東京株式市場が保ち合い放れの様相です。日経平均株価の8/25(火)の高値は、8/14(金)の取引時間中高値を上回り、2/21(金)以来約半年ぶりの高値水準を回復してきました。米長期金利は低水準を維持し、外為市場での円高・ドル安も継続し、グロース株をけん引役とする米国株の上昇シナリオも継続する形になりました。問題は今後のメインシナリオです。株価は上昇を続けるでしょうか、反転して下落してしまうのでしょうか。
感染状況の動向を示す指数からも、日本の新型コロナウイルスの感染状況は総合的に改善に向かっていると言えそうであり、日経平均株価は保ち合い放れの局面とみた方が良さそうです。特に海外投資家が市場に帰ってくるとみられる9/7(月)のレイバーデー以降、上昇が加速する可能性は十分あると思われます。
東京株式市場が保ち合い放れの様相です。日経平均株価は8月第1週(8/3〜8/7)に前週末比619円94銭(2.9%)高、第2週(8/11〜8/14)に同959.42円(4.3%)高と続伸した後、第3週(8/17〜21)は369円06銭(1.6%)安と反落していましたが、8/25(火)の高値は8/14(金)の取引時間中高値を上回り、2/21(金)以来約半年ぶりの高値水準を回復してきました。東証1部の売買代金が第3週以降は2兆円を下回り、様子見気分が強いという印象が強かっただけに、意外感もありました。
過剰流動性を背景に世界的な株高が東京株式市場にも追い風になる構図に変化はないとみられます。米国市場では、NYダウが7月に2.4%上昇した後、8月は第3週末(8/21)までで5.7%上昇、ナスダックは7月に7.0%上昇した後、8月は第3週末までで5.3%上昇となっています。8月は景気・企業業績の回復が期待され、NYダウ構成銘柄に象徴される景気敏感株が出遅れを修正する流れが先行しましたが、第3週には再び成長株が買い直される状況になっています。
東証1部の売買代金縮小は、例年この時期にみられる傾向であり、もともと株価上昇の勢いが失われたことを意味する訳ではなかったと考えられます。東京市場では、8/14(金)までは決算発表が行われ、多くの市場参加者が休みを取りにくいこと、米国では9月第1月曜日のレイバーデーまでが夏休みの季節と考えられていること等が影響していると思われます。2019年は8/14(水)〜8/29(木)に12営業日連続で東証1部売買代金が2兆円割れとなり、2018年は8/17(金)〜8/27(月)に7営業日連続、2017年は8/21(月)〜8/29(火)にやはり7営業日連続で売買代金2兆円割れとなっています。
米国ではFOMC(米連邦公開市場委員会)メンバーの全員が、2022年までは利上げを想定しないとしており、金融緩和の長期化がコンセンサスになり、それが株式市場の過剰流動性を支えているとの見方が有力です。そうした中、FRB(米連邦準備制度理事会)が長期金利に目標値を設定し、国債買い入れと短期金利のフォワードガイダンスを組み合わせるYCC(イールドカーブ・コントロール)に踏み込むとの期待もありましたが、8/19(水)に発表されたFOMC(7/28〜7/29会合分)議事要旨の内容は、その期待感を後退させるものになりました。
それでも、米長期金利は低水準を維持し、外為市場での円高・ドル安も継続し、グロース株をけん引役とする米国株の上昇シナリオも継続する形になりました。8/25(火)の日経平均株価の急騰も基本的には、堅調な米国株が追い風とみられます。問題は今後のメインシナリオです。株価は上昇を続けるでしょうか、反転して下落してしまうでしょうか。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/8/17〜2020/8/25)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
8/17(月) | 23096.75 | -192.61 | GDPが戦後最大の落ち込み。米中協議の無期延期も懸念に。売買代金が縮小。 |
8/18(火) | 23,051.08 | -45.67 | 様子見気分が続く。円高も逆風か。売買代金は連日の2兆円割れ。 |
8/19(水) | 23,110.61 | +59.53 | 反発も、売買代金3日連続2兆円割れ。ファーウェイ排除で情報通信企業に期待高まる。 |
8/20(木) | 22,880.62 | -229.99 | FOMC議事録要旨が期待外れ。米中対立激化を警戒しTDKなど電子部品が安い。 |
8/21(金) | 22,920.30 | +39.68 | 米株高を追い風に小幅反発。マザーズが2年ぶり高値水準を回復。 |
8/24(月) | 22,985.51 | +65.21 | 東証1部売買代金が1.5兆円台に縮小。任天堂などゲーム株が堅調。 |
8/25(火) | 23,296.77 | +311.26 | アップル株上昇や新型コロナ血漿療法への期待で前日のNYダウが3営業日続伸。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/8/25取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/8/24現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/8/25取引時間中。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
8/25(火) | 米国 | 6月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 前回(20都市)は前年同月比3.69%上昇 |
米国 | 8月CB消費者信頼感指数 | ||
