2026-06-09 09:10:53

トランプ関税、イラン情勢、AIがもたらす負の側面

2026/2/25

提供:フィリップ証券株式会社

リサーチ部:笹木 和弘

トランプ関税、イラン情勢、AIがもたらす負の側面

  • ようやく米連邦最高裁が動いた。2/20、トランプ米大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した相互関税やフェンタニル関税について「大統領に発動権限はない」と判断し、無効とした。これを受けてトランプ米政権は相互関税の徴収を停止し、深刻な国際収支の赤字などに対応するための法律である「1974年通商法122条」に基づき、150日間限定の措置として10%の関税を代替的に発動するとした。これに対し、2/20の米国株市場は、輸入企業の負担が減る可能性があるとの見方から好感されたが、翌2/21、トランプ氏が税率を法律が許容する最高値の15%とするとしたことを受けて、金融市場では米国の関税政策に対する不透明感が高まってきている。それでも、新たな関税が発動されることで、中国やブラジル、および東南アジア諸国のように、トランプ関税の脅威が低下する国もある。これらの国を拠点とする米上場およびADR(米国預託証券)銘柄については投資の好機到来を示唆する面もあるだろう。
  • 週明け2/23の米国株市場は、ダウ工業株30種平均株価を中心に主要株価指数が軒並み大幅下落となった。これは、トランプ関税の動向によるものだけではなく、イラン情勢緊迫化といった地政学リスクに加え、AI(人工知能)が世界経済の様々な分野に及ぼし得る潜在的リスクが売り要因となった。
  • イランへの軍事攻撃に関しては、米軍が中東地域で2003年のイラク侵攻以来、最大規模の軍事力を集結させる中、長期にわたる紛争に巻き込まれて米兵に犠牲者が出ることは、今年11月の中間選挙を控えたトランプ氏にとってはリスクが大き過ぎるだろう。2025年6月のケースのように、標的を絞った軍事作戦を実施して譲歩を迫り、それでも核放棄を受け入れない場合に大規模攻撃に移行するシナリオの可能性のほうが高いように思われる。
  • また、調査会社シリトニ・リサーチの2/22付レポートによれば、仮説的なシナリオとしてAIの破壊的影響によりホワイトカラーの大量失業、個人消費の落ち込み、ソフトウェア関連企業向け融資の焦げ付きが増え、経済が収縮する姿が描かれている。その中で、目標に対して自律的に計画を立てて学習しながら作業を進める「AIエージェント」がマスターカード(MA)ビザ(V)といった決済処理会社の取引手数料を排除する将来像が描かれている。また、新興AI開発会社のアンソロピックは自社のAIツールを使うことで、プログラミング言語「COBOL」を使った従来の基幹システムの刷新を速められると主張。メインフレーム販売に強いIBM(IBM)などの株価を押し下げている。米大手投資ファンドのブルー・アウル・キャピタル(OBDC)が運営する個人投資家向けプライベート・クレジット・ファンドの解約請求の受付停止などをきっかけとした金融・投資関連銘柄への連鎖的な売りがさらに広がるかどうかについては、引き続き警戒が必要だろう。(笹木)

ウィークリーストラテジー

S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(2/20現在)

主要企業の決算発表予定

  • 2月25日(水)
    エヌビディア、セールスフォース、TJX、フェロビアル、パラマウント・スカイダンス、TKOグループ・ホールディングス、シノプシス、APA、ザ・トレードデスク、アジレント・テクノロジー、ユニバーサル・ヘルス・サービシズ、ロウズ、ピナクル・ウエスト・キャピタル、EOGリソーシズ
  • 2月26日(木)
    デル・テクノロジーズ、ゼットスケーラー、SBAコミュニケーションズ、ソルベンタム、AES、コテラ・エナジー、ブロック、インテュイット、ネットアップ、オートデスク、ワーナーブラザース・ディスカバリー、センプラ、JMスマッカー、クニティ・エレクトロニクス、パブリック・サービス・エンタープライズ・グループ、ビアトリス、エムコア・グループ、ビストラ・コープ、ホーメルフーズ
  • 2月28日(土)
    バークシャー・ハサウェイ
  • 3月2日(月)
    ノルウェージャンクルーズライン・ホールディングス

