米国とイスラエルがイラン攻撃を始めてから2週間余りが過ぎた。原油輸出の要衝であるホルムズ海峡がイランによって事実上封鎖される状況が続く中、2月末に1バレル67ドル台だったWTI原油先物価格は日本時間3/16に1バレル100ドル近辺の高水準で推移している。原油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰は世界的なインフレ懸念を高めるものとして長期金利の上昇(債券売り)を引き起こし、金融政策においても米国では利下げ期待を後退させ、欧州では利上げ観測の台頭を招いている。中東への原油依存度が高いアジア諸国やカタールへの天然ガス依存度の高い欧州の通貨が売られ、今やエネルギー純輸出国となっている米国の相対的優位性を背景に米ドルが買われている。本来なら地政学リスクの発生時に買われやすい金(ゴールド)は、米ドル高・米長期金利上昇を受けてCOMEX先物価格が2月末の1オンス5300ドル近辺から日本時間3/16に1オンス5000ドル近辺まで下落している。
原油高がガソリン価格の高騰を通じて消費者の生活に影響を及ぼし始めてきた中、3/6発表の2月の米雇用統計では市場予想に反して非農業雇用者数が減少し、物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーションへの警戒感が浮上。米国の主要株価指数の3/13終値は、S&P500株価指数とナスダック総合指数が、1/28の年初来高値からそれぞれ5.3%、7.8%下落。そして、ダウ工業株30種平均株価が2/11の年初来高値から7.8%下落、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が2/25の年初来高値から10%下落している。将来の相場に対する投資家心理を反映する指数とされる「VIX指数」は3月の月初より、不安心理の境目で警戒ラインとされる20を上回り、かつ、下値を切り上げつつ推移している。「調整局面」からの押し目買いを想定するならば、通常は主要指数で15-20%程度の下落をみておくべきだろう。
4年前の2/24にロシアがウクライナに侵攻した時は、WTI原油先物価格が7月まで1バレル90ドル台〜130ドルの高水準で推移した後、年末に向けて1バレル70ドル台まで下落した。SOX指数は3月高値から9月安値まで約43%下落し、S&P500株価指数は3月高値から10月安値まで約24%下落し、その後でそれぞれ反転上昇した。その間、VIX指数は不安心理を反映する水準とされる20〜35のレンジ内を往復していた。当時は急激なインフレに対して米FRB(連邦準備理事会)が一貫してタカ派の金融政策を実施していたという背景があるものの、紛争勃発後の初動は類似点が多いように見受けられる。
当時との相違点として、「プライベート・クレジット」に関連したファンドで投資家からの解約請求に応じきれず、解約を制限する動きが相次いでいる。流動性確保のため幅広いアセットの売却に繋がりやすい点は警戒が必要だろう。(笹木)