
出所:RealClearPolitics
トランプ政権が発足して4ヵ月が経過しようとしていますが、トランプ大統領に対する支持率は3月13日に支持率が不支持率を下回り、4月29日には支持率45.1%に対し不支持率52.3%とその差が最大になりました。
2月1日にカナダとメキシコに対し25%の追加関税を表明し、1ヵ月の猶予を経て3月4日から発動したほか、中国からの輸入品に2月4日から10%、3月から20%の追加関税を決めたのに続き、3月12日には全ての国からの鉄鋼・アルミに25%の関税、4月3日からの輸入自動車全てに25%関税を発動。その後、4月9日の日本時間13時に「相互関税」を発動直後、10日午前2時過ぎに「相互関税」について10%超の上乗せ分に関して90日間発動停止を発表。一方、中国には相互関税34%に加え、新たな追加関税も含め、145%へ引き上げました。
トランプ大統領、強硬姿勢を緩和
こうした強硬策により、米経済の下振れ懸念が高まったほか、一部から中国が保有の米国債を売却するのではとの思惑とともに一時、ドル安/株安/債券安となる場面もあり、強硬姿勢が軟化しつつあります。5月8日には米英通商交渉で合意したのに続き、5月10-11日にスイス・ジュネーブで行われた米中閣僚級による通商交渉でそれぞれの関税を115%引き下げることで合意。(内24%は90日間の発動停止)そのほか、先週の中東歴訪ではサウジアラビアから6,000億ドル規模の取引や投資をまとめたほか、ロシアと関係の深いカタールからボーイングの210機の旅客機購入など2,435億ドルの取引を獲得。カタールとの交渉をまとめたことで、ロシアの孤立を深めたとの見方もあり、こうした動きがトランプ大統領とプーチン大統領との電話会談(19日、日本時間23時)につながったと見られ、ウクライナ和平を巡る停戦につながるか注目されます。同時にサウジアラビアやUAEに対し米国製AI半導体の獲得を認めるなど4月初めの強硬姿勢が緩和されつつあります。イェール大学予算研究所試算では、4月2日に発表した「相互関税」が当初の税率で発動された場合と中国との通商交渉での115%引き下げ後との比較では平均実効関税が22.5%から17.8%へ、さらに、GDP下押し圧力も-0.9%から-0.7%へそれぞれ緩和されると試算しています。
過度なドル安は国内インフレの上昇要因
20日から22日にカナダでG7財務相・中央銀行総裁会議が行われ、日米財務相会合も行われると見込まれており、ベッセント財務長官が加藤財務相に対し円安是正を求めるのではないかとの憶測がドル円下押しの一因となっています。
一方、先週14日に「米韓が為替について協議」と報じられましたが、その後、関係筋の話として「米国はドル安を模索していない」と一部から報じられています。

出所:SBIリクイディティ・マーケット
ドル円は昨年末の157円21銭(終値)から直近では144円81銭まで下落する場面が見られ、7.89%下落、また、ドルインデックスも108.49から100.65へ7.23%低下しており、試算ではこうしたドル安進行によって米国内物価指数を約0.35%押し上げる効果があるとされます。加えて、トランプ関税により物価を1.7%押し上げる影響があるとイェール大学予算研究所が試算しています。
トランプ大統領の支持率巻き返しのためには、関税策によるこれ以上の米経済下振れ懸念に歯止めを掛けること、大統領選挙中の公約に掲げていたウクライナ和平に向けた停戦の実現、さらにNY株式市場が大統領就任後の高値(NYダウ:44,882.13ドル/1月30日、ナスダック:20,056.25Pts/2月19日)、少なくとも発足前日17日の終値(NYダウ:43,487.83ドル/ナスダック:19,630.20Pts)を上回る水準を回復することが求められます。
ムーディーズによる米信用格付け格下げ/米露首脳電話会談
先週末16日のNY市場終盤にムーディーズが米信用格付けを「AAA」から「AA1」へ格下げしましたが、ベッセント財務長官はムーディーズは遅行指標として一蹴しましたが、米10年債利回りは先週末の4.48%台から週明けの先物市場で一時4.49%台へ上昇したほか、NY株式先物は下落しています。こうした動きについてトランプ大統領がムーディーズを批難する可能性があり、引き続き米債券/株式市場の反応が注目されます。さらに、日本時間、本日23時から米露首脳電話会談が行われ、トランプ大統領がプーチン大統領にウクライナ攻撃の停戦や、ウクライナ和平に向けて真摯に取り組むようウクライナとの協議進展を迫る可能性もあります。トランプ大統領がウクライナ停戦に向けて仲介の具体的成果を得られることがあればNY株式市場の上昇とともにドル買いに反応するかもしれません。
トランプ大統領はここからさらに10%程度の円高・ドル安を望んでいる可能性はある一方、ベッセント財務長官は、トランプ政権にとってインフレ懸念につながらない程度の緩やかなドル安(140円から150円程度か?)とともに日本に対して、あらためて 為替レートは市場において決定されること、過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に悪影響を及ぼすとの基本的事項をあらためて確認するに留まるのではないかと思われます。
週開けの東京市場で午前10時過ぎにドル円は144円81銭まで下落しましが、4月22日の安値(139円89銭)と5月6日の安値(142円36銭)を結んだラインと交わる日足・基準線(144円27銭)で下げ止まるか注目されます。