主要イベントの予定

  • 2月23日(月)
    • 米製造業受注(12月)、米耐久財受注(12月)
  • 2月24日(火)
    • トランプ米大統領の一般教書演説、米シカゴ連銀総裁と米クックFRB理事が全米企業エコノミスト協会(NABE)の会議で講演、米ボストン連銀総裁・米アトランタ連銀総裁・米ウォラーFRB理事とリッチモンド連銀総裁が講演・あいさつ・パネル討論会への参加など
    • 米主要20都市住宅価格指数(12月)、米FHFA住宅価格指数(12月)、米卸売在庫(12月)、米消費者信頼感指数(2月)
  • 2月25日(水)
    • 米ボストン連銀総裁が講演
  • 2月26日(木)
    • 米新規失業保険申請件数(2月21日終了週)
  • 2月27日(金)
    • 米PPI (1月)、米建設支出 (12月)
  • 3月2日(月)
    • S&Pグローバル米国製造業PMI(2月)、米ISM製造業景況指数(2月)、米建設支出(1月)、米小売売上高(1月)
  • Bloombergをもとにフィリップ証券作成

銘柄ピックアップ

カミンズ (CMI):NYSE 2026/5/5に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1919年設立のエンジンメーカー。主にディーゼルおよび天然ガスエンジン、関連部品、発電機の設計、生産、販売を行う。2019年に水素発電・貯蔵・燃料電池のハイドロジェニックス社を買収。
  • 2/5発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比1.1%増の85.36億USD、非GAAPの調整後EPSが同12.6%増の5.81USD、営業キャッシュフローが7.9%増の15.42億USD。部品、エンジンが減収・減益の一方、流通、発電システムが増収・増益。Acceleraは増収も、利益面で赤字幅拡大。
  • 2026/12通期会社計画は、売上高が前期比3-8%増、EBITDAマージンが同1.0-2.0ポイント上昇の17.0-18.0%。営業キャッシュフローの50%を株主還元に回すことを長期戦略上の目標としている。同社はアフターサービスやメンテナンス、部品供給などの収益源により安定したキャッシュフローを確保。米国を主要生産拠点とし、国内製造に注力。米関税は同社の競争力を高めると見込まれる。

ディア (DE)NYSE ・2026/5/21に2026/10期2Q(2-4月)の決算発表を予定

  • 1837年創業の世界最大の農業機械メーカー。「ジョンディア」ブランドで農業機械・芝刈機・建設機械・林業機械を製造。大型・精密農機、小型農機、建機・林業、金融サービスの主要4事業を営む。
  • 2/19発表の2026/10期1Q(11-1月)は、売上高が前年同期比13.0%増の96.11億USD、営業利益が同2.5%減の7.73億USD。営業利益内訳は、小型農機(売上比率23%)が58%増、建機・林業(同28%)が111%増、金融サービス(同14%)が13%増の一方、大型・精密農機(同33%)が59%減。
  • 通期会社計画を上方修正。当期純利益を前期比1-10%減の45-50億USD(従来計画40-47.5億USD)とした。米国の対中輸出回復を受けて大豆など穀物の国際市況が上昇傾向にあることが楽観見通しの背景にある。メイCEOは声明で「建設・小規模農業部門の需要回復は、2026年が現在のサイクルの底となり、その後の加速的な成長の基盤を提供するとの確信を裏付けるものだ」と述べた。

