ブルベアファンドが日経平均株価の動きを加速!?
日経平均概観
日経平均株価は、参議院議員選挙前の7月19日につけた14,953.29円を戻り高値に反落し、その後下値支持線(6月13日安値と7月30日安値を結ぶライン)と上値抵抗線(5月23日高値と7月19日高値を結ぶライン)を上下限とする三角保ち合いを形成していました。しかし、先週末8月2日から、ドル・円相場での急速な円高・ドル安を受け、下値支持線を割り込み始めてきています。また、現時点では13,500円-13,600円が下値支持線として機能しているように見えます。
この水準から更なる下げがあると、今後は今まで下値支持線として機能してきた13,500円-13,600円が、逆にかなり重い上値抵抗線になる可能性が高まりそうです。
安倍首相が、8月16日−21日に夏休みとなっていることに加え、22日からブルネイでのTPP(環太平洋経済連携協定)交渉が始まることから、8月22日前後から、アベノミクス第三の矢の成長戦略への思惑などで上に動くか、逆に失望売りとなって下に抜けるか、大きくトレンドが出てきそうです。
図表1 日経平均株価日足チャート
当社HPより、SBI証券投資調査部が作成。データは2013年8月9日現在。
今週の急所 ブルベアファンドが日経平均株価の動きを加速!?
8月12日〜16日は、お盆の週です。早々とサマーバケーションに入っていた外国人投資家に加えて、国内機関投資家も会社としての休みはなくても、個人的な夏休みをとる担当者も多く、益々市場参加者が細ってくると想定されます。市場参加者が少なくなると、流動性が乏しくなり少しの注文で値動きが激しくなる可能性が高くなります。
直近、日経平均株価の日々の値動きが荒っぽい動きとなることが、非常に多くなっています。
図表2は、日経平均株価の日々の変動率(*)の5日移動平均グラフです。
*変動率=(前日終値-当日終値)÷当日終値
図表2:日経平均株価の日々の変動率(*)の5日移動平均グラフ
Bloombergデータより、SBI証券投資調査部が作成。
アベノミクス相場の始まり(2012年11月)とともに、大きく上昇してきた変動率は、5月23日以降の暴落途中の6月5日にピークの3.33%をつけたあとは、反落し7月17日には0.35%となりました。その後、また変動率が上昇し、8月5日〜9日の週は2%台での推移となっています。
特に後場、その中でも14時以降に大きく値動きが加速するようなパターンが多いように感じられ、ここ3週間の14時以降の値動きを調査したものが、図表3です。週間の14時以降の値幅の絶対値の平均値では、7月22日週が約48円、7月29日週が89円、8月5日週が128円と大きくなっており、高値引け・安値引けとなるケースも多かったようです。
図表3:直近3週間の日経平均株価 14時-15時の変動幅
Bloombergデータより、SBI証券投資調査部が作成。
このように、日経平均株価が大きく動いた件については、メディアを中心に、多くの市況解説で単純に、「先物主導の売買」といった説明がよく見られ、一般的にはそれで、理解されてしまっているものと見受けられます。しかし「では、先物はなぜ売買されたのか」といった点まで踏み込んで説明されることは、少ないように思われます。
日経平均株価の値動きが14時過ぎに加速している原因として、ひとつに、ブルベアファンドの存在が考えられます。いわゆる日経平均株価のインデックスファンドの場合、設定金額分の日経平均株価採用銘柄を現物株式で買い付け・保有しているだけです。資金の流出入や銘柄入れ替えがなければ、基本的には日々の売買はありません。しかし、ダブルブル・ベア型、トリプルブル・ベア型などのレバレッジを効かせた投信の場合、資金の流出入や銘柄入れ替えがなくても、日々売買が行われます。
例えば、ダブルブル・ベア型投信の場合、日経平均株価が1%上昇した場合、投信の基準価格が倍の2%上がるように設計されています。日々の値動きに連動させますので、日経平均が上がった日は買い、下がった日は売りといったように、先物のポジション調整が毎日行われているのです。投資信託の場合、終値ベースで評価されますので、先物の引け(15時15分)間際まで日経平均先物の価格をウォッチして、引け間際に上がっていれば買い、下がっていれば売りと今までの勢いを加速する動きでの注文を発注することになります。
今までもブルベアファンドは存在していましたので、この動きは今までもあったのですが、夏枯れ相場となり全体の流動性が落ちており、8月9日まではSQ(特別清算指数)を控えた思惑などから、14時過ぎに相場の流れを加速する動きが強まったようです。
先物・OPを取引される方は、このブルベアファンドの存在を頭の片隅において取引すると良いでしょう。加速する値動きの前に方向性を読む投資手法も考えられますし、逆に機械的な売買によって、買われすぎ、売られすぎのリバウンドを狙う投資手法もあります。
今週以後、14時過ぎに相場の流れを加速する動きとならなかった場合、次回のSQ算出日である9月6日の前に同様な動きが復活する可能性があります。
今後注目のイベント
・8月15日(木)終戦記念日
靖国参拝問題で、中国との問題発生の可能性(現時点で参拝を表明してる主要閣僚はなし)
→突発的な大幅下落の可能性
・8月16日(金)〜21(水) 安倍首相夏休み
→材料なしで、小動きの可能性
・8月22日(木) 第19回TPP 交渉会合(ブルネイ 〜30 日)
→ アベノミクス成長戦略への思惑で上昇の可能性