大規模減税案
28日夜の米議会上院で、トランプ大統領が推進する4.5兆ドル規模の減税を盛り込んだ税制・歳出法案の手続きを前進させる動議に対する採決が行われ、多数派の共和党議員の中に2名の議員が反対票を投じる造反はあったものの、51対49の僅差で可決されました。こうした僅差の結果から、7月4日までの可決・成立を目指すトランプ大統領の減税案について上院、下院での採決の行方が注目されます。
新たな修正案では前回の上院案よりも手厚い州税・地方税控除を2029年にかけて続けるほか、州のメディケイド(低所得者向け医療保険)予算拡大に使われたプロバイダー税の上限引き下げまでの期間を延長。さらに、電気自動車や太陽光・風力発電向けの税額控除を当初の上院案より早期に打ち切ることが盛り込まれ、再生可能エネルギー事業で特定の外国製部品を使用した場合は、新たな物品税を課すこととなりました。ちなみに下院の減税案は以下の通りとなっています。

出所:SBIリクイディティ・マーケット
上院の減税案は、下院案の内容とは大筋で変わっていないものの下院案では財政赤字が10年間で2.4兆ドル増加する見通しでしたが、超党派組織「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」が試算した上院案では、さらなる赤字拡大につながる可能性があるとされます。下院では先月可決された法案を僅差で可決していますが、仮に上院で可決された場合でも下院で自動的に承認されるわけではないことから、上院・共和党のジョン・スーン院内総務は、下院に差し戻して賛否を問い、トランプ氏が設定した7月4日の期限までに署名する段取りに間に合うよう、上院での採決を急ぎたい意向を明らかにしており、7月4日までの動きが注目されます。
参議院選挙告示(7月3日)

出所:SBIリクイディティ・マーケット
7月20日投開票の参議院選挙が3日に告示され世論調査が注目されます。現状、与党が過半数(124)を上回る140議席を獲得していますが、今回の改選(自民52/公明14)で両党合わせて50議席を上回る議席を獲得できるか勝敗ラインとして注目されます。
争点は物価高対策や社会保障で自民・公明が現金給付、立憲民主や維新が食料品の消費税をゼロ、国民と共産党が消費税を一律5%に引き下げるとしたほか、れいわが消費税廃止を公約に掲げています。いずれにしても与党が過半数われとなれば自民党内から石破首相の退陣論が高まる可能性のほか、自民・公明に新たな党を加えた連立の枠組みに変化が見られるか、野党を中心に連立政権の動きが加速するか、政局次第では日銀の金融政策に影響が及ぶことも想定されるだけに世論調査を含めた動向と合わせて注目されます。
米6月雇用統計(3日)/JOLTS求人件数(1日)/ADP全米雇用報告(2日)

出所:SBIリクイディティ・マーケット
失業率は3月から5月まで4.2%で横這いを続けているものの、小数点第2位までを含めると4ヵ月連続で悪化していますが、今回6月は4.3%へ一段と悪化すると見込まれています。7月1日発表の5月JOLTS求人件数の予想は730万件と予想され、既に発表されている5月失業者数(723.7万人)との差は6.3万件と4月(22.5万件)から大幅に低下、失業者数が求人件数を上回るとの懸念が高まるかもしれません。
そのほか、2日に発表される6月ADP全米雇用報告、民間部門の就業者数は3ヵ月連続で10万人を下回る9.0万人と見込まれ、予想通りなら4月以降の平均が6.2万人となり労働市場の先行きが懸念される結果となるかもしれません。

出所:SBIリクイディティ・マーケット
米6月ISM製造業(1日)/非製造業景気指数(3日)

出所:SBIリクイディティ・マーケット
1日に6月ISM製造業景気指数が発表され、好不況の節目とされる50.0を4ヵ月連続で下回るか、さらに3日に発表される非製造業景気指数は49.9と11ヵ月ぶりに好不況の節目を下回った4月から改善するか注目されます。
今週発表されるこれら一連の指標を受けて7月29-30日のFOMCを巡り、利下げ観測が高まればドル売りが加速する可能性もあるだけに結果と反応が注目されます。