ドミノ・ピザ (DPZ)NASDAQ 2026/4/28に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1960年設立。世界90カ国超で運営する店舗は2万1300店超に上る。2024年12月末時点でフランチャイズ店が約99%を占める。フランチャイズ店からのロイヤリティ収入・手数料が主な収入源。
  • 2/23発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比6.4%増の15.53億USD、EPSが同9.4%増の5.35USD。為替の影響を除く世界販売額の伸び率が0.7%、米国の既存店販売額伸び率が3.7%、12月末の世界店舗数が3.6%増だった。粗利益率が0.5ポイント上昇の39.7%へ改善した。
  • 2026/12通期会社計画は、既存店売上高について米国が前期比約3%増、海外が同1-2%増。為替の影響を除く営業利益が約8%増。市場シェア拡大によるコスト増の吸収が鍵を握りそうだ。同社はウーバーテクノロジーズ(UBER)ドアダッシュ(DASH)との提携で顧客へのデリバリー効率化が進んでいる。また、投資会社のバークシャー・ハサウェイ(BRKB)が2025年10-12月に同社株を買い増した。

キンダー・モルガン (KMI)NYSE 2026/4/16に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1997年設立。米国最大級のエネルギーインフラ企業であり、天然ガス、原油、ガソリン、CO2などのエネルギー資源を運ぶパイプラインや貯蔵ターミナルを保有・運営するなど、中流事業を展開する。
  • 1/21発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比13.1%増の45.08億USD、非GAAPの調整後EPSが同21.9%増の0.39USD。 天然ガス輸送量が9%増加したことに加え、2025年2月に約6.40億USDでアウトリガー社の天然ガス・処理システムを買収したことが業績拡大に貢献した。
  • 2026/12通期会社計画は、事業売却の影響を除く調整後EPSが前期比5%増の1.35USD。ウクライナ戦争が開始から4年経過する中、米国が欧州のエネルギー安全保障にとって不可欠な役割を果たし、液化天然ガス(LNG)の主要輸出国となっている。同社は、米国の天然ガス総需要がLNG輸出の牽引により2030年までに17%の拡大を見込み、プロジェクト受注残100億USDを目指している。

ニューヨーク・タイムズ (NYT)NYSE 2026/5/7に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1851年設立。米国を代表するリベラルな論調の高級日刊紙「ニューヨーク・タイムズ」を発行。有料電子版のデジタルシフトにいち早く成功。ニュース以外にも多様なサブスクリプション事業を展開。
  • 2/4発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比10.4%増の8.02億USD、非GAAPの調整後EPSが同11.3%増の0.89USD。12月末デジタル会員数が12%増の1278万人。デジタル・オンリーのサブスクリプション収入が14%増の3.81億USD、デジタル広告収入が25%増の1.47億USD。
  • 2026/12通期会社計画は、デジタル・オンリーのサブスクリプション収入が前期比14-17%増、デジタル広告収入が同1桁台後半〜20%台前半の伸び率である。米投資会社バークシャー・ハサウェイは2025年10-12月期に同社を新規に507万株取得。バークシャーはかつて競合先のワシントン・ポストの主要株主だったこともあり、馴染みの業界でデジタル変革の進捗を評価していると推察される。

バルカン・マテリアルズ (VMC):NYSE 2026/4/30に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値 (陰線)」なら緑、「始値<終値 (陽線)」なら赤。
  • 1909年創業の建設資材メーカー。骨材サプライヤー最大手。骨材、砂利、アスファルト混合物、生コンクリートが主要製品。アラバマ州バーミンガムを拠点に東海岸〜西海岸に至る流通網を持つ。
  • 2/17発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比3.2%増の19.13億USD、非GAAPの継続事業からの調整後EPSが同21.7%減の1.70USD。骨材出荷量が2%増、輸送費調整後のトン当たり製品単価が2%上昇も、トン当たり現金ベース粗利益が7%減の10.73USDへの悪化が響いた。
  • 2026/12通期会社計画は、調整後EBITDAが前期比3-12%増の24-26億USD。骨材の出荷量は1-3%増、輸送費調整後のトン当たり製品単価が4-6%上昇と見込んでいる。道路・橋梁・空港などで連邦・州の公共投資需要が見込まれることに加え、データセンター建設とエネルギーインフラ(再エネ、LNG輸出施設)などの高成長領域の需要増が販売価格の押し上げ要因になると見込まれる。
  • (※)決算発表の予定は2/20現在であり、変更される可能性があります。

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