2026-02-10 02:15:37

次期FRB議長指名と貴金属先物相場、決算発表の注目点

2026/2/3

提供:フィリップ証券株式会社

リサーチ部:笹木 和弘

次期FRB議長指名と貴金属先物相場、決算発表の注目点

  • トランプ米大統領が次期米FRB(連邦準備理事会)議長に元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏を指名したことが金融市場に波紋を呼んでいる。ウォーシュ氏は2006〜2011年のFRB理事在任中に大規模な量的緩和(QE)に反対していた。最近の発言でも、FRBが肥大化したバランスシートを大幅に縮小し、過剰な流動性を市場から吸収すればインフレが抑制され、さらなる利下げの余地を作り出すことができると主張するなど「タカ派」寄りのスタンスを鮮明にしている。これを受けて1/30の米国債券市場では、政策金利見通しを反映しやすい中短期債の利回りが低下した一方、長期・超長期国債の利回りが上昇する「スティープ化」の動きが見られた。その一方、為替市場はドル高、貴金属先物相場および暗号資産のビットコイン相場は大幅な売りで反応した。
  • 貴金属先物は、現金による差金決済と現物による受渡決済の両方が可能だが、期日(最終決済日)までに売買による決済をしない場合、売り方は受渡を行うための現物の調達が必要となる。現物の調達が困難になれば損失覚悟で期日までに買戻しを迫られる。今回の貴金属先物市場の投機的な値動きの背景には、このような売り方の「踏み上げ(ショート・スクイーズ)」があったと推察される。売り方となったとみられる機関投資家は大きな損失を抱えた可能性がある。特に金については、米モルガン・スタンレーが2025年9月に、60%を株式、20%を債券、20%を金に配分する「60/20/20戦略」を推奨するようになって以降、機関投資家の貴金属への投資が活発化した。貴金属相場の損失を他のアセットの売却によって埋め合わせる投資行動が拡がる可能性もあるだろう。
  • 全米アクティブ投資マネージャーズ協会(NAAIM)による「NAAIMエクスポージャー指数」にみられるように米機関投資家の株式へのエクスポージャーが「過度の楽観」とされる高い水準にあるほか、バンク・オブ・アメリカの1月調査によればファンドマネージャーの現金への配分比率が過去最低水準にある。もともと次の本格的な上昇相場に向けてリスク量を落としていく調整局面が必要とされている面はあった。2025年10-12月決算発表では、AI(人工知能)優等生銘柄とみられていたマイクロソフト(MSFT)が設備投資の伸びと比べてクラウド事業の成長が不十分とみられて株価が大幅に下落したほか、ソフトウェア関連銘柄が生成AIの普及によって収益基盤が揺らぐのではないかとの懸念から売りが止まらないのは、調整局面の表れとみるべきだろう。他方、テスラ(TSLA)は今まで本業とみられていたEV(電気自動車)生産・販売の不振が続く中、高級EV車種の生産を段階的に終了し、工場をヒト型ロボット向けに転換すると発表。また、マスクCEOが運営するAI開発企業の「xAI」への出資を打ち出した。次の上昇相場に向けて「変化を買う」時機を見極めるべき局面だろう。(笹木)

ウィークリーストラテジー

S&P500業種別およびダウ平均構成銘柄騰落率(1/30現在)

