波乱相場をどう乗り切る?〜日経平均の下値メドをチェック
年末連騰・年明け波乱と物色のひずみ
東京株式市場は、11月8日及び12月6日に発表された米雇用統計が強い内容であったことを受け、米株高・円安基調となったこともあり、年末にかけて上昇基調となりました。しかし、2014年になってからは一転、下落基調となっています。1月27日に取引時間中としては、11月15日以来の15,000円の大台を割り込みました。
日経平均株価が下げた理由は以下の三点かと思われます。
(1)年末の上昇過程で、物色が日経平均株価高寄与度銘柄に偏ったため反動が表れやすくなっていたこと
(2)1月10日(米国時間)発表の米雇用統計(12月分)で雇用者数が事前の市場コンセンサスを大きく下回ったこと
(3)新興国経済への不透明感が強まり、多くの新興国通貨が下落したためリスク回避の円買いから円高になったこと
なお、テクニカル的には、短期的な相場の強弱を分けるとされる25日移動平均を1月23日に割り込み、27日には、中期的な強弱を分けるとされる13週移動平均を割り込む展開となりました。これら主要移動平均を割り込んだことで、損失確定の売りも増え、株価下落を加速させたとみられます。
今後、株価下落は続くのでしょうか。それとも、近いうちに下げ止まるのでしょうか。それを探るには、上記した株価下落の要因をひとつひとつ吟味してみる必要があります。
図1:日経平均株価(日足)と主要移動平均線(日足)
Bloombergデータ、各種報道等をもとにSBI証券が作成。吹き出し中の日付は現地時間。
NT倍率は2013年以降の平均値まで低下/米雇用悪化は一時的の可能性も
図2は、2013年1月以降のNT倍率[日経平均株価/TOPIX(東証株価指数)]の推移を示したものです。11月上旬までは12倍をはさんだ水準で推移してきましたが、そこから年末にかけては急上昇となりました。
以前、ご説明したように、日経平均は簡単に言えば「ファーストリテイリングやファナックなど、値がさの採用銘柄の影響を強めに受けやすい単純平均型指数」であり、TOPIXは「トヨタやメガバンクなどの影響を強めに受けやすい時価総額加重平均型指数」です。年末は、ファーストリテイリングやファナックなどが偏って買い上げられた結果、NT倍率は急上昇し、12月25日には12.73倍の高値を付けました。
しかしその後は、これらの値がさ株が急落し、他の銘柄よりも相対的に下げが厳しくなった結果、NT倍率は12.2倍(1月27日現在)まで低下しています。ちなみに、2013年1月4日以降、2014年1月27日まで、日々のNT倍率終値の単純平均は12.05倍と計算されます。NT倍率は少なくとも異常値から平常値へ回帰しつつあるとみられ、それにつれ、値がさ株主導の下げも緩やかになると予想されます。
なお、米雇用統計については、この冬の米国を襲っている20年ぶりの寒波の影響が指摘されています。2013年12月分の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比(季節調整済み)20万人の増加予想に対し、7万4千人の増加にとどまりましたが、悪天候で就労できなかった27万3千人を考慮しなければなりません。米国の悪天候は1月になっても続いているので、1月分の雇用統計まで影響が出る可能性はあります。とはいえ、悪天候による雇用への打撃は一時的と考えるのが普通であり、米国経済にかげりが生じてきたと考えるのは時期尚早とみられます。
このように前項で述べた株価下落の要因(1)と(2)については、もともと過度な懸念は不要であり、むしろ、これらが要因になって下げた分については、戻す可能性が大きいのではないでしょうか。
図2:NT倍率・日足
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。NT倍率=日経平均/TOPIX(東証株価指数)
日経平均の当面の下値メドは?〜14,600〜14,800円は重要な下値支持ライン
株価下落をもたらした3番目の要因である新興国経済・通貨への不透明感については、確かに、かつては一様に将来を期待されていた新興国ですが、随分とほころびが見えてきたことは事実です。新興国の多くで成長率がこれからも低下し、投資の魅力が低下する可能性は十分あるでしょう。
もっとも、発展途上の新興国にとり、海外から投資をあおぐ過程は、必ずいつかは歩まねばならないとみられます。従って、経常収支の赤字はそれ自体が問題なのではなく、コントロールできるかどうかが重要なのだとみられます。その意味で、新興国の体力は以前に比べれば、概して強化されていると考えられます。中国PMIの1ヵ月だけの数字やアルゼンチン1カ国の為替不介入だけで、すべての新興国をネガティブにみるのは、正しいとは限りません。
今月に入り、IMF(国際通貨基金)から発表された改訂・世界経済見通しでは、世界のGDPは日米欧の先進国で上方修正されています。先進国経済が回復し、仮に新興国通貨が一定の調整をすれば、むしろ、新興国は輸出の増加という経路を経て回復する可能性が強まるとみられます。
このように、今回株価下落をもたらした三つの要因については、過度の懸念は不要と見られます。従って、テクニカル的に一定の株価調整を経て、日経平均株価は反発に転じると考えられます。ちなみに、(1)夏以降、週足の26週移動平均前後まで下げると概ね下げ止まる傾向があり、同移動平均に相当する130日移動平均14,695円(1月27日現在)は重要な下値支持ライン、(2)一般的に25日移動平均から7〜8%マイナスに乖離した水準が下値メドとの見方がありその水準に相当する14,656円(同)は重要な下値支持ライン、(3)日経平均の高値16,291円からちょうど10%下げた水準が14,662円(高値から10%下落が「自律調整」の範囲内との考え方がある)は重要な下値支持ラインであると考えられます。
また、一目均衡表・日足のクモ加減は1月27日現在14,800円となっています。これらから、14,600〜14,800円近辺が日経平均の重要な下値支持ラインとみられます。仮にそこを割り込んだ場合は、200日移動平均14,368円(1月27日)が重要な下値支持ラインと考えられます。
図3:日経平均と主要移動平均
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。