米国 | 6月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | 7月新築住宅販売件数(前月比) | 前回13.8%増から今回(市場コンセンサス)は2.5%減の予想 | |
ドイツ | 8月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート | |
8/26(水) | 日本 | 7月企業向けサービス価格指数 | |
★決算発表(1件) | リクルートHD | ||
米国 | 7月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
8/27(木) | 日本 | 6月全産業活動指数 | |
★決算発表(1件) | 凸版 | ||
米国 | 4-6月期GDP改定値 | ||
米国 | 7月中古住宅販売仮契約 | ||
米国 | トランプ大統領、共和党党大会で大統領候補指名受諾演説 | ||
8/28(金) | 日本 | POS小売販売額指標 | |
米国 | 7月個人所得・個人支出 | ||
8/31(月) | 日本 | 7月商業動態統計 | |
日本 | 7月鉱工業生産 | ||
中国 | 8月製造業PMI | ||
インド | 4-6月期GDP | ||
9/1(火) | 日本 | 7月失業率・有効求人倍率 | 前回は前者2.8%、後者は1.11倍 |
日本 | 4-6月期法人企業統計 | ||
日本 | 8月自動車販売台数 | ||
EU | ユーロ圏7月失業率 | ||
米国 | 8月ISM製造業景況指数 | 前回は54.2 | |
米国 | 7月建設支出 | ||
9/2(水) | 日本 | 8月マネタリーベース | |
米国 | 7月製造業受注 | ||
米国 | ベージュブック | ||
9/3(木) | 米国 | 7月貿易収支 | |
米国 | 8月ISM非製造業景況指数 | 新規受注や雇用等の個別指標にも注意 | |
9/4(金) | 米国 | 8月ADP雇用統計 |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | 2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) | 1/21(木)、3/19(金)、4/27(火)、6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) | 1/27(水)、3/17(水)、4/28(水)、6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) | 1/21(木)、3/11(木)、4/22(木)、7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
今後の株式相場を予想するにあたり、重要なのはやはり新型コロナウイルスの感染状況です。世界の感染者数は8/24(月)現在、2,328万人に達し、死亡者数は累計で80万人超となっています。世界最大の感染国は米国で感染者数は570万人弱、死亡者数は17.6万人超、次いでブラジルの感染者数は360万人超、死亡者数11.4万人超、インドの感染者数は304万人超、死亡者数は5.6万人超(いずれも暫定的な数字で後に変化する公算大)となっています。
我が国の新規感染者数(日次)は4/10(金)に708人まで増えた後、5月には2桁前半まで減速していましたが、6月下旬頃から再び増加し始め、8/8(土)には1,601人(発表時)まで増加し、増加記録を更新しています。メディアでは日々、「新たな感染者数」としてこの数字を中心に報道するのが普通になっています。このため、多くの人々の理解では、現在は感染第2波の大きな波が来ており、悲観的状態が続いていることになります。
無論、我が国は翌年に延期された東京五輪を開催に導くべく、新型コロナウイルスの感染については根本的に感染拡大の芽を摘む必要があるので油断はできないと思われます。韓国や欧州をみても、新型コロナウイルスは感染が終息するかと思えば再び再拡大するしぶとい面があり、治療や予防策を徹底的に推進すべきであると考えられます。しかし、それでも新型コロナウイルスの国内感染は、総合的にピークアウトの方向であり、株式市場は「ウイズ・コロナ」から「アフター・コロナ」へ主要関心事を転換させるタイミングにきているのかもしれません。
ニュースを見る限り、「新たな感染者数」が数百人ないし1千人を超えるペースで発生しており、病院のベッドがどんどん埋まっていく姿が想像されても不思議ではありません。特に最近は離島のケース等が報道され、場所により医療崩壊が迫っているとの印象を受けるかもしれません。ただ、細かく報道されていませんが8月中旬以降、日に1千人以上の退院・療養解除がなされ、新型コロナウイルスで入院している人は8/10(月)の約13,700人台から8/23(日)には11,700人まで減っています。
相変わらずPCR検査数が抑えられていると疑う向きもあると思いますが、8月のPCR検査人数は1日平均22,000人弱で、1万人にも遠く及ばなかった6月以前と比べると増えています。また、感染状況の動向を示す“実効再生産数”は7月下旬以降、拡大・縮小の境目となる1を下回っています。こうした状況から、日本の新型コロナウイルスの感染状況は総合的に改善に向かっていると言えそうです。
日経平均株価は8/25(火)に8/14(金)の高値水準を上回り、2/21(金)以来の高値を回復してきましたが、ここは素直に保ち合い放れとみた方が良さそうで、特に海外投資家が市場に帰ってくるとみられる9/7(月)のレイバーデー以降、上昇が加速する可能性は十分あると思われます。
図4 新型コロナウイルスの新規感染者数、要入院治療者数、退院・療養解除者数
- ※厚生労働省データをもとにSBI証券が作成。