主要企業の決算発表予定

  • 2月3日(火)
    アトモス・エナジー、コルテバ、テイクツー・インタラクティブ・ソフトウエア、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、エマソン・エレクトリック、マッチ・グループ、チャブ、スカイワークス・ソリューションズ、エレクトロニック・アーツ、ベラルト、ジェイコブズ・ソリューションズ、スーパー・マイクロ・コンピューター、アムコア、ジャック・ヘンリー・アンド・アソシエーツ、アムジェン、プルデンシャル・ファイナンシャル、クロロックス、チポトレ・メキシカン・グリル、モンデリーズ・インターナショナル、WWグレンジャー、イリノイ・ツール・ワークス、メルク、ペイパル・ホールディングス、ペプシコ、ファイザー、マラソン・ペトロリアム、ボール、ウィリス・タワーズ・ワトソン、アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド、ハベル、アメテック、ブロードリッジ・ファイナンシャル・ソリューションズ、ガートナー、イートン、トランスダイム・グループ、ペンテア
  • 2月4日(水)
    マケッソン、メットライフ、アーム・ホールディングス、アフラック、エベレスト・グループ、アルファベット、グローブライフ、PTC、クアルコム、コアペイ、ステリス、クラウン・キャッスル、オライリー・オートモーティブ、オールステート、アライン・テクノロジー、フォックス、ティー・ロウ・プライス・グループ、エイブリィ・デニソン、エキファックス、スタンレー・ブラック・アンド・デッカー、フィリップス66、CMEグループ、フォーティブ、GEヘルスケア・テクノロジーズ、ブンゲ・グローバル、センコラ、アッヴィ、コグニザント・テクノロジー・ソリューションズ、オールド・ドミニオン・フレイト・ライン、ボストン・サイエンティフィック、カミンズ、ウーバー・テクノロジーズ、ヤム・ブランズ、アイデックス、バイオテクネ、ジョンソンコントロールズインターナショナル、CDW、イーライリリー
  • 2月5日(木)
    リージェンシー・センターズ、フォーティネット、マイクロチップ・テクノロジー、モリーナ・ヘルスケア、アトラシアン、ジェン・デジタル、メトラー・トレド・インターナショナル、ストラテジー、モノリシック・パワー・システムズ、ベンタス、アマゾン・ドット・コム、ニューズ・コーポレーション、ベリサイン、ラルフローレン、WECエナジー・グループ、シグナ・グループ、エスティローダー、インターコンチネンタル・エクスチェンジ、コノコフィリップス、アレス・マネジメント、カーディナルヘルス、KKR、ハーシー、トムソン・ロイター、タペストリー、リンデ、ブリストル マイヤーズ スクイブ、ハンティントン・インガルス・インダストリーズ、CMSエナジー、キャリア・グローバル、エクセル・エナジー、IQVIAホールディングス、ロックウェル・オートメーション、スナップオン
  • 2月6日(金)
    シーボー・グローバル・マーケッツ、バイオジェン、センティーン、フィリップ・モリス・インターナショナル
  • 2月9日(月)
    プリンシパル・ファイナンシャル・グループ、シンシナティ・ファイナンシャル、アーチ・キャピタル・グループ、オン・セミコンダクター、アポロ・グローバル・マネジメント、ロウズ、ウォーターズ、ベクトン・ディッキンソン

主要イベントの予定

  • 2月2日(月)
    • 米アトランタ連銀総裁が講演
    • 米S&Pグローバル製造業PMI(1月)、 米ISM製造業景況指数(1月)
  • 2月3日(火)
    • 米ボウマンFRB副議長(銀行監督担当)が討論会に参加
    • 米自動車販売 (1月)、米求人件数 (12月)
  • 2月4日(水)
    • 米ADP雇用統計(1月)、米S&Pグローバル・サービス業・総合PMI (11月)、米ISM非製造業総合景況指数 (1月)
  • 2月5日(木)
    • 米新規失業保険申請件数 (1月31日終了週)
  • 2月6日(金)
    • 米失業率 (1月)、米非農業部門雇用者数変化 (1月)、米ミシガン大学消費者マインド指数・速報値(2月)、米消費者信用残高 (12月)
  • 2月9日(月)
    • ニューヨーク連銀1年後期待インフレ率(1月)
  • Bloombergをもとにフィリップ証券作成

