2月27日終値と週開け2日始値
出所:SBIリクイディティ・マーケット
2/28の米・イスラエル両軍によるイランへの軍事攻撃を受け、3/2の市場は典型的なリスク回避の反応となりました。日経平均先物が大幅安となったことを背景に午前9時過ぎに156円80銭へ円安が進行。
一方、日経平均株価は午前9時29分の1,564円安から10時13分には485円安まで下げ幅を縮小したことから円安進行も一服。その後、日経平均株価は前場終盤に向けて再び下げ幅を拡大しているものの156円台前半から半ばでの取引を続けています。
もっとも、安全資産の中でも強弱は分かれ、スイスフランの堅調さが際立つ反応となっています。
なぜ、スイスフランは地政学リスクに強いか?
スイスは高付加価値産業による高い労働生産性を有し、水力・原子力中心の電源構成によりエネルギー価格高騰の影響を受けにくい経済構造を持っています。
そのため輸入インフレが相対的に小さく、実質金利もゼロ近辺で安定しています。低インフレ体質・外部依存度の低さ・財政規律という構造的要因が、地政学リスク局面での資金流入を支えています。今回のフラン上昇は短期的なポジション調整ではなく、構造的選好の表れと位置付けられています。
軍事攻撃は短期間終結か、長期戦か?
2025年6月の米国のイランに対する攻撃では、核関連施設や軍事拠点が標的となりましたが、イランの軍事能力を決定的に破壊したとの評価には至っていませんでした。一部観測によればその後、防御強化や再建が進められてきたとされ、戦闘能力の全容は依然不透明な状況にあります。仮にイランが弾道ミサイルや無人機戦力を温存している場合、攻撃の応酬が長期化する可能性も排除できないとされます。そのため、報復の連鎖がホルムズ海峡の緊張を高め、原油供給に長期的な制約をもたらす事態が市場の最大の懸念材料となります。
米国とイスラエルの空爆によって最高指導者ハメネイ師が死亡しましたが、イランにとっては、どれだけの代償を払っても体制存続が最優先とみられています。
さらに、イスラム原理主義体制には安定した支持基盤があるとされ、イラン国内で反米結束が強まれば、トランプ政権の思惑に反して双方による報復の連鎖がどこまで拡大するか、現状では先行きに大きな不透明感を残すこととなっています。
円買いに反応せず
ホルムズ海峡航行中のタンカーはこの海域から逃れるなど、既に海峡は実質的な閉鎖に追い込まれています。日本は原油の約9割を中東に依存し、原油高は交易条件悪化を通じて実質所得の圧迫につながります。また、穀物をはじめ食料自給率も低く、実質金利は依然マイナス圏にあり、インフレ耐性は限定的とされ、前述したスイスとの対比は明確です。
そのため、地政学リスクが高まる局面でも円買いは構造的に持続し難いとされ、原油高が長期化する事態となれば、むしろ円安圧力が高まる可能性もあります。また、企業業績の下振れや景気への影響に配慮し、日銀の利上げ再開観測も後退すると思われるだけに、今回のイラン攻撃への影響が早期に沈静化することが望まれます。
FRBの金融政策は?
今週米国では3月2日発表の2月ISM製造業景気指数をはじめ、3月6日には2月雇用統計や1月小売売上高など重要指標が発表されます。小売売上高に関しては、寒波や物価高の影響が消費を圧迫する可能性があり、先行きについても中東情勢悪化がNY株式市場の軟化を通じて消費マインドを下押しするリスクも懸念されます。
出所:SBIリクイディティ・マーケット
今回の米軍によるイラン攻撃、長期化が避けられない事態となれば、世界的な株安や景気下振れ懸念を背景にFRBの緩和圧力につながる可能性があります。3月17、18日のFOMCに向けて大きな動きに至らなければFRBは先行き不確実性を理由に慎重姿勢を強める展開が基本路線と見込まれます。
まとめ
今回の軍事攻撃は単発の地政学リスクに留まらず、原油価格を軸に世界経済へ波及するリスクを孕むと思われます。そのため、安全資産の選別は「地政学」より、「交易条件と実質金利構造」の差に焦点が移行するか注目されます。こうした中、スイスフランは構造的優位を背景に選好されやすい一方、円はエネルギー依存度の高さという制約を抱えています。それだけに、市場の焦点は軍事衝突そのもの以上に、長期化による経済波及リスクを注視すべきと考えられます。
