると思います。従って、現在、ポジションがゼロであり、ここから、損失限定しながらの強気ポジションを取るなら、コールの買いで対応できる訳です。従って、このポジションが必要になるのは、何らかの事情で買いポジションを抱えている投資家であると考えられます。
「プロテクティブ・プット」におけるプットの買いは、損失を限定するための「保険料」のようなものと考えられます。この場合は、「保険料」をいくらまで支払うかという問題もあります。また、SQ接近に伴い、オプションの時間的価値が減っていくことも考慮の対象になります。この辺の考え方は、また別の機会にしたいと思います。
図2:「現物株の買い」と「プットの買い」を組み合わせたポシション(プロテクティブ・プット)
SBI証券投資調査部が作成。あくまでも2013年12月4日データを用いたシミュレーションであり、参考データとしてご理解ください。また、オプションのプレミアムは、SQ前では、需給関係や取引最終日までの日数等により、理論どおり価格が形成されないリスクがありますのでご注意ください。なお、通常取引での実際の損益は1単位当たりこの1000倍になります。