銘柄ピックアップ

アップル (AAPL):NASDAQ 2026/5/1に2026/9期2Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1974年設立。スマートフォン・PC・タブレット端末・ウェアラブル製品および付属品を設計・製造し世界各国で販売。自社OS搭載のiPhoneやMac、iPadの他、アプリをダウンロードするApp Storeを提供。
  • 1/29発表の2026/9期1Q(10-12月)は、売上高が前年同期比15.7%増の1,437億USD、純利益が同15.9%増の420億USD。カテゴリー別売上高は、iPhoneが23%増の852億USDと全体の増収をけん引。25年9月に発売した「iPhone17」の販売好調に加え、苦戦が続いた中華圏が38%増収と回復。
  • 2026/9期2Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比13-16%増、粗利益率が48-49%(前年同期47.1%)。メモリー半導体高騰が粗利益率を圧迫する懸念がある一方、12月末時点のiPhoneの在庫が低水準で需給がひっ迫していることから値上げの余地が見込まれる。AI(人工知能)開発競争での出遅れと新製品カテゴリー創出の停滞が課題となる中、クックCEOの後継者計画が本格化。

キャタピラー (CAT)NYSE 2026/4/30に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1925年設立。建設・採鉱装置、ディーゼル・天然ガスエンジンを手がける世界有数のメーカー。建設産業、資源産業、エネルギー・運輸の主要3事業のほか、リースやローンなどの金融事業を展開。
  • 1/29発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比18.0%増の191.33億USD、非GAAPの調整後EPSが同0.4%増の5.16USD。12月末受注残が71%増の512億USD。AI(人工知能)向けデータセンターに伴う電力需要の急増を背景に発電・エネルギー事業(売上比率48%)が23%増収。
  • 2026/12通期会社計画は、売上高増加率が長期目標である年平均5-7%のレンジ上限近辺、関税コストの影響を含む調整後営業利益率が目標レンジ(18-22%)の下限付近。売上規模が大きくなるほど目標とする調整後営業利益率が高くなる形としている。世界的な産業活動や景気動向の強弱を映し出す指標とされる建設産業事業は売上比率が低下し、景気に左右されにくくなっている。

デッカーズ・アウトドア (DECK)NYSE 2026/5/22に2026/3期4Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1973年設立。靴や衣料、アクセサリーの設計・製造を手がける。クラシックブーツの老舗「UGG」、アスリート向けシューズの新興「HOKA」を主力とした6ブランドで、自社製品を50超の国・地域で販売。
  • 1/29発表の2026/3期3Q(10-12月)は、売上高が前年同期比7.1%増の19.57億USD、EPSが同11.0%増の3.33USD。主力ブランドは、「UGG」ブランド(売上比率67%)が5%増収、「HOKA」ブランド(同32%)が19%増収。地域別では、海外売上(売上比率34%)が15%増と増収に寄与した。
  • 通期会社計画を上方修正。売上高を前期比8-9%増の54-54.25億USD(従来計画53.5億USD)、EPSを同7-8%増の6.80-6.85USD(同6.30-6.39USD)とした。UGGはムートン(羊革)ブーツを中心にサンダルなどの老舗ブランド。HOKAは主にスニーカー分野をカバーし登山系の厚底ソールを特徴とし、ナイキからシェアを奪いつつある。2024年8月に就任したカロティCEOによる経営改革が進展。

IBM (IBM)NYSE 2026/4/23に2026/12期1Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1911年設立。多様なコンピューターソリューションを提供。ストレージ製品やサーバー製品のほか、人工知能(AI)の「Watson」やクラウドサービス、IoT、アナリティクス、コンサルティング等も提供する。
  • 1/28発表の2025/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比12.2%増の196.86億USD、継続事業関連の非GAAPの調整後EPSが同15.3%増の4.52USD。AI(人工知能)拡大を背景にソフトウェア(売上比率46%)が14%増収、インフラ(同26%)が21%増収。コンサルティング(同27%)も3%増収。
  • 2026/12通期会社計画は、為替変動の影響を除く売上高が前期比5%増、フリーキャッシュフローが同7%増の157億USD。同社の生成AI(人工知能)関連ビジネスはソフトウェアとコンサルティングをともに押し上げる要因となっている。生成AIの普及がソフトウエア・ITソリューション業界の領域を侵食するとの懸念が高まる中、生成AIを中心にソフトとインフラAIを網羅する同社は恩恵が見込まれる。

ラムリサーチ (LRCX)NASDAQ 2026/4/23に2026/6期3Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 1980年設立の半導体製造装置メーカー。デポジション、エッチ、フォトレジスト除去(ストリップ)、ウエハー洗浄(クリーン)向けに製品を提供する。半導体エッチング装置分野では世界シェア首位。
  • 1/28発表の2026/6期2Q(10-12月)は、売上高が前年同期比21.9%増の53.44億USD(会社予想49-55億USD)、非GAAPの調整後EPSが同39.6%増の1.27USD(同1.05-1.25USD)、調整後粗利益率は同2.2ポイント上昇の49.7%(同47.5-49.5%)。システム(売上比率63%)のうちメモリの割合は34%。
  • 2026/6期3Q(1-3月)会社計画は、売上高が前年同期比14-27%増の54-60億USD、調整後EPSが同20-39%増の1.25-1.45USD。半導体メモリへの強い需要が半導体製造装置の売上高を押し上げている。半導体メモリ関連売上のうちDRAMがAI(人工知能)向け高帯域メモリ(HBM)需要増により記録的水準に達した一方、本格回復途上にあるNAND型フラッシュメモリ向けは上積みが見込まれる。

スターバックス (SBUX):NASDAQ 2026/4/29に2026/9期2Q(1-3月)の決算発表を予定

  • 日足の始値と終値をローソク足で表示。「始値>終値 (陰線)」なら緑、「始値<終値 (陽線)」なら赤。
  • 1971年創業の世界的なコーヒーチェーン。世界で4万1118店舗(25年12月末現在)を展開。主力のStarbucks Coffeeのほか、Teavana、Seattle’s Best Coffee、Evolution Fresh等のブランドを擁する。
  • 1/28発表の2026/9期1Q(10-12月)は、売上高が前年同期比5.5%増の99.15億USD、非GAAPの調整後EPSが同18.8%減の0.56USD。既存店売上高は4%増(平均客単価が1%増、顧客数が3%増)、うち北米が4%増、海外が5%増。店舗数は北米が1%純減に対し、中国が4%純増だった。
  • 通期会社計画は、全世界および米国の既存店売上高が前期比3%増、調整後EPSが同1-13%増の2.15-2.40USD、調整後営業利益率がやや上昇。経営再建に伴う人件費増とコーヒー豆価格上昇による利益への逆風が想定される一方、ニコルCEOは、経営再建計画が予定より早く進んでいると評価。不振の中国事業については6割の株式を現地投資ファンドに売却することで対応する見通し。
  • 決算発表の予定は現地1/30現在であり、変更される可能性があります。

過去の「銘柄ピックアップ」パフォーマンス検証

フィリップ証券株式会社

米国ウィークリー・マンスリー一覧へ戻る

ご注意事項

  • 当資料は、情報提供を目的としており、金融商品に係る売買を勧誘するものではありません。フィリップ証券は、レポートを提供している証券会社との契約に基づき対価を得ております。当資料に記載されている内容は投資判断の参考として筆者の見解をお伝えするもので、内容の正確性、完全性を保証するものではありません。投資に関する最終決定は、お客さまご自身の判断でなさるようお願いいたします。また、当資料の一部または全てを利用することにより生じたいかなる損失・損害についても責任を負いません。当資料の一切の権利はフィリップ証券株式会社に帰属しており、無断で複製、転送、転載を禁じます。
<日本証券業協会自主規制規則「アナリスト・レポートの取扱い等に関する規則平14.1.25」に基づく告知事項>

本レポートの作成者であるアナリストと対象会社との間に重大な利益相反関係はありません。

マーケットへ戻る