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“「二つの巨人」進撃の相場へのインパクトは?”
2019/4/2
提供:フィリップ証券株式会社
リサーチ部:笹木 和弘、増渕 透吾
- 先週は、二つの大きな出来事(巨人)が株式相場で話題となった。一つ目の「巨人」は米中貿易協議の再開。3/29に、ムニューシン財務長官が「米通商代表部(USTR)と私は北京での貿易交渉を建設的に終えた」とツイッターに投稿、今週ワシントンで継続する協議にも楽観的な見方を示すなど、米中が合意に向けて前進しているとの期待が強まる展開だった。
- ここまでの展開を振り返ると、昨年12/1の米中首脳会談の時点で3/1に期限が設定されたが、その後で期限が延期され、更に、3月中に実施すると見られていた米中首脳会談も4月以降にずれ込むこととなった。ムニューシン長官とライトハイザー通商代表から前向きな「期待」を促す発言が相次ぐ一方で、クドロー国家経済会議委員長やトランプ大統領からは交渉長期化や協議合意後の中国への制裁関税を続ける方針が示唆されるなど、米政権内でも「期待」は一枚岩ではない状況。交渉の内容自体よりも「戦争」当事国同士の高官が継続的に交渉していること自体が市場に安心感を与えている点は紛争解決のあり方としては評価でき、政権が一枚岩で無いことが過熱感を防ぐこととなって株式市場の買い材料として長く続くテーマとして受け入れられているという面もあろう。
- ここで、1986年以降2018年まで33年間のNYダウの年足チャートより、年間の高値から安値までの変動幅を年間安値で割った「年間変動率」を見てみると、平均値で28.9%の変動率、最大値が78.3%(2008年)、最小値が9.8%(2005年)となっている。仮に、年初から2019/3/29までの高値26,241ドル、安値22,638ドルを用いてこの変動率の平均値を当てはめると、安値から28.9%上昇した値は29,180ドル、高値から28.9%下落した値は20,357ドルとなる。3月までの高値・安値が今年の高値または安値になると仮定した場合、過去の年間変動率を見るとアップサイドであってもダウンサイドであっても今年のNYダウは、「思ったよりも大きく動くかもしれない」ということは言えそうだ。
- 二つ目の「巨人」はアップル(AAPL)である。同社は3/25に「Apple News」、「Apple Card」、「Apple TV+」、「Apple Arcade」の4つの新アプリ・サービスを打ち出した。低迷するiPhoneの販売へのテコ入れ策という見方もできるが、「ハードからソフトの巨人への大転換」という見方もできよう。同社の「大転換」による市場への「進撃」が株式市場に与えるインパクトもこれから顕在化してくるのではないか。いずれにせよ、これらのサービスに係る業界への地殻変動インパクトは大きなものになることが予想されることから、提携企業、競争相手となる企業へのウォッチを強めていきたい。(笹木)
- 4/2号ではアップル(AAPL)、カーマックス(KMX)、ルルレモン・アスレティカ(LULU)、リフト(LYFT)、オクタ(OKTA)、オン・セミコンダクター(ON)を取り上げた。
S&P500業種別およびNYダウ構成銘柄の騰落率(3/29現在)
4月2日(火) | ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス、ラム・ウェストン・ホールディングス |
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4月4日(木) | コンステレーション・ブランズ |
4月2日(火) | |
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4月3日(水) | - アトランタ連銀総裁講演、ミネアポリス連銀総裁講演
- ADP雇用統計 (3月)
- ISM非製造業景況指数 (3月)
- 中国の劉鶴副首相がワシントン訪問
- 中国 財新サービス業PMI (3月)、財新コンポジットPMI (3月)
- ユーロ圏 総合PMI (3月、改定値)、サービス業PMI (3月、改定値)、小売売上高 (2月)
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4月4日(木) | - クリーブランド連銀総裁、講演
- 新規失業保険申請件数(3月30日終了週)
- 独 製造業受注 (2月)
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4月5日(金) | - アトランタ連銀総裁講演
- 雇用統計(3月)
- 消費者信用残高(2月)
- G7外相会合(フランス、6日まで)
- 中国本土・香港市場は祝日のため休場
- 独 鉱工業生産 (2月)
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4月7日(日) | |
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- 1974年にコンピューターの製造を目的に創業。「iPhone」、「iPod」、「iPad」、PCの「Mac」などを主力製品として世界に展開している。また、ソフトウェアの開発や周辺機器の製造・販売も行う。
- 1/29発表の2019/9期1Q(10-12月)は、売上高が前年同期比4.5%減の843.10億USD、純利益は同0.5%減の199.65億USD。プロダクツ収入は同7.2%減の734.35億USD、サービス収入は同19.1%増の108.75億USD。iPhoneからの収入は同15%減、iPhone以外からの収入は同19%増だった。
- 2019/9期2Q(1-3月)会社計画は、売上高が550億-590億USD、売上総利益率が37-38%、営業費用が85億-86億USD、その他収益が3億USD。4つの新サービス発表により、ハード中心からサブスクリプションサービス重視への方向転換を印象付けた。スピルバーグ氏の協力を得た「AppleTV+」は、その成否が同社のクリエイティブなブランドイメージを取り戻す意味でも重要となろう。(笹木)
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- 1993年にCircuit City Storesの傘下で創業し、2002年に分離独立。米国最大の中古車販売会社で、91の放送対象地域に188店舗を展開(2018/2時点)。値引き販売を行わない点に特徴がある。
- 3/29発表の2019/2期4Q(2018/12-2019/2)は、売上高が前年同期比5.7%増の43.18億USD、純利益が同57.6%増の1.92億USD。EPSは1.13USDと市場予想の1.00USDを上回った。中古車販売台数が同5.6%増の180,207台と伸びた。前年同期に計上した税制改革に伴う一時費用も剥落した。
- 2020/2通期会社計画は、資本的支出が3.50億USD(前期実績:3.04億USD)。前期に計画していた資本的支出が一部ずれ込むほか、カスタマー・エクスペリエンス・センターを3ヵ所設置する。また、13店舗の新規出店を計画。新たに6つ放送対象地域に進出する。2020/2通期市場予想は、売上高が前期比6.1%増の192.87億USD、当期利益が同4.3%増の8.78億USDである。(増渕)
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- 1998年にバンクーバーで設立。「lululemon」「ivivva」等のブランドのもと、ヨガ、ランニング、トレーニング向けのスポーツアパレルを提供する。北米、欧州、アジアに440店舗展開(2019/2/3時点)。
- 3/27発表の2019/1期4Q(2018/11-2019/1)は、売上高が前年同期比25.7%増の11.67億USD、純利益は同82.4%増の2.18億USD。調整後EPSは1.85USDと市場予想の1.74USDを上回った。36の新規店舗が寄与したほか、既存店売上高が同6%増と伸びた。eコマース売上高は同39%増だった。
- 2020/1期1Q(2-4月)会社計画は、売上高が7.40-7.50億USD、既存店売上高が2桁台前半の伸び率、EPSが0.68-0.70USD。通期会社計画は、売上高が37.00-37.40億USD、既存店売上高が2桁台前半の伸び率、EPSが4.48-4.55USD。中央値で13.1%の増収見通し。EPS見通しは市場予想の4.40USDを上回った。米国で人気化している「アスレジャー」は、同社が原点だと言われている。(増渕)
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- 2012年にライドシェア向けピアツーピア市場を開設。米国、カナダで最大のマルチモーダル交通ネットワークの1つ。同社のネットワークは米国およびカナダの一部都市では人口の95%をカバー。
- 3/1発表の2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比94.3%増の6.69億USD、純利益が▲2.48億USDと前年同期の▲2.39億USDから赤字幅拡大。ネットワークの地域的な拡大やライドシェアの普及により増収。運転手報奨金などにより営業費用が同58.7%増の9.39億USDと嵩んだ。
- 同社は3/29にNASDAQへの上場を果たした。IPO規模は約23.40億USDで公開価格は仮条件レンジ上限の72.00USD設定された。上場日に同社株は急伸。初値は87.24USDと公開価格を21.7%超過。2019/12通期市場予想は、売上高が前期比63.1%増の35.17億USD、当期利益が▲11.42億USDと前期の▲9.11億USDから赤字幅拡大。赤字が続くものの大幅な増収が見込まれる。(増渕)
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- 2009年設立のソフトウエア開発企業。クラウドサービス「Okta Identity Cloud」を通じて企業向けID管理サービスを提供。社内外や端末問わず同一IDで様々なアプリケーションを安全に利用できる。
- 3/7発表の2019/1期4Q(2018/11-2019/1)は、売上高が前年同期比49.9%増の1.15億USD。サブスクリプション収入が同52.8%増の1.08億USD。営業利益は▲2,774万USDで同▲2,371万USDから赤字拡大だが、調整後ベース営業利益は▲490万USDで前年同期の▲910万USDから赤字縮小。
- 2020/1通期の会社計画は、売上高が前期比33-34%増の5.30-5.35億USD、調整後ベースの営業利益が▲6,900万-▲6,300万USD(前期が▲4,150万USD)。2019/1期4Qに年間10万USD以上サブスクリプション契約客数が前期比50%増でリカーリング収入が拡大しており、キャッシュフロー予測安定化が、研究開発・マーケティングの積極的な投資支出を可能にしていると言えよう。(笹木)
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- 1999年にモトローラからスピンオフした半導体企業。電源アプリケーション向けの製品を、自動車、通信、コンピューティング、民生・産業用・医療機器、航空宇宙、防衛などの分野に提供する。
- 2/1発表の2018/12期4Q(10-12月)は、売上高が前年同期比9.1%増の15.03億USD、純利益が同68.7%減の1.65億USD。税制改革に伴う一時利益が剥落。粗利益率は37.9%と前年同期から40bp上昇。調整後ベースでは同32.7%増益。調整後EPSは0.53USDと市場予想の0.47USDを上回った。
- 2019/12期1Q(1-3月)会社計画は、売上高が13.65-14.15億USD、粗利益率が36.4-37.4%。同社は3/28、Quantennaを買収すると発表。両社の強みを組み合わせ、自動車および産業機械向けの低電力コネクティビティー市場を開拓する。同社のパワーマネジメントやBluetoothの専門技術とQuantennaのWi-Fiおよびソフトウェア機能を結合することで、相乗効果が期待される。(増